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荒野の七人の侍

おじいさんのありがた~い おはなし。

 ワシントンDCで一息付けた龍馬一行は、とりあえずリンカーン議員がやってくることを待つことにして、しばらくのんびりと過ごすことにした。

 ワシントンDCは首都としての建設が続いており、俊輔が好むような歓楽地は隣接したメリーランドかバージニアまで出かけるしかなかった。しかし、南側の奴隷州のバージニア方向は危険が伴い、また、DCを離れることは、アメリカ政府の保護から離れる危険があった。幕閣派の襲撃の怖れもあったのである。


 そのようなわけで、一行は今日もポトマック川でのんびりと釣りをしていた。

「以蔵、釣れたか?」

「ここの魚はスレてないのか、よく釣れるぜ。」

 以蔵のバケツには何匹も大きな魚が入っていた。少し離れた場所で釣っていた武市は、砂地を掘り返している。餌を全て使い果たしたらしい。俊輔と聞多は何やら言い争いをしながらソコソコ釣りあげてその大きさを競っているようであった。

 数日前、近くを流れる大河を見て、魚影が濃いのに気づいた日本人たちは、久しぶりの魚料理を食べようと、釣りを始めたのだが、日本と違って竹が手に入らない地なので、釣り竿に苦労した。手ごろな木の枝があっても魚が大きいため、すぐに折れてしまうのである。武市たちが竿になる木に苦労をしている中、以蔵は何本かの立ち木を眺めると、その一本によじ登って若い枝をその刀で切ってきた。若い生木の方が弾力があり竿に向いていると言うのである。そうやって以蔵は4本の竿を次々と作ったのであった。乾と後藤は、ブキャナン大統領宅から借りてきた猟銃で野鳥を狙った。日本の銃より精度が悪いと言いながらそこそこワイルドターキーや水鳥を狩っていた


 龍馬はゆったりと流れるポトマック川を眺めながらぼーっとしていた。

「ここに桜の木があったらええのにのう……。」

 そのようなことを考えながら、ぼーっと、ぼーっと……居眠りをしていた。龍馬の夢では、ポトマック川に沿った桜並木と、桜のピンクの色の衣装を着た若い女性たちがパレードしていた。

「落ち着いたらここに桜を贈ったらいいだろう。」 

 龍馬はロンドンで様々な花を見ているうち、故郷の土佐や、江戸で眺めた桜並木を懐かしく思っていた。

「まあ戦争が収まって平和になったらだろうがな。」

「そういえば、飛鳥山の花見は楽しかったのう。」

「あれは作らせてよかったと思っているよ。」

「さなさん綺麗じゃったのう。」

「それは龍馬の彼女か?」

「いや、通っていた道場の娘じゃ。ん……?わしは誰と話しとるんじゃ???」 


「わしだよ。龍馬。」

「げっ、よ、吉宗公?」

 意識がはっきりした龍馬の目の前で、金ぴか将軍がにっこり笑った。



「龍馬よ。先にネーティブたちに会ってくれないか。」

「どうしたんじゃ。」

「ネーティブたちの自治区が危険な状態なんじゃ。」

「自治区の南部のテキサス共和国を併合して以来、自治区が大変だとは聞いとるぞ。じゃが、強硬派は大統領が抑えていて、奴隷州との緩衝地帯になっちょると聞いたぞ。」

「そのテキサスに入り込んだ奴らが問題なのだ。」

「石油じゃろ。」

「いやそれだけじゃないんだ。考え方が違ってな。ネーティブたちは土地はみんなのもの、部族のものなのだが、白人たちはそこを私有地にしていっているのさ。」

「理屈が違うということなんか。」

「誰のものでもない未開地だから、俺のものにできると思う白人たちが、テキサス側からだんだんとネーティブたちの自治区に入り込んで、土地争いをしているのさ。」

「それって……。」

「みんなの土地を奪われたネーティブたちは当然取り返しに来る。」

「反乱として討伐されて、合法的に併合されるというわけじゃな。」

「まだ、今なら間に合うんだ。」

「じゃが、ヨシムネまでは遠いんじゃ。足がなくって弱っちょるんじゃ。」

「足なら、こちらで用意する。明日仲間と準備をしてこの場所に集まってくれ。」



 翌朝、早くポトマック川の河岸に集まった一行は、転送装置で「吉宗陸号」に収容された。「吉宗陸号」は「ヨシムネ自治州」上空に到着すると遮蔽を解いてその巨大で優美な姿を見せた。


「ヨシムネ自治州」は土地を追われた多くのネーティブアメリカンたちの部族を受け入れ、同じ聖者「ヨシムネ」を信奉する共同体になっていた。部族間の協調が進むにつれ部族間の混血化も進み、オマハ・サルタなど複数の部族にルーツを持つものが代表者に選ばれていた。そして白い巨大な鯨に乗って空から降りてくる「ヨシムネ」の姿を見たことがあるものは少なくなり、もはや伝説となっていた。 

 

「吉宗陸号」の優美な姿を見たネーティブたちは、かつてヨシムネが下り立ったことを記念して残された、今や聖地となっている「ヨシムネ広場」に集まってきた。そして老人たちが思い出したように「オーレー、オーレー」と口々に叫び出すと、集まった者たちも「オーレー、オーレー」と声を合わせる。その声が地を揺るがすような大合唱になったころ、あの音楽と共に白い馬に乗った金ぴかの男が現れた。

 数万に及ぶネーティブたちの熱狂的なダンスが終わると、ヨシムネの前に自治州の大酋長たちが平伏した。

「ヨシムネ様、我らをお救い下さい。」

「うむ。白人のやり方を学んで備えるのだ。」

「どのようにすれば?」

「仲良く、楽しくじゃ。」


 史実ではネーティブアメリカンの部族は各個撃破で滅んで行ったが、ここには百数十万というネーティブアメリカンが住んでいる。しかも石油を始め豊かな資源もある。土地や財産の私有と言う資本主義的な発想がないために、白人の資本家たちに狙われているのだ。 土地と資産の管理に隙がないように備えよということなのであった。


「既に七人の日本の若者を遣わした。彼らと共に白人とも、黒人ともみんなで、仲良く、楽しい国を作るのだ。」

 そう言い残すと、ヨシムネは姿を消した。


「吉宗陸号」は吉宗を転送収容すると、大きく(ワープナセル)を広げ、光の速度を越えて消えて行った。  



「で、龍馬。ここはどこなんじゃ。」

 いきなり荒れ地の真ん中に転送された龍馬一行は周囲を眺めまわしている。

「吉宗公が言うには、テキサスとヨシムネの境付近なんだといっちょった。」

「おい、あっちに村らしきものがあるぞ。」

「歩いて行くんか?結構遠いぞ、」

「また歩くのか?」

 一行の脳裏にはニューヨークからボロボロになってワシントンDCまで歩いた悪夢が浮かんだ。

「吉宗公、何とかならんかのう。」



「ヒヒーン!」

「ヒヒヒヒーン!」

「ブハー!」


 次々と空間から七頭の馬が現れた。

「おお、今度はサービスええな。」

 七人の侍は、それぞれ馬にまたがると、村らしき場所に向けて駆けだした。



まあ、この後はあの展開ですかねw

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