表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
37/51

オレ、オレ?

おじいさんのありがた~い おはなし。

 以蔵のズボンに付着した血液は、法医学者の検分によって以蔵自身のものであることが証明され、以蔵にそのジッパーによって付いた傷が確認されたためそのズボンは証拠能力を完全に喪失した。それでは以蔵は「The Zipper」ではないのか。

 本誌記者は、以蔵の日本での通称「Hitokiri(Serial Killer)」は「Cyuuny」という思春期独特の少年に見られれる病を拗らせたものであると、複数の日本人からの証言を得た。 それでは、真の「The Zipper」が別に存在するのか。ロンドンの夜の恐怖は続くのか。当局の今後の調査を見守りたい。 (トーマス・ホーソン)


 今朝の新聞(ガーディアン)には以蔵の容疑が弱まったことが報道されていた。午後になって以蔵は警察官に連れられて寮に戻ってきた。しばらくは警察の監視下に置かれるとのことであった。


「以蔵、よかったな。」

「以蔵さん。お疲れじゃったな。」

 以蔵は、かなり疲労している様子であった。そして今にも泣きそうな表情であった。

「あのな龍馬、オレ、オレ……。」

「どうしたんじゃ。」

「何人も人がいての…、みんなでワシのものを見るんじゃ。」

「ん?」

「何人もの男にじろじろ見られて、触られて、その上写真まで撮られて……オレ……。」

 以蔵は涙を流している。


 どこからか 軽快なサンバのリズムが 流れ始めた。

 そして、金ぴかの衣装を着て白い馬に載った男が現れて歌い始めた。


「何じゃか。体が勝手に動くぞ。」

「龍馬、これは何なのだ。」

「もうどうなってもいいや。」

 寮の前庭に寮の中にいた若者たちも飛び出してきて大騒ぎとなった。

 気づいたら以蔵が全裸になって踊っている。


「呼んだかな?」

 歌い終わった金ぴかの衣装の男が龍馬に声をかけてきた。

「いや、呼んじゃおらんが……、もしや?」

「りょ、龍馬、頭が高いぞ。」

 武市はその姿に見覚えがあった。

「吉宗公だ!」

「やっと会えたな。龍馬。」

「よ、吉宗公なんか……わしのことを知っちょるんか?」

「ああ、この世界でちゃんと会うのは初めてだな。」

「何でここに?」

「呼ぶ声が聞こえたんだよ。」

「誰か呼んだんか?」

「その男がな。」

 吉宗(金ぴか将軍)は以蔵を指さした。

「え、オレ? オレ?」

「それだよ。」

 吉宗の脇差の柄がボォっと光った。


「龍馬に頼みがあるんだ。」

「わしにか?」

「ああ、このままアメリカに渡って、リンカーン君を助けて欲しいんだ。」

「リンカーンってあの時話していたアメリカ人じゃろ。今、アメリカで活躍中だと聞いたぞ。」

「ああ、そのリンカーン君だ。」

「戦争になりそうだと聞いちょるぞ。」

「歴史通り行けば、勝てるんだがな。問題は……。」

「何かあるんか?」

「ネイティブの連中だ。」

「あの『ヨシムネ州』の連中じゃな。」

「ああ、あれはイレギュラーなんだ。」

「史実に無いんか?」

「史実だと独立戦争前には壊滅している部族もいる。」

「そりゃいかんのう。」

「とにかく、南北戦争とその結果が90年後の日本に影響するんだ。」

「90年後?」

「この世界はどうなるか分からんがな。」

「何が起こるんじゃ。」

「日本が、いや、下手すれば世界が終わる。」

「世界の終わりか?」

「いづれ、詳しく説明できる日も来る。とにかくリンカーンに協力して、ネーティブを守ってくれ。」

 そう言うと吉宗は消えて行った。


 騒ぎが収まり、夕方になった頃、岩倉具視が慌てて公使館に戻ってきた。

「みんな大変だ。議会と諸侯会議が閉鎖された。」

「え、何が起こったんですか?」

「慶喜公も、参議院議長の島津斉彬公、水戸斉昭公、松平春嶽公、山内容堂公も閉門謹慎になっておる。」

「わしにも急ぎ帰国せよと朝廷から使者が来たんだ。」

「何が起こったんじゃ。」

「幕閣が権力を取り戻したようなんだ」

 日本国内では井伊直弼が大老に就任し、諸侯会議と参議院を閉鎖し、十四代将軍を尾張の少年、徳川家茂として幕閣独裁を始めたのであった。

 安政の大獄、地球の裏、ロンドンでもその影響は出始めていた。

久々のサンバでした。

金ぴか将軍とサンバについては他章を参照ください。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ