慶応3年11月17日
なるべく史実準拠で話は進みます。
龍馬は天界の不思議な部屋に連れられて行った。
不思議な形をした扉が3つ、そして椅子と机があるだけの真っ白い部屋。
龍馬が扉の一つを開くと、中岡が倒れている。
「慎さん?大丈夫か?」
龍馬が中岡に触れようとすると、見えないなにかにぶつかってしまう。
寝ている中岡の周りには、陸援隊の香川敬二と田中顕助をはじめとした何名かがいた。中岡は
「わしはもうだめじゃ。岩倉卿に、王政復古はひとえに卿の助力にかかっていると伝言を…。」
と、言い残すと静かに目を閉じた。
ーああ、やっぱりだめだったか。慎さんもこっちに呼べるかの?ー
隣の部屋には、海援隊の面々はじめ、元新選組の伊藤甲子太郎らがいた。上座に布団がしいてあった。
ーおっ、これはわしか。ー
「この鞘は、新選組の原田左之助のものに相違ない。」
伊藤が、現場に落ちていた鞘を見て断言した。
「やはり、新選組のしわざか。」
「ゆるせん!」
「まあ。谷さんが、幕閣の永井さん所に行っているから、返事を待とう。」
「あっ、谷さん。」
幕閣の永井尚志に抗議に行った谷干城が、不満そうに戻ってきた。
「近藤勇は知らぬと、いっておったそうだ。」
「何をとぼけたことを言っとるんじゃ。」
「こうなりゃ、殴り込みじゃ。」
「まてまて、なんか裏があるんじゃないか?」
ーおっ、陽之助じゃ! そうそう、短慮はいかんぜよ。そんなことをしたら、土佐が薩長と幕府の内戦の原因になってしまうじゃないかー
「裏?」
「龍馬さんの居場所を知らせたやつ、龍馬さんに恨みを持つやつ。」
「隊長に恨みのありそうな人物ですか……。」
「紀州だな。」
「いや、おまえが紀州に恨みがあるからって」
「とにかく、犯人を探し出すんだ。」
「わたしも手伝わせてください。」
事件の時、外に買い物に行って、難を免れた峰吉も言った。
ーおお、峰吉は無事だったのか。鳥鍋食いたかったなぁー
ーおい、陽さん。それは後でいいから、そのまえにまず、みんなを落ち着かせんと、本当に戦になってしまうぞ。谷さんにうまく言ってくれよー
龍馬の声は、陽之助には聞こえないようだ。
ーこれは、困ったのう。なんか伝える手はないもんかのう。ー
龍馬は、陽之助の右肩に触れようと手を伸ばしたが、すり抜けるだけで、触ることができない。しかし、陽之助は、右肩に手を当て
「ん? 何だ?」
と、振り向いたが誰もいない。
ーわしじゃ、陽之助!ー
「気のせいかな。」
と、陽之助は、
「とりあえず、紀州藩を探るんだ。峰吉頼むぞ。」
「もの売りにでもなって、探ってみます。」
ーこれは、ちと、様子を見るしかなさそうじゃのー
隔日の更新を予定しています。
ここまでは史実の時間線です。
いいね、評価、感想をお待ちしています。