議事之体大意
まだ史実の時間内です。
「龍馬さんは異界にいるんですか?」
「いや、わしは死んだ人間じゃから普段は霊界じゃ。」
「それなのに私を呼んだのは、やはり金ですか?」
「それじゃ、岩倉さんとも話したんじゃが、新政府は作ったが金がない。」
「岩倉卿もここに来たんですか?」
「いや、陸奥に憑いて行ったら、呼び出されたんじゃ。」
「公家ってすごいんですね。」
「まっこと、たまげたぜよ。それよりも金じゃ。」
「春嶽公からも何とかしろって言われました。」
「策はあるんじゃろ。」
「ええ、とりあえず大阪の商人を回る予定です。」
「それが、ええじゃろうな。幕府から取ろうにも金はないはずじゃ。」
「納地辞官でもめているそうですけど、納地されてもすぐには金になりません。」
「無理に迫ると、フランスが資金提供しかねん。」
「それで、陸奥さんですか。」
「ああ、陸奥がイギリスと交渉する。」
「できるんですか?」
「ああ、タイミングが肝心じゃ。」
「タイミングですか。」
イギリスに不介入を宣言させ、フランスなどが介入しないように牽制させるには、朝廷側を正当な交戦団体であることを認めさせる必要がある。そのためには幕府軍と戦端が開かれる必要があるが、全面衝突していては国力の損失は免れない。そのために早期決着を図る必要がある。衝突→不介入宣言→早期決着を確実にするため、陸奥や岩倉卿が動いている。そして、幕府軍を京畿から撤退させた後、諸侯軍を結集させる。一気に形勢を朝廷側に傾けさせて、介入する余地を与えないことが肝心であった。
「それでは、諸侯軍が京に結集するころまでに、資金の目途を立てる必要がありますね。」
「そう、そいで、その時点で新政府の方針を全ての民と、諸外国に伝えるんじゃ。」
「新政府の方針ですか。」
「ああ。前に福井で話したやつをまとめてくれればいいんじゃがの。」
「八策ですね。」
「土佐の福岡孝悌にも話しちょったから、相談して、桂さん辺りにそれらしく作ってもらえばええじゃろ。」
「そうですね。それを帝に宣言していただいたら完璧ですね。」
「それで、その後の金策は、どうするんじゃ。」
「それについては考えはありますよ。」
「藩札か?」
「ええ、今度は新政府の札ですから、太政官札とでもしましょうか。」
「そりゃ、ええが、紙が金になるんじゃろ、そりゃ傑作じゃ。」
「新政府に資金がないと出来ませんから、まずそこからですが……。」
「ばんくというやつじゃな。」
「そうですね。」
「やっぱり、三岡さんと話すのは楽しいのう。」
「そろそろ、時間よ。」
葛葉が小さく切った紙を数枚持って二人の話に入ってきた。そろそろ現界の時間では夜明けが近かった。
「三岡さんはこれを持って帰ってね。」
「これは?」
「霊符よ。これをもって九字を唱えると、わたしを呼び出せるわ。」
「葛葉さんを?」
三岡はそれが何になるのかという表情をした。
「私は現界では式神だっていったでしょ。」
「わたしに呼び出せるのか?」
「これは幸徳井にあった本物を複製したものだから、それほど霊力はいらないわ。」
「十兵衛さんは呼び出せるのか?」
「十兵衛さんは式神じゃないから無理。勝手に存在しているわ。今回は私の霊符を捜してくれたの。」
「で、龍馬さんは?」
「わしの形見か何かあれば、話はできるそうじゃ。」
「形見ですか……、写真はもらってました失くしました。」
「おお、写真を渡していた……失くしたのか。」
「龍馬さんが亡くなった時に激しい風が吹いて飛んで行ってしまいました。」
「そうなんか。」
「写真でいいなら、写真館に行けばあるんじゃない。」
「上野さんちは長崎じゃぞ。」
「十兵衛さん、出番よ。」
「俺が行くのか。九州なんて行ったことないぞ。あの辺りに転移する場所はあるのか?」
「さあ?ムーン辺りに聞いてみて」
十兵衛は一度行った場所については時間を問わず移動できるが、行ったことのない場所については近くの拠点を利用するしかなかった。
「まあ、写真が手に入るまでは、わたしを呼び出して」
「伝言して、ここで待ち合わせですか。」
「そうなるのう。」
三岡八郎は携帯扇風機型転送器で、福井藩邸まで転送された。
もう、外は薄明るく、夜が明けかけていた。
「五か条の誓文」につながる。




