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夏の思い出、夏の悲しみ


村へ向かう途中、ホタルは静かに地平線を見つめながら自然の景色を楽しんでいた。エアコンが効いているおかげで快適だった。彼女は自分が今バスに乗っている姿を想像していた。そのバスはちょうど目の前で止まっていた。


「あと4駅ね」と彼女は考えた。


「エアコンが強くてよかった」と彼女は、あのバスの弱いエアコンを思い出して言った。


「まあ、この車がいい投資だったっていうもう一つの理由だな」とゴチロウは答えた。


「そうね、私は反対していたわけじゃなくて、もっと小さな車か安い車から始めればよかったのにって思ってただけよ」と彼女は、灰色と白の小さな車、90年代のトヨタ・カローラを思い浮かべながら付け加えた。「今の時代じゃ実用的じゃないものね」


「確かに、エアコンはそんなに強くないだろうな」と彼は微笑みながら言った。


彼らのそんな小さな議論や会話はとても心地よく、時間が経つのも忘れるほどだった。次の議論が終わる前に、ゴチロウは車を止め、ようやく到着したと告げた。


そこには半分伝統的で半分現代的な二階建ての日本家屋があった。玄関は東京の建物のように現代的だったが、裏庭に続く部分は障子の引き戸があり、柔らかく拡散した光が室内に差し込んでいた。家の大きさに匹敵するほどの大きな庭があった。ホタルは驚かなかった。この村の叔父と叔母の家も同じような広さだったからだ。彼女はここにいる間に、ボーイフレンドと一緒に訪れることを計画していた。荷物を部屋に置いた後、二人は食料と水がないことに気づいた。残っているのは水のボトルが二本だけだった。


「さて、買い物に行く時間だな」と彼は言いながら鍵を取った。


「ちょっと待って、すぐに出るわ」


「待たなくてもいいさ、君を待ってたら餓死しちゃうよ」と彼は冗談を言った。


「はは、本当に面白いわね」と彼女はふくれっ面をしながら答えた。


「ここにいて、外はちょっと暑すぎるから。1時間で戻るよ」と彼は門を閉めながら言った。


彼が車をスタートさせると、白い薄手の夏のドレスを着た若い女性は、庭を探検することにした。若い頃に文句も言わずに耐えた暑い日々を思い出しながら。


「何が 'ちょっと暑すぎる' なのよ?」と彼女は眉をひそめながらつぶやいた。「若い頃は、これよりも暑い地面を歩けたわ」と彼女は庭の草に足を踏み入れながら言った。


プライドと彼を間違っていることを証明したい欲望に駆られ、裸足で歩くことによる他の結果を考えなかった。緑の中に足を踏み入れると、高い音が草むらから聞こえた。音の出所を確認できないまま、彼女はもう一歩踏み出すと、最初の音と似た強い叫び声が聞こえた。その音に驚いて彼女は地面に倒れた。


「何…何だったの?」と彼女は思った。


「どこを歩いているのか見なさい、ここはあなたの父親の家じゃないのよ」と再び声が聞こえた。


「さて、今朝の太陽にやられたかしら、家に戻るべきね」と彼女は前髪をかき分け、額に手を当てながら言った。状況にショックを受けていた。立ち上がろうとすると、また声が叫んだ。


「無視するな、人間」驚いて振り返ると、彼女は美しい青い目をした小さな白い蛇に向かい合った。彼女の目はその蛇に引き寄せられた。


「僕を覚えていないの?」彼女が反応できないほど驚いていると、蛇は別の形を取ることにした。それは青い目の小さな白いフェネックだった。


森に住むフェネックはいない。彼女が見たことのある唯一のフェネックは、友人である精霊のギンが、彼女が若い頃にかわいくて興味を持っていたために変身してくれたものだった。


「あなた、川の精霊なのね」


「そうだよ、やっと覚えてくれたんだね」と彼はかすれ声で言った。


「何てこと…」と言いかけたが、ドアが閉まる音で突然中断された。「ゴチロウ」と彼女は家に向かって視線を向けながら言った。


「そこで何してるんだ?」とゴチロウは窓から尋ねた。


「えっと、その…」彼女は精霊を探しながら振り返って答えた。


「その…」と彼は歩み寄りながら言った。


「虫に踏まれて転んだの」と彼女は恥ずかしそうにため息をついた。その答えにゴチロウは少し笑い、ホタルを抱きかかえた。


「さて、足の噛み跡をしっかり見せてもらおうか、竹川さん」と彼は彼女に頭を少し傾けて言った。ホタルは赤面した。


「まだ夜は始まったばかりね」と彼女は誘惑的な笑みを浮かべ、彼の唇を自分の方へ引き寄せた。そのとき、彼女の腹の音が鳴り、二人のキスは中断された。


「何かを食べる前に始めるのがいいと思わない?」と彼は優しく微笑みながら言った。その言葉にホタルは彼の胸に顔を隠したくなった。


挿絵(By みてみん)

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