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第二部 三十二話 【創造主の過去】

大会議の最中ベルゴールは今までの出来事を走馬灯のように振り返っていた。


(私はなんでこんな事になってるんだろう。

今までずっと上手くいってたのに。

・・・いや違うな。上手くいかなかったから私は異世界転生したんだ)


ベルゴールはまず前世の事を思い返した。


(私は前世じゃ普通のOLだった。

毎日会社行って、バカみたいな上司にバカみたいに愛想振りまいて。

仕事が終わったら歓楽街でバカみたいに騒いで、

どこにでもいる普通のOLだった)


(けどあの日、いつもみたいに騒いで、飲んだ帰り道。

私はふらふらと歩いてたら車道に倒れて、

たまたま来たトラックに撥ねられて、

気付いたらこの世界に居た)


ベルゴールは自身の失態を悔やむ素振りを見せながら回想を続ける。


(最初は意味がわからなかった。

異世界?転生?なにそれ?

私は初めて聞く話で全く理解出来なかった。

私を転生させた神様?みたいな奴の話もよくわからないし、転生後の世界もよくわからない。

私はそれなりにTVアニメや、漫画には触れているつもりだったが、

私の知る限り、異世界をモチーフにした作品はよくあったが、異世界転生をモチーフにした作品はあまりなかったと思う。

けどファンタジーの作品は好きだった。

だからこの世界も最初は楽しめるかもと思った。

けどそれはまさに幻想だった)


(私を召喚した国は魔族との戦争中だった。

すでに戦端が開かれていたからか、国は勇者を次々と召喚して戦争に投入していた。

私は8人目の勇者で、召喚されてすぐ状況を簡単に説明されたあと戦闘訓練を強いられた。

もちろん最初は私も拒絶した、

けどあいつらは拒絶する私を暴力で無理矢理従わせた。

嫌だ、帰りたい、戦いたくない。

そんな事を言う度に血が出るまで殴られた。

私は諦めて訓練を受けた。

指導してくれたのは7人目の勇者、

彼もまた無理矢理従わされて戦っている立場だった。

彼の話だと、3人目までの勇者はもう死んで、

4人目は国に忠誠を誓い、

5人目は嫌々戦い、

6人目は大怪我で療養中、

そして自分は戦いが嫌だからあえて後方支援をして国に尽くしているとの事だった)


(彼は優しかった。

スキルで状態をベストコンディションに出来るヒーラーなのもあるが、何より優しい性格をしていた。

だけど訓練自体は過酷だった。

軍から来た指導軍人達は容赦なく私を叩きのめした。

彼はそんな私を庇ってくれた。

私をヒールしたり、時には私の代わりに殴られたりまでしてくれた。

軍人達は私のスキルを使った作戦を考え実行する事しか頭になく、私はそんな作戦を成功させる為に日夜厳しい訓練を強制された。

そんな日々は確実に私の心を削って、時には死にたいと漏らしてしまう程辛かった。

けど、そんな時も彼は私を優しく慰めてくれた。

スキルで私の身体を癒し、心で私の心を癒してくれた)


ベルゴールは遠い過去を思い出し目を細めた。


(でもいよいよ私が実戦投入される日が来た。

私は恐怖でガタガタ震えて前夜を過ごしていた。

けど彼はそんな私を一晩中抱き締めてくれた。

あの日の温もりは忘れたことは無い。


実戦当日、命をかけて魔族と戦うその場に私はとうとう連れ出された。

今まで訓練で戦った魔物達とは違う、

魔族は明確な殺意を持って私を狙ってくる。

私は無我夢中で戦った。

スキルで言われるがまま剣、大砲、盾、戦道具を次々と作りつつ、戦場で兵士たちの有利になるような地形を作り補助する。

魔族に迫られたら魔術や剣術に合わせスキルを使って撃退する。

何度も死にかけ、何度も怪我をした。

いくつもの実戦を繰り返し繰り返し戦う日々。

国の連中はいずれ慣れるだなんて言っていたが、

私の心は全く慣れる事はなく、むしろ実戦を重ねるたびに戦いたくないという思いは増していった)


(戦いは日に日に激しさを増した。

5人目の勇者も死んだ。

6人目も回復して戦場に行かされ死んだ。

9人目、10人目の勇者達は訓練もそこそこに戦場に行かされすぐに死んだ。

4人目の勇者だけが1人で善戦しているおかげでなんとか戦線は維持出来ていた。

私は激戦を生き抜くたび、後方まで戻り7人目の勇者である彼の所へ行き束の間の穏やかな日々を過ごした。

彼は自分だけ後方にいる事に罪悪感を感じている様子だったが、

私は全く気にならなかった。むしろ彼のようなヒーラーが後方に居てくれるから私達は安心して戦えるのだと感じていた。

彼はそう言われ照れたように笑っていた。

私はその笑顔がとても好きだった)


(けど国はそんな日々も無慈悲に奪ってしまう。

11人目の勇者が召喚された。

11人目はまだ子供ながらとても強いスキルを持ち、戦闘にも乗り気だという。

国は勝負に出る事にした。

4人目、7人目の彼、私、そして11人目の子

4人の勇者と全軍を一気に投入し、魔族の本拠地を攻める最終作戦を実行するというのだった。

私は自分は構わないが彼を投入することには反対した。

殴られ蹴られても必死に訴えた。しかし国は変わらず、彼も最終作戦に投入される事になった。

魔族達が国の領地に築いた拠点。

この拠点を崩せばとりあえず魔族達は大陸の南まで退くしかなくなる。

逆にこの拠点を崩さない限り魔族との戦争はいつまでも続く。

私は戦争を終わらせる為に覚悟を決めた)


(私達勇者は全軍の先陣を切り突入する役割だった。

4人目と11人目の子が突入、私と7人目の彼がそれを援護する形だ。

私達が一気に拠点を攻め上がり、間髪を入れず軍が兵を攻め込ませる手はずだった。

作戦が決まり、決行前夜。

7人目の彼は初実戦前の私のように震えていた。

私はあの時と同じように今度は彼を抱き締めた。

彼は泣きそうな顔で笑ってくれた。

私は絶対この笑顔を守ろうと誓った。

この戦いが終わったら彼と共に生きたい、そう伝えようと決めた。

今思えば漫画なんかでよくある展開だった。

だったら私にはわかるはずだった。

そんな事を思って戦場に行けばどうなるか)


ベルゴールは自分の愚かさを嘲笑したい気分になった。


(最終作戦は苛烈を極めた。

魔族達は4人の勇者が現れ今までで1番殺気立ち激しく抵抗した。

しかし、4人目と11人目の子の連携で魔族の拠点はどんどん崩されていく。

特に11人目の子の力は凄まじく、実戦経験なんて無いのにも関わらず歴戦の4人目と同等以上に力を振るっていた。

私達はそんな2人が戦った後から必死についてゆく、

残党を制圧しつつ私のスキルで後から来る軍の為に戦いやすい地形にしつつ拠点の奥まで進行する。

時折私はダメージを受けるが、彼がすぐにヒールしてくれるおかげで私は被弾を恐れず戦えた。

私達はとうとう拠点の最奥にたどり着いた。

そこには魔族の将軍がおり、4人目と11人目の子の2人を相手取り激しく戦いを繰り広げていた。

私と彼はその戦いには参加出来なかった。

周りから魔族が次々と現れて、私達を包囲してくるので私達も必死に戦い包囲されないよう抵抗していたからだ。

私は時に目を失い、手を吹き飛ばされ、身体が半分ちぎれた事もあった。

しかし、彼のヒールは的確かつ迅速で、私が致命傷を負ってもすぐ癒してくれた。


だけどだんだん押されるようになり、私はおかしいと感じだした。

何故魔族達がこんなに溢れる?

何故こちらの援護はない?

後方から来るはずの軍はどうしている?

私は疑問に思い、高台から後方の軍を確認した。

そしたら彼らは間髪を入れず突入するはずが、拠点最奥から発せられる魔族の将軍のオーラに恐れを抱き、一歩も進めずにいた)


(私は激しい怒りを感じた。

私達勇者には恐れず戦えと命じるくせになんだそれは?

私は怒りを感じながらも頭では冷静に撤退する事に決めた。

彼に状況を伝え、後の2人にも伝え撤退しようとした。

しかし、私が彼らを見た時ちょうど戦いは終わった。


魔族の将軍を殺したのは11人目の子だった。

私が見たのはその小さな手に将軍の首を抱える姿だった。

4人目の勇者は腹部に傷を負い地面に座り込んでいた。

周囲の魔族達は将軍がやられた事を見て黙って撤退してゆく。

私は安堵し気が緩んだ。一瞬の油断。

その瞬間、魔族の残党が私の心臓を突き刺した。

私が血を吐き地面に倒れた。

その私を魔族は次々と突き刺した。

私は死を覚悟したが、

そこに来てくれたのは彼だ。

彼は震えながら魔族を押しのけて私を治療してくれた。

魔族は彼も突き刺し治療させまいとしていた。

彼は自分より私を優先して治療をした。

私が止めて!と言っても、魔族にいくら刺されても治療を止めなかった。

私の傷を全部癒した彼は倒れた。

私はすぐ魔族を瞬殺し彼の傷を確かめた。

背中一面の刺し傷、血を吐いてる様子からして内臓もズタズタだろう。

私は治癒魔術を使うが、私の拙い魔術では治らないのは明らかだ。

私は彼に自分を治癒するよう必死に訴えた。

しかし彼はいつものように笑って私を見つめるだけだった。

もう彼には自分を治癒する力は残っていなかった。

私は必死に周囲を見渡した、しかし治癒術師もいるはずの軍は未だ拠点入り口から動いていなかった。

藁にもすがる思いで、4人目と11人目の子を見ると、

11人目の子が4人目の勇者を殺していた。

魔族の将軍が身に付けていた短剣を4人目の心臓に突き刺し殺害したのだ。

そして11人目の子は何の関心もない様子で4人目の勇者を打ち捨て私達の所に来た。

私は瀕死の彼を守るように胸に抱え11人目の子を睨見つけた。

11人目の子は短剣をもう1本取り出し、私に渡してきた。

彼が死ぬ前にその短剣で殺せば彼のスキルを奪えると。

私は何故そんな事を知っているのか11人目の子に尋ねたが、答えることもなく立ち去り二度と姿を見せなかった)


(私はその短剣を汚らわしい物のように打ち捨てようとした。

けど彼はやってほしいと言ってきた。

彼は途切れ途切れのかすれた声で私に自分のスキルを奪うように言う。

自分はどうせ死ぬ、けど自分のスキルを私が持ってくれていたら死んだ後も私を守れるそう言うのだ。

私は涙を流して拒絶した。それだけは絶対に出来ないと彼に伝えた。

しかし彼は黙っていつもの笑顔を見せてくる。

もうだんだん目から光が失われてゆく。

彼の時間が尽きようとしていた。

彼は最後に何かを呟いた。

私はそれを聞いた瞬間、彼を抱き締めて絶叫しながら彼を短剣で貫いた。

そして私はその短剣と自分のスキルを融合させて涙を流しながらオーダースーツの原型を創り上げた。

自分じゃない人になりたかった、悲しみが辛すぎるから。

国から逃げたかった、私達を見捨てた奴らが憎いから。

戦いたくなかった、戦いさえなければ彼は死ななかったから。

私はそんな思いからオーダースーツを作り国から逃げた)


(逃げた後は知らない。

しばらくして国が滅びたらしい噂を聞いたけどどうでもよかった。

私はオーダースーツを改良しながら旅を続けた。

そして自分が生きるために、彼の想いが籠ったオーダースーツをきて生き抜く為に街を作る事を決めた。

街を作って、自分の安全を確保する。

勇者が戦わなくても良いように傭兵団を作り

魔族に対抗する。

もう私達みたいな戦いたくない人が戦わなくて良い世の中にする。

そう決めて私は傭兵街を作り今日までやってきた。

なのに・・・)


「ベルゴール?何黄昏てんの?あ、もしかしてボケちゃった??ハハハ♪」


ベルゴールは回想を、軽薄なヒロシに邪魔されヒロシを睨んだ。


「うるさい、あんた」


ベルゴールはオーダースーツを脱ぎ去りヒロシに向き直った。

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