第二部 三十話 【大会議】
コルリルはヒロシ、ディロン、光と共にラボへ戻った。
ラボに戻ると、魔力切れで衰弱したフォシュラと、
彼女の世話を焼くゴブリーヌが出迎えてくれた。
「おかえりなさい・・・
案外・・・早かったのね。
もう少しかかるかと思・・・ってたわ」
フォシュラが息も絶え絶えといった風情でパーティを出迎えた。
ディロンがすぐにフォシュラを支えるためそばに駆け寄っていく。
「フォシュラ!大丈夫か!?無理するな!横になって休むんだ!」
そう言ってディロンは無理矢理フォシュラを抱えてリビングルームのソファーへ寝かしつけた。
「ちょっと!ディロン兄ぃ!
わ、私なら大丈夫・・・だって!」
「嘘を付くな!全く身体に力が入ってないじゃないか!
魔力が切れかかった証拠だろう!?今はゆっくり休んで食事をして回復に専念してくれ!」
ディロンはフォシュラを心配し、あれこれと世話を焼いている。
フォシュラは少し恥ずかしそうにしていた。
「もう!ディロン兄ぃ!恥ずかしいから止めて!」
恥ずかしがるフォシュラを見て、コルリルは嬉しさが込み上げてきた。
「本当にフォシュラとディロンさんは仲良しだなぁ〜」
「そこ!ほほえましい感じで見てんじゃない!!」
フォシュラが照れながら怒鳴るが、コルリルは気にならなかった。
フォシュラは一息入れた後、身体を無理矢理起こして光に向き直った。
「フォシュラ・・・」
「ディロン兄ぃは黙ってて」
心配するディロンを制止し、光の前に立つフォシュラ。
光はオドオドしながらフォシュラから目を逸らしている。
「光、あんたわかってんでしょ?
あんたにめちゃくちゃな魔術を撃ち込んだのは私。
あんなの絶対仲間に撃って良い魔術じゃなかった。
けど、街を守る為に仕方なく撃った。
・・・ごめんなさい」
フォシュラは深々と頭を下げた。
それを見て光は更にオドオドしだした。
「ちょ!やめてよフォシュラ!ぼ、僕なら大丈夫だか・・・」
「無敵だから大丈夫なんて言い訳にならないわ」
フォシュラは頭を下げなから光の言葉を遮った。
「確かにあんたは無敵だし。
街に迫る魔族達の力は、離れた場所に居た私にも感じれるくらい強かった。
あのまま魔族達が襲撃してきてたら、街は間違いなく壊滅だった。
あれ以上街に近付く前に倒すにはああするしかなかった。
・・・けどだからってやって良いことと悪い事はあるわ!
あんたが私を許さないって言うなら、私の事好きにしていいわよ」
頭を上げ、光をまっすぐ見つめながら話すフォシュラの眼差しは真剣だった。
光はさらに怯んでしまう。
「いや、だから僕は大丈夫だって・・・」
「フォシュラ!何であなたが責任を負うのよ!
これは皆の責任よ!だから光君が許さないなら私が罰を受けるわ!」
光を遮り、コルリルはフォシュラをかばうように前に出た。
コルリルとしてはフォシュラだけに責任を取らせるつもりは全くなかったからだ。
そんなコルリルを見て光はさらにたじろいだ。
「い、いやいや、コルリルも落ち着いて?僕なら大丈夫だから!だから罰とか・・・」
「待て待て、妹の罰は兄が肩代わりするものだ。
光!お前の気が済むまで俺を殴れ」
すると次はディロンが前に出てフォシュラとコルリルをかばいだした。
「コルリル、ディロン兄ぃ・・・」
フォシュラとコルリルをかばい、前に出たディロン、そんな様子を見てフォシュラは感極まったかのように2人を見つめていた。
光はもうどうしたら良いかわからない様子だ。
「いや、あの、だからね?僕は大丈夫なんだけど・・・」
光の言葉は、3人がそれぞれ自分が責任を取る!という言い合う渦の中に小さく消えていった。
しばらく誰が責任を取るか話し合っていたが、ヒロシの
「光君が良いって言うんだから良いんじゃな〜い??」
という言葉でひとまず議論は保留となった。
ちなみにヒロシはずっとその話し合いの最中光の事を観察していた。
「それにしても光君凄いね〜!ホントにノーダメージなんて凄すぎ!
てかアニメとかじゃお約束だけど、服まで破れもしてないのも不思議だね??」
ヒロシは光の服を触って不思議そうにしている。
コルリルは久しぶりにヒロシへ知識の助け舟を出した。
「それは勇者様の力が身に纏う装備にも影響を及ぼすからですよ。
ヒロシ様のスキルじゃ分かりにくいですが、
う〜ん、例えばあのエディ様のスキルは何でも切れるスキルだったじゃないですか?」
コルリルの助け舟にヒロシは目を輝かせ乗ってきた。
「うんうん♪今は僕のメスになってるやつね♪」
「はい、それです。
あのスキルは何でも切れるスキルを武器に乗せて発動するタイプでした。
つまりスキルが装備に影響を及ぼしたわけです。
ただの刀が何でも切れる刀になったのですから、
光君の服が何でも防ぐ服になったのも不思議じゃありません。
もちろん光君が脱いだらただの服に戻るはずですが」
コルリルは久しぶりにヒロシへ教える事が出来て嬉しかった。
旅の最初は色々とヒロシに聞かれてうんざりしていたが、
最近は何も聞かれなくなっていたので寂しかったのだ。
「へぇ〜なるほど〜!そりゃ凄いね!
じゃあ光君の服の中に誰かが入ったらその人も無敵になるのかな?」
「さ、さぁ?それは試してみないとわかりませんね」
コルリルは突拍子もないヒロシの言葉に戸惑った。
「じゃあ試しにフォシュラ!ちょっと光君の服の中に入ってよ♪
そのフォシュラにディロンが思いっきりパンチしたらどうなるか試してみよう♪」
「な、ななな!何言ってんですかヒロシさん!!」
顔を真っ赤にして拒否する光と、
「・・・別に良いけど、それもし無敵にならなかったら私死ぬじゃない」
ジト目でヒロシを睨むフォシュラ、
「ふざけるな!こんなに弱ったフォシュラへ貴様何をさせる気だ!!」
激昂してヒロシに掴みかかるディロン、
四人はにぎやかな様子でワチャワチャしている。
それを見てコルリルは和やかな気持ちになっていた。
このままずっと見ていたかったが、そうもいかないので大声で騒ぎを鎮める事にした。
「はーい!皆さん静かに!!
ヒロシ様!実験はまた今度です!今はパーティに説明する時でしょ?
今回の戦いの経緯や、結果。色々説明してもらいますからね!実験はその後!」
コルリルはヒロシを叱責して今回の件に関する説明を求めた。
するとヒロシは少しキョトンとした後、コルリルに向かって話しだした。
「あはは♪そうだね♪今回はちゃんと説明しないとだね♪
よし!じゃあ説明するけど、ここじゃ何だしちょっと待ってて!」
ヒロシはそう言うやいなや、ラボを開き消えていった。
残されたコルリル達はひとまず黙って待つしかなかった。
しばらく皆でポツリポツリと話すだけの時間が過ぎた。
だいたいの話題は光への謝罪と、ヒロシはいつ戻るかの2つだった。
「何度も言うけどごめんね光君?あんな風に囮にしちゃってごめんね?本当に痛くなかった?嫌じゃなかった?」
コルリルは光に何度も何度も謝っていた。
光は苦笑いしながら気にしないで欲しい様子を見せている。
「ははは、本当に大丈夫だよ?
何にも痛くなかったし、囮にされるのも慣れてるし。
ちょっと暑かったくらいで全然大丈夫!
だから本当に気にしないで?
・・・フォシュラも気にしないでね?」
そう言われたフォシュラはムスッとした表情のまま光から気まずそうに目を逸らしている。
「・・・あんたは大丈夫でも私の気は晴れないわ。
あんた本当に謝罪は何もいらないの?あんたが望むなら私は殺されても文句ないわよ?」
フォシュラのその言葉にディロンは光を睨む。
もし光がフォシュラに危害を加えるなら代わりに自分が。と、考えているのがコルリルにもわかった。
光はそんなディロンやフォシュラを見てため息をついた。
「・・・はぁ~。いやもう本当に大丈夫だから。
フォシュラは街を守る為にしたんでしょ?じゃあもう良いじゃない。
僕は何ともないし、全然気にもしてないし」
光は珍しくちょっと不機嫌そうになっている。
コルリルはどうしたのか心配になった。
「光君?どうした・・・」
「お待たせ!!じゃあ会議、いや大会議を始めるよ!!」
コルリルが光へ話しかけようとしたら急にヒロシが現れ、全員をラボで拘束した。
そのままラボの床へ沈み込み、コルリル達はラボ内をぐんぐん進んでいく。
コルリルが、
(ラボってこんな事も出来たの!?てか何急に!?)
と驚いている間に目的の部屋に着いた。
そこはまるで小さな劇場のような作りの部屋で、中央の開けた空間を囲うようにボックス席が用意され、コルリル達はそれぞれ離れた席に誘導されていた。
フォシュラやディロンはキョロキョロと辺りを見渡し驚いていた。
光はまだ不機嫌な様子なのでコルリルはまた心配になった。
そしてヒロシが中央の空間に現れた。
何故か舞踏会で身に纏うような衣装を身に着けている。
「皆様!ようこそいらっしゃいました!」
ヒロシが一礼する。
「今宵は我らパーティの大会議!
パーティの皆様!
そしてご観客の皆様!
是非是非お楽しみ下さい!!」
「観客??」
コルリルはヒロシの急な司会に驚き、観客と聞いてキョトンとした後、
他の客席に座る人物達を見て驚愕した。




