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第二部 二十七話 【襲来】

ヒロシは無事作戦が上手くいき安堵していた。

アルケインからベルゴールの話を聞いた時、

ヒロシはベルゴールが何らかの変装をしている事を予測した。

そして変装を解いたらおそらく自分のスキルでは捕捉出来なくなる事も想定した。

ヒロシのスキルでは一度会った人物の所にラボを開けるが、

変装していて姿形が明らかに違った場合もちゃんとスキルが捕捉してくれるか自信はなかったのだ。

だから急いで仕掛けたのだった、もし逃げられたら光の契約を破棄するのは難しいからだ。


(案の定変装してたなぁ。

しかも逃げようとしてるし。

多分一旦逃げて体勢を立て直す気だったな。

うわ〜危ない危ない)


さらにヒロシは先日開白と遭遇したのもベルゴールの仕業だと確信していた。

その理由はおそらく、光を引き抜こうとするヒロシ達が邪魔になったから。


(あの爺さん強すぎるからなぁ〜

多分あらかじめこちらの依頼先に開白を向かわせて鉢合わせするように仕向けたんだろう。

あの爺さんなら僕等と出会えば間違いなく戦闘になるしね)


ベルゴールはこちらに敵意があり、実力行使も辞さない覚悟だ。

光の事を差し引いても、そんな相手をみすみす逃がすわけにはいかなかった。

ヒロシはすぐさま仲間達を率いて奇襲をかける策を考えたが、

同時にある事も想定した。


(ベルゴールにはまだ傭兵の部下が多数いる。

そいつ等を抑える役割はディロンにピッタリだ。

光君には魔獣達の相手をしてもらう、今はあまり意味はない行為だけど、後々必ず役立つはず!

そして・・・)


ヒロシはディロンと光にそれぞれ役割を与えて、

自分一人でベルゴールと対決するつもりだった。

コルリルも付いてきたのは予想外だったが、

ヒロシの策に影響はなかった。



ヒロシは咳き込み倒れたベルゴールを見て、

自分の研究成果に改めて満足していた。


「ベルゴール君?どうかな気分は??かなり辛いはずだけど??」


「ゲハッ!あ、あんた!わ、わたしに、な、な、なにをしたの!?」


咳き込みながらもベルゴールはヒロシを睨み付ける。

ヒロシは懐からある毒の瓶を取り出した。


「これはね、魔族からゲットした毒でね♪

空中に散布したら範囲内の生物を軒並み衰弱させる強毒なんだよ♪

この毒には解毒魔術もあまり効果はなく、解毒剤も存在しない♪」


ヒロシは意気揚々と毒の効果を語る。

ベルゴールは悔しげにヒロシを睨みながら反論した。


「う、嘘ね!あんたも範囲内にいるじゃない!

あ、ゲボゲボッ!あ、あんたも毒の効果を受けるはずでしょ!!」


ヒロシはベルゴールの言葉を聞いてニンマリと笑った。


「フフフッ♪それがこの毒の面白い所でね?

散布する前に感染させたくない人の血を混ぜ合わせてから散布したら、

その人は毒の効果を受けなくなるんだよ♪

ハハハ♪変な効果だけど面白いよねぇ?

あ、ちなみにコルリルは多分魔力球が毒を防ぐはずと思ってたけどそれも想定通りだね♪」


「ヒロシ様!もし防げなかったらどうしてたんですか!?私死んじゃいますよ!?」


コルリルが抗議の声をあげるがヒロシは笑って誤魔化した。

ベルゴールが外を見ると、屋敷の上空からヒロシのゴブリン達が毒を散布しているのが見えた。


「汚い真似を!あ、あんた!こんな事して、いったいどうする気よ!」


「もちろん君に交渉を持ちかけるんだよ♪」


ヒロシはにこやかにそう宣言しベルゴールの前にしゃがみ込む。


「もう一度聞くけど、君、僕の手下にならない?

ラボに入って僕の為に研究道具やいろんなアレコレを作って欲しいんだよ♪

作ってくれるなら身の安全は保証する。

僕のラボにいれば絶対魔族達には襲われないし、

ラボの中に限れば君は自由に行動して良い。

食事も提供するし、生活に不自由はさせない。

どうかな??ちょっと考えてみて?」


ヒロシは再び優しげにベルゴールに提案する。

ベルゴールはヒロシを胡乱げにみていたが、

だんだん毒が回ってきたのか苦しそうにしていた。


「あ、ちなみにこの毒は散布範囲外に出たら割とすぐに解毒されるよ?

君がラボに入ればすぐ治るはずさ♪

けどラボに入らないならこのまま死ぬだろうね」


ヒロシはあっさり言ってのけた。

ベルゴールはもう身体もだんだん動かなくなってきていた。

必死に考え込むベルゴールをヒロシは黙って見ている。


「ヒロシ様!ちょっと可哀想じゃありませんか?彼?彼女?を仲間にするならまずは毒を撒くのを解除しましょうよ?」


コルリルの助言をヒロシは無視した。

今散布を解除したらベルゴールは間違いないなく反撃してくる。

ヒロシは注意深くベルゴールを観察していた。


「ゲホゲホッ!あ、あんたのラボ?に入れば私は助かるの?

そこであんたの奴隷みたいに働けっての?」


「奴隷とは違う。

僕はあくまで君の、

そうだな、上司にあたるのかな?

仕事を依頼して君はそれをしてくれたら良いだけだ。

それ以外は君に何もしないと約束しよう。

仕事上の上司部下という間柄を徹底して、

セクハラやパワハラもしない。

君に指一本も触れたりはしない」


ベルゴールはヒロシを睨む。


「それを信じろって?」


「信じれないならこのままここで死ぬだけだね。

さぁ、あとは好きに選べば良い」


ヒロシはあとはお任せと言わんばかりに立ち上がり、

ベルゴールから離れた。

アワアワするコルリルを尻目に黙って待つ。


ベルゴールはしばらく咳き込みながら考えたあと口を開いた。


「ひ、1つ約束して、私個人の部屋を作って。

ゲホ、その部屋にはあんたはもちろん誰も入らせないし、見れないようにして。

それを守ってくれるならあんたに従うわ」


「お安い御用だね♪じゃあ交渉成立だ♪」


ヒロシはベルゴールに手を差し出す。

ベルゴールは少し迷ってからその手を握り立ち上がった。


「じゃあちょっと待ってて♪」


ヒロシはラボを開き中に入ってベルゴールの為にすぐ部屋を作った。

あらかじめ作っていたベルゴール用の部屋に個室を追加し、また外へ戻る。


「お待たせ♪ちゃんと君の部屋を作ったよ♪

じゃあ一旦毒が完全に抜けるまで自由に休んでて♪

また改めて訪ねるから♪」


ヒロシはそう言ってベルゴールをラボへ誘う。

ベルゴールはよろめきながらラボの入り口に入った。

しかし、完全に入る前にヒロシへ向き直る。


「1つ忠告よ、あんたが私のオーダースーツを引き裂いたから私の勇者の気配が漏れたと思う。

つまり今この街には私と、あんたと、光、3人の勇者の気配がするはず。

それを魔族が見逃すはずないわ。

すぐに襲来があるはず」


「わかってるよ、すでに偵察によると街に向かって魔族が進軍してるみたいだね♪

次は魔族との戦いだ♪ワクワクだねぇ♪」


ヒロシは本当にワクワクしながら魔族との戦いを楽しみにしている。

ベルゴールは呆れてラボに入っていった。

ヒロシはすぐにラボを閉じた。


「よし!ベルゴールゲットだぜ♪」


「ヒロシ様!魔族がきているって本当に??」


コルリルが慌てて問い詰めてくる。

ヒロシは笑いながら肯定した。


「うん♪もう街のすぐそこまで迫ってるね♪

偵察ゴブリン達によると街に着くまであと5分くらいかなぁ?」


呑気に構えるヒロシとは対照的にコルリルは慌てふためていた。


「あと5分!?ど、どどど、どうするんですか!?」


「まぁまぁ、落ち着いてコルリル、

魔族達はもう一人の勇者がきっちり抑えてくれるはずさ♪」


ヒロシはそう言ってラボを開き、光の様子を確かめた。

光は未だ複数の凶暴化した魔獣達と追いかけっこをしており、その場所にもう少ししたら魔族が現れるはずだった。


(よしよし、事前に予想した通りだな♪

僕らがベルゴールに仕掛けて、

彼、いや彼女が能力を使うと、この地に勇者が3人居るとなり、必ず魔族に探知される。

サイマールの時も魔族の動きは早かった。

勇者が3人となれば尚更早いはずだ。

だから光君に魔獣達を引き付けてもらってて大正解だ♪

魔族達はあの魔獣達と戦うしかないはず、散々凶暴化させてるから魔族達にも魔獣を従えさせるのは難しいだろう。

あわよくば全滅してほしいけど・・・

まぁそれはさすがに無理だろなぁ)


ヒロシは事前に事態を想定していた。

勇者の気配を感知して魔族が現れる事、

魔族が襲来するだろうおおよその方角、

そしてそれに対する対策。

全て計算通りだった。


(よし、あとはフォシュラを出す為に・・・)


ヒロシがベルゴールの館から移動しようとした瞬間、

ガシャン!

何かが窓を突き破り飛来した。

ヒロシ達は全く反応出来なかったが壁に突き刺さった物は槍だった。


「ん?槍?いったいなんで・・・?」


「おぉい!このクソ勇者が!中に居るんだろうが!出てこいやぁ!!」


ヒロシの疑問はすぐに解決した。


「あぁ、あの粗チン君か」


ヒロシはどうでも良さげな様子で窓の外を見た。

赤槍のローワンが無数の槍を地面に突き立て、

その中央で仁王立ちしていた。


「やっと顔を見せたなクソ野郎!

仲間の敵撃たせてもらうからな!」


「仲間?君の粗チン仲間かな?」


「ヒロシ様!下品ですよ!!」


コルリルは真っ赤になって注意したが、ヒロシは無視した。


「てめぇ、ぜってぇ許さねぇ。

あいつらは仲間だったんだ!

それをあのデカブツが・・・」


「デカブツって彼の事?」


ローワンが振り返るとディロンがラボから現れた所だった。


「てめぇ!!!」


ローワンが怒りに任せて槍を構えディロンに突進していった。

ディロンはあっさりその槍を躱しローワンの腹部に拳を振るった。


「ガハッ!」


ローワンは苦悶の叫びを上げ、一発で気絶した。


「おぉ!さすがはディロンだね!頼りになるぅ♪」


「何なんだいったい・・・」


ディロンはローワンを打ち捨てて、

ヒロシ達が居る二階の部屋へ下から一息で飛び込んだ。


「ラボが開いたから来てみれば何の騒ぎだ?

もう傭兵達の足止めは良いのか??」


「あら?足止めってわかってた?

僕はただ傭兵達と戦って〜としか言ってないのに」


ヒロシはディロンがこちらの思惑を見抜いて動いていた事に少し驚いた。


「わかるに決まってるだろう、もうお前のやり方にも慣れたぞ・・・

それよりコルリル?お前は大丈夫だったか?

まだ体調は万全ではないのだろう?あまり無理するなよ?」


ディロンはヒロシよりコルリルの心配をしていた。

コルリルは

「わ、私は大丈夫です!」

と魔力球の中で手を振ってバタバタしている。


「無理するな。

それはフォシュラの魔力球だな?その中なら安全だ。

ゆっくり休んで身体を大事にしろ」


ディロンはひたすらコルリルを気遣う。

どうやらディロンはコルリルが開白との戦いでフォシュラを守ってくれた事に恩を感じている様子だった。

ヒロシはそれを見て妙にほっこりとした安心感に包まれた。


「フフフッ♪良い感じだねぇ〜♪」


ヒロシは魔族がもうすぐ現れる事、

街中の傭兵達から目の敵にされている事、

色々問題はあるけれど、まぁ何とかなるか♪

と二人を見てそう思ったのだった。


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