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第二部 二十三話 【暗躍する勇者】

ヒロシはプレイの毒を得れて有頂天だった。


(よし!よしよしよし!!さすが光君!マジで助かった!)


ヒロシはすぐ毒を解析した。

プレイはいくつもの毒を渡してくれたようで自然由来の毒とは比べ物にならない程貴重な毒もあった。


(うわぁ!なんだこれ!?強酸毒に、超強力な神経毒、うわぁ~こんなの浴びせられたら絶対即死だよなぁ!いやぁマジでテンション上がるなぁ!)


ヒロシは解析した毒を夢中で研究していた。

そしてある1つの毒に注目した、


(なるほど、この毒ならベルゴールもなんとか出来るかもなぁ?

よし!さっそく策を練らなくちゃ!)


まずヒロシはラボの極秘研究室へ向かった。

この部屋はヒロシ以外誰も立ち入れないよう他の部屋とは隔絶されており、

コルリルやフォシュラ達はおろかゴブリンも入る事は許されていない部屋だった。


今この部屋には一人の男が監禁されていた。

その男とはギルドから忽然と消えた管理者テーヴァだった。

テーヴァは部屋の拘束台に張り付けにされており、ヒロシが部屋に入ると怯えきりながら叫びだした。

 

「なぁ!もう許してくれ!私が何をしたんだ!なぁ!もう良いじゃないか!?」


テーヴァは衣服を全て剥ぎ取られ全身に生える羽毛の半分以上を毟り取られ、

爪は折られ足には杭を打ち込まれていた。


「へぇ?さすがは亜人だねぇ?身体の造りが頑丈なのかこれくらいの傷じゃ死なないんだねぇ♪」


ヒロシはテーヴァがまだ元気そうなので安心した。

一方テーヴァは怯えながらも必死にヒロシへ訴えかけた。


「わ、私が悪かった。あの勇者への無礼な態度は謝る。

だからもう解放してくれ・・・」


「うん♪かまわないよ♪けどもう少しお話してからね♪」


ヒロシの言葉にテーヴァは希望を感じたようだった、


「あぁ!な、何でも話すよ!何でも聞いてくれ!」


「良かった♪じゃあ聞くけど、ベルゴールの能力は知らないんだよね?本当に心当たりないかな?」


「本当に知らない!ベルゴール様が勇者だったのかも分からない!

彼は素晴らしい統治者だがそれだけだ、能力があるなんて聞いた事もない!」


テーヴァは必死に答えている、嘘はないようにヒロシは感じた。


(ふむ、ギルドの管理者であるこいつも知らないなら、あと知ってそうなのはベルワンヌ?もしくは警備隊長か、親族はいたのかな?)


ヒロシはベルゴールの能力を知る為、誰に質問すればわかるか考えたが結論は出なかった。


「ねぇ?ベルゴールには親しい人や家族はいないの?」


「わ、分からない、彼は特定の人物と交流は深めない、皆に分け隔てなく接していた。

だから家族も居なくずっと独り身だ」


テーヴァによるとベルゴールは優秀な統治者だがプライベートはなく、街のためだけに生きているような人物のようだ。

ヒロシはますます困った。


(はぁ、これじゃ情報不足だなぁ・・・

仕方ない、これはアルケインに頼るしかないなぁ)


ヒロシは考え込んでいるとテーヴァはまた哀れっぽく訴えだした。


「なぁ、もう良いだろ?そろそろ解放してくれ・・・」


ヒロシはテーヴァをチラリと見て笑顔を見せた。


「そうだね♪そろそろ解放してあげようか♪

じゃあ最後にいくつか質問するけどいいかい?

この質問に答えれたら僕は君の前に二度と現れないからさ♪」


「も、もちろんだ!」


ヒロシはにっこりしながら質問する。


「僕の調べでは君はギルドの管理者だけど、ギルドの売上からいくらか着服してたでしょ?ベルゴールにバレないようにこっそりとね」


「・・・し、知らな」


テーヴァがしらばっくれるとラボが動きテーヴァの片足を圧砕した。


「ギャァァァ!!」


「嘘付いてもわかるよ?正直に答えないと手足がなくなるからね?」


「わ、わかった、わかったよ。

ち、着服していた、だがわずかばかりだし誰にも迷惑はかけていないし・・・」


「次、君は得たお金を何に使ったのかなぁ?

いけない事に使ったんじゃないかなぁ?」


「そ、それは・・・」


テーヴァが言い淀むともう片方の足をラボが包みだし圧縮しだした。


「ま、待って待って待って!わかった!は、話す話すから!

・・・ど、奴隷を買った、けど街には奴隷商人も居るし別に違法では・・・」


「その奴隷商人の商品が年端のいかない子供でも?

戦えなくなった傭兵やその家族でも?

ましてや君が工作して明らかに実力の足りない傭兵に難しい依頼を当てて怪我を誘発させ奴隷に仕立て上げるなんて事をしても?」


ヒロシの言葉にテーヴァは愕然としていた。


「な、なぜそれを・・・」


「フフフ♪街にはゴロツキはたくさんいるからね♪彼らも別の部屋に居てお話したら色々話してくれるんだよ♪

・・・君がギルド管理者という立場を使って悪さをしてるお話もね♪」


ヒロシはますますにっこりしてテーヴァに笑いかけた。


「全くいい趣味だね〜ギルドにきた傭兵で気に入った奴はわざと怪我をさせ奴隷に仕立て上げる。

奴隷にならなかったら君の手駒になる傭兵を使って無理矢理監禁してしまうわけだ♪

彼らの家族まで一緒に奴隷にしたり捕まえるのはあれかな?彼らの目の前で家族を殺すのが快楽なのかな??」


「ち、違う、わ、わた、私がそ、そんなまさか」


テーヴァはガタガタ震えながら抗弁するがヒロシは聞いて居なかった。


「他にも色々やってるねぇ〜

ギルドの権力を笠に商人さんから無理矢理格安で買い物したり、

街へ来た貴族が帰る時に付近の盗賊へ情報を流して見返りに金をもらったり、

ギルド内でも気弱な職員への高圧的な態度や性的な言動もあったみたいだし、

まぁ〜はっきり言ってキモいね!」


ヒロシはテーヴァのこれまでの行いをつらつらと語りキモいとばっさり言い捨てた。


「わ、私が悪かった、もう悪さはしない、だから解放して・・・」


「いやぁもう悪さしないとかじゃなくて、

君がこうなってるのは、未来の行いじゃなくて、過去に行ってきた事が原因なんだよ??

今まで散々悪さしてきたんだからさ諦めな?」


ヒロシはそう言って注射器を取り出した。

中には先程手に入れたプレイの毒から作った特製の薬剤が入っている。


「や、やめろ!な、何をする気だ!!」


「フフフ♪何かな♪何かなぁ〜♪」


ヒロシは薬剤を嫌がるテーヴァの首に注射する。

テーヴァは途端にもがき苦しみだした。


「ギャァァァ!ガバッ!た、助け、助けて!」


激しい痛みと呼吸苦でテーヴァは死にかけていた。

しかしヒロシはにこやかな様子だ。


「ふむ、やっぱり亜人でも効力は同じか、この薬は使えそうだな♪」


もがき苦しむテーヴァを尻目に満足そうなヒロシは部屋から立ち去ろうとする。


「ま、待って!か、解放してくれるんじゃ・・・」


「あぁ、うん、もう尋問はしないし拷問もしないよ?君は自由だ♪僕から解放してあげる♪

ただ君にさっき注射した薬は魔族の毒を元に精製した薬でね?

毒が全身に回ると激しい痛みと呼吸苦を引き起こす、検証はしてないけどだいたい数日後には死に至るはずかな?」


ヒロシの言葉にテーヴァは許しを請う。


「助けて、助け、か、金なら払うから、いくらでも払うから・・・」


「あぁいらないいらない、ちゃんと助けてあげるから♪

この部屋はね、ラボの新たな機能で回復機能があるんだよ♪

ほら?君の足も血は止まってるだろ?」


ヒロシが手を振るとテーヴァは拘束から解き放たれ地面に倒れた。

先程潰された足は、足こそ無いが傷口からは血は出て居なかった。


「ね?君の全身の傷もゆっくり治るはずさ♪

ただラボじゃ回復はするけど君の体内の毒は解毒出来ないんだよ?

そしてその毒は君の身体を蝕み体内で増殖する特性があるんだ♪意味わかるかな?」


「え?あ、え??」


テーヴァは意味がわからない様子なのでヒロシは満面の邪悪な笑みで答えた。


「つまり、君は身体は回復する、けど毒は解毒出来ないからずっと苦しむ、

毒で身体が傷つき、ラボが回復する、この繰り返しになるわけだ♪

じゃあ残りの人生をこの狭い部屋で謳歌してくれたまえ♪

僕は約束通りもう二度と君の前に現れないからさ♪」


ヒロシはそう言ってラボを開き立ち去ろうとする。

ヒロシの背後で部屋が変容しテーヴァは四畳半程に縮まった何もない部屋に取り残される。


「ま、待って!止めくれ!助け、助けて!」


ヒロシは最後に振り返りテーヴァへ言い放つ。


「君はそうやって命乞いをした傭兵達に何をしたのかな?

彼らは家族だけは助けてと言って君に懇願したはずだよね?

そんな彼らに何をしたのかな?

残りの人生その事を悔いて過ごすと良いよ」


ヒロシは部屋を閉じ、叫ぶテーヴァを完全に閉じ込めた。




ヒロシはその後アルケインに会う事にした。

テーヴァからの情報だけだとあまりにも情報不足なので、アルケインが手に入れているであろう情報と擦り合わせ策を練るつもりだった。


(さぁてアルケインは良い情報仕入れてくれてるかなぁ?)


ヒロシはラボを開き移動した。

外に出るとそこは以前、共に茶を楽しんだ場所だった。

アルケインは兵達と会議中だったようで突然現れたヒロシに驚愕していた。


「やぁ♪久しぶり〜♪元気だったかな?」


「ヒロシ!貴様!いきなり現れるな!来る時は連絡しろ!」


アルケインはそう言いながらも会議を打ち切りヒロシと話してくれるようだった。


「ははは♪ごめんごめん♪早くアルケインに会いたくてさ~♪

それで!何か情報は仕入れてくれた??」


ヒロシの言動にアルケインはため息をつき呆れていた。


「全く、お前は本当に自分本意だな!

・・・情報なら少しだがわかった事がある。

とりあえず座れ、またお茶にしよう。

話はそれからだ」


「了解!うわぁ♪またアルケインのお茶飲めるの嬉しいねぇ〜」


ヒロシはアルケインとお茶を飲み情報交換出来るのが楽しみで仕方なかった。

その頭にはもうラボの一室で残りの数百年という寿命を苦しみ生きる事になったテーヴァの事は全く残っていなかった。

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