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第二部 十五話 【仮仲間と楽しい旅路】

コルリルはヒロシ、フォシュラ、光の三人とゆっくり街道を進んでいた。

目指す目的地はまだまだ先だが、コルリルは落ち着かず三人の周りをプカプカ飛び回っていた。


「ちょっと!あんたウザい!!落ち着いて飛びなさいよ!!」


フォシュラがそんな落ち着かない様子のコルリルにイライラして怒鳴るが、コルリルはどうしても落ち着けなかった。


「いや、だって、ほら、ねぇ??」


「いや意味わかんないわよ!!」


コルリルの煮え切らない返事にフォシュラがまた怒る。

今コルリル達は依頼の為、傭兵街から離れて徒歩で移動している。

依頼の内容は簡単な魔獣討伐だが、その場所が街から数十キロは離れているので、

達成まで数日以上はかかる依頼だった。

ヒロシはこの時間を使って光にパーティーへ入りたいと思わせるようだった。


(そんなに上手くいくわけないよ!

しかも光君には全部内緒だなんて!)


ヒロシは策については光には言わず、

ボルター達を殺害した事や、

街に帰ったら光は殺人者の仲間と思われている事実も伝えなかった。

あくまで先に仲間になるという約束を取り付けてから事実を話そうとなってはいるが、

コルリルとしては黙っていることが光への裏切りに感じてしまって、どうしても落ち着かなくなるのだった。


(話さないのはやっぱりダメだよねぇ・・・

けど話して光君が怯えて逃げちゃったらダメだし・・・)


コルリルはヒロシの策がここまで進んだ以上は、光は街から離れて自分達と来るべきだと思っていた。

しかしその為に光を騙すのは気が進まなかった。

その葛藤からコルリルはどうしても落ち着かなくなるのだった。


「はぁぁぁぁ、なんでこんな事に・・・」


コルリルがため息をついていると光が話しかけてきた。


「コルリル?大丈夫??なんか元気ないけど?」


「だ、大丈夫大丈夫!ちょっと魔獣討伐に緊張してるだけ!うん、大丈夫!」


「あ、そうか。

けど大丈夫だよ!

ほら、僕はスキルでダメージ受けないからさ、いざとなれば僕を盾にして大丈夫だからね??」


光はコルリルを励ましてくれている、コルリルにはその優しさが心に痛かった。


(ごめんね!光君ごめん!騙してるのにそんな優しくしてくれてごめんなさい!)


コルリルは内心で光に謝りまくった。

すると次はヒロシが話しかけてきた。


「いや〜光君ごめんね?

いつも盾役をしてくれるディロンの調子が悪くなったからって代理の盾役引き受けてくれて。

ひとまず光君は仮とはいえ仲間なんだからラフにゆっくり旅しようね♪」


「あ、はい。ディロンさんには劣りますが頑張ります」


光はまだヒロシには警戒しているようで、距離感のある接し方をしていた。

それは当然で、光からしたらヒロシは何をしたいのかわからない存在だからだ。

それはコルリルも同じで、ヒロシが何をしたくて、何を考えているかコルリルにも全然読めなかった。


「あ、けど今の話で思いついたんだけど、無敵の光君が敵を羽交い締めにして、フォシュラがそのまま爆炎を当てるってやり方はどうかな??

割とありじゃない??」


「絶対無しです!仲間をなんだと思ってるんですか!?」


コルリルはヒロシの非人道的な策を即却下した。


「・・・ははは、まぁ僕は大丈夫ですよ?

前にいたパーティーではそんな役回りばかりでしたし・・・」


光は乾いた笑い声を出しながら切なそうに言う。

コルリルは光がどんなパーティーと冒険してどんな酷い扱いを受けてきたのか想像して切なくなった。


「大丈夫よ!私がいる限り絶対そんな事させないから!

わかりましたね!ヒロシ様!?」


「はいはい♪ちょっと思いついただけだから気にしないで♪」


ヒロシはヘラヘラしたままで、

わかったのかわからない態度のままだった。


「・・・いやそもそも私だって仲間に爆炎なんて撃ちたくないわよ!」


一連の流れにフォシュラが一人ツッコんだ。




そんな風に旅をしながら光は少しずつパーティーと打ち解けていった。

コルリルとはすでにタメ口で話す間柄になっていたし、

フォシュラともかなり親しくなった様子だった。

先日の会話を思い返すとコルリルは内心に笑いが込み上げてくるくらいだった。



『フ、フォシュラ?あの、その』


『何よ!あんたもっとはっきり言いなさいよ』


光とフォシュラはタメ口ではなんとか話せているが、光のモジモジした態度にフォシュラはいつも怒っていた。


『いや、お、お兄さんはだ、大丈夫かと思って。

た、体調悪いってきいたから』


光はディロンの心配をしている様子だった。

実際ディロンの体調はまったく問題ないが、光をパーティーに入れると決まったら黙って部屋に閉じこもってしまったのだ。

フォシュラいわく、

(私に彼氏が出来るとかなるとディロン兄ぃはすぐあぁなるのよ。

しばらくしたら出てくるからほっときましょ)

との事だった。

実際まだ光とフォシュラは付き合うとかまったくなっていないのだが、ディロンの過保護ぶりを知ったコルリルはなんだか可笑しくなるのだった。


『ディロン兄ぃなら大丈夫よ、すぐ良くなるわ。

それより!あんた昨日は訓練しにこなかったじゃない!生意気にサボろうってわけ??』


『ち、違うよ!毎日訓練してもらったらフォシュラに迷惑じゃないかな?って思ってさ・・・』


光はフォシュラから魔術の訓練を受けていた。

光は一応魔術は使えるが、フォシュラやコルリルに比べるとお粗末だったので、

フォシュラが先生役になり、訓練を始めたのだった。


『迷惑とか考えなくていいっての!

私はあんたの先生なんだから黙って訓練しに来るのよ!わかった?!』


『わ、わかった、ちゃんと行くよ』



光とフォシュラはこうして仲良くなっていた。

光はフォシュラに対して想いがあるようだが、今はまだただの友人といった様子だった。

対してフォシュラの方も特に意識することも無く普通に接していた。

コルリルとしては、うっかり光の想いを明かしてしまった手前ホッとしていた。


そして光はヒロシとも割と仲良くしていた。

最初こそ怯えていた様子だったが、

ヒロシは意外と人に信頼される術に長けているのか、また光と打ち解けて話をするまでになっていた。

例えば、


『ねぇねぇ光君、この魔獣素材何かに見覚えないかな??』


ヒロシがそう言って光に見せたのはリザードマンの腕だった。

全体が緑色で所々赤い紋様が入っている。


『えっと?あんまりよくわからないんですが・・・』


光は何のことかわからない様子だった、

するとヒロシは自分の腕とリザードマンの腕をを服の中にしまい、苦悶の表情を見せ、


『ぐぁぁぁ!』


叫ぶと同時にリザードマンの腕を服の中から出した。

すると、


『ぶはっ!』


光が爆笑しだした。

コルリルには何が面白いのかまったくわからなかったが光は非常に楽しそうにしていた。


『ナ、ナ◯ック星人の腕!ははは!』


『いや〜一発芸が受けると気持ち良いなぁ♪』



別の日は、


『ねぇ光君、光君はスキルで空腹では死なないんだよね?』


『あ、はい。餓死する事はないし、渇きや栄養不足にすらならないみたいです』


『なるほど、じゃあ逆に食べ過ぎたらどうなるのかな??

普通は食べ過ぎたら気分が悪くなったり、嘔吐したりするけど、光君はどうかな?』


ヒロシは時折こうして光にスキルについて質問したりして距離を順調に縮めていた。


『ん~~?ちょっとわからないですねぇ。

そんなに食べた事無いし・・・

けど多分嘔吐や気分不良にはならないと思います』


『なるほど!じゃあちょっと試してみたいなぁ♪

どこかこの辺にガラ◯ワニや宝◯の肉ないかなぁ??』


『いやそれト◯コのやつ!異世界だからあるかも知れないけど!』


『それとどうせなら大食い競争相手も欲しいからハンター◯二、みたいなグラサン居ないかなぁ?』


『それは平成の名作喰い◯ん坊の人!

異世界には居てもおかしくない雰囲気だけど!!』


光はヒロシを丁寧に突っ込んでいく。

ヒロシはそれはそれは楽しそうに光と話していた。


『いやぁ♪光君なかなかやるじゃん♪』


『ヒロシさんこそボケが良すぎますよ』


光もヒロシと楽しそうに話しているので、コルリルは2人が何の話しているのかまったくわからなかったが、楽しそうならよし!と思う事にしたのだった。



こうして光はフォシュラやヒロシと着実に仲を深めていった。

コルリルはその事自体は特に非常に嬉しく思っていたが、

やっぱり光に事情を黙ったまま接するのがどうしても落ち着かなかった。


(もう話してもいいんじゃないかなぁ?光君なら仲間になってくれると思うし、もう黙ったままはきついよ〜)


コルリルはまたソワソワしながら思い巡らすが、

ヒロシの一言で我に帰った。


「皆!そろそろ目的地だよ!」


そうこうする内にいつの間にかパーティーは目的地に到着していた。

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