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第二部 五話 【新たな勇者、無敵の勇者】


ヒロシはベルゴールの館から出たあとすぐに用意されたホテルへ向かう事にした。

ホテルまではベルゴールの執事、ベルワンヌと言う男が道案内をしてくれるという。

ベルワンヌは初老のいかにも執事といった風情の男で、

真っ白な髪を完璧に整え、

同じく真っ白な口髭はピンッと天を突くように結わえられていた。


「すみませんヒロシ様、本来なら馬車でお送りする所ですが、

少しこの街並みを感じて頂きたく、徒歩でのご案内になります、ご容赦下さい」


ベルワンヌは出発時に丁寧に謝罪してから管理地区の案内を始めた。

ゆっくり歩きながら、

あれは何という建物か、

あそこにはこんな珍しい物があるとか、

ここには地方で一番の何があるとかないとか、

様々な物をベルワンヌはさも誇らしげに説明していく、

コルリルは熱心に聞いている様子だが、

ヒロシは全く興味がなかったので、表面上はにこやかに対応しながら全部聞き流していた。


(はぁ〜めんどいなぁ。興味ない街の紹介程白けるものはないな。

それよりもあのベルゴールとかいう爺さんの思惑が気になるな)


ヒロシは街紹介よりベルゴールとの会話が頭からは離れなかった。


(あの爺さん僕を熱心に勧誘していたけどその狙いは本当に金だけか?

何か裏がありそうな気がしてならないな。

・・・それにこの奇妙な街だ)


ヒロシは傭兵街に着いてから感じていた違和感について考えを巡らせる。


(傭兵街は商業、傭兵、管理の3つの地区があり上手く回っているように見えるけど、

何かおかしい。


商業地区の商人達は普通に見えた、

けど客の傭兵達はどこか変だった。

何かに追い詰められているような、こう切羽詰まる感じがしていた。


それに対して管理地区の住人はまるで貴族のような振る舞いだ。

自分達が絶対者だと言わんばかりの態度でいる。


傭兵達が集まり出来た街が傭兵街なんだから傭兵が一番幅を効かせているはずなのに、

実際は一番惨めそうなのが傭兵達だった。


・・・なぜだ??

それにまだ何か奇妙さがあるんだけど、なんだろう??)


ヒロシが考えているとベルワンヌが声をかけてきた。


「ヒロシ様には少々退屈でしたかな??」


ヒロシは街紹介に集中していない事を見抜かれたが、慌てず取り繕った。


「あぁすみません、早く傭兵地区で仲間を探したいなぁって考えていました。

せっかく紹介してくださっているのに申し訳なかったです」


ヒロシは頭を下げ謝罪するポーズをしてみせた。

ベルワンヌは特に気分を害した様子もなく、あっさりとしていた。


「いえいえこちらこそ申し訳ありません。

では今日はこの辺に致しまして、明日は朝一番から傭兵地区の方に参りましょう」


ヒロシは今すぐ行きたいくらいだったが、

その気持ちを見透かしたかのようにベルワンヌが先に話しだした、


「この街の傭兵達は昼夜を問わず街の周囲で戦いますが、

実力のある傭兵は朝一番に戦いに行くのです、

ヒロシ様が仲間を探されるなら朝一番の戦いを見て決めたほうがよろしいでしょう」


ヒロシはそう聞いても未練があったが、

実力のある傭兵達の戦いをしっかり見たかったのも事実なので、今日はとりあえず我慢することにした。


「・・・わかりました、ではまた明日朝一番に案内お願いします」


「かしこまりました」


渋々了承したヒロシにベルワンヌはにこやかにお辞儀したあとは、真っすぐホテルまで案内してくれた。



ベルゴールが用意したホテルは都会の一流ホテルに引けを取らない豪華なホテルだった。

さすがに高さは5階建て程の大きさだったが、内装や設備、スタッフの優雅な応対品質まで全て一流だった。


「わぁお。まさかこんな一流ホテルに泊めて頂けるなんて、ベルゴール様には改めてお礼を言わないとですね」


ヒロシはフロントでの手続き中にベルワンヌに話しかけ感謝の意を示したが、


「礼には及びません、勇者様をもてなすのは当然ですから」


と言って常に下手下手にベルワンヌは振る舞い、こちらに恩を感じさせようとしているかのようだった。


(さすがになかなかやるなぁ。

・・・あれ?そういえばこいつら宿じゃなくてホテルって言ってるよな??

魔術による語彙変換にしてもちょっと奇妙だよなぁ??)


ヒロシは異世界人の彼らがホテルという単語を使った事に奇妙さを感じた。

さらに周囲をよくよく見てみたら、


(ホテルのフロントや内装、絨毯やスタッフの制服まで本物の一流ホテルにそっくりだよな?)


ヒロシはだんだんこの街の奇妙さの秘密がわかってきた。


(そうかぁ、街並みが似てるんだ。

高級住宅街や、商業地区の店や、ホテル、

細々した所が似てる、

前世の街にかなり寄せて作られてるんだ)


ヒロシは街並みの奇妙さにようやく気付けた。

今まで見てきたこの世界の建物、

サイマールの建物や、資料でみた建物は異世界独特の造りをしている物が多かった、

例えば一階に玄関がなくて、二階にしか出入口がなかったり、

建物自体が細かいブロックで作られていて、破壊されてもすぐに直せる造りだったりと、

魔術ありきの造りや魔獣対策がしてある建物がたくさんあった。

しかし、この街の建物はヒロシがよく知る建物ばかりで、あまりに違和感がないので、ヒロシも奇妙さに気付くまで何故奇妙に思うのか分からなかった。


「ねえ!ベルワンヌさん、この街並みを作ったのは誰?

この素晴らしいホテルを作ったのは誰かな??」


ヒロシはベルワンヌに尋ねる。

しかし、


「すみません、私がベルゴール様にお仕えした時にはすでに街並みは完成しておりました。

ですから製作者は私にもわかりません」


ヒロシはベルワンヌの答えにがっかりした。

しかし同時にさらなる疑問も出てきた。


「でも建物が古くなったり、新しい住居が必要になったりしたらどうしてるの??」


「建物の改修や新造はこの街の職人衆が請負ていますよ。

ただあまり品のない建物を作られては街の品位が下がるので、

設計はベルゴール様直々にされています」


ヒロシはその言葉を聞いて確信した。


(間違いない、ベルゴールは元勇者だ、

街はベルゴールが作ったに違いない。

細かな改修まで設計しているのは自分の世界を崩したくないからだ。

・・・勇者としたらスキルはなんだ?

物質創造のスキルかな?

あるいはコピー?転送?

それか街を作ったのは人力で、スキルは別にある??)


ヒロシが様々な可能性を模索していると、コルリルが話しかけてきた。


「うわぁヒロシ様!このホテルって所凄いですねぇ!!

こんな所に泊まれるってベルワンヌさん言ってますよ?!」


コルリルの能天気な様子をみてヒロシは力が抜けるのを感じた。




それからヒロシ達はホテルの一室に案内され、今日はここで休むように勧められた。

与えられた部屋も非常に豪華な造りで本当に五つ星ホテルそのものといった風情だった。


「ヒロシ様!この部屋露天風呂が付いてます!!

あ!戸棚にはお酒や食べ物がたくさんありますよ!

ディロンさんへのお土産にしてもいいんですかね??

フォシュラには何が良いかなぁ??

あぁ!この服なんてどうでしょう??白くてふわふわで可愛いですよ!」


ホテルの部屋に大はしゃぎするコルリルを見てヒロシは気持ちが安らぐのを感じた。


(まぁベルゴールの事や街の事を考えすぎても仕方ないね、

コルリルがはしゃいでるのを邪魔するのも悪いしな)


ヒロシは難しい事を考えるのは止めて、今はゆっくり安らぐ時間にすると決め、

コルリルの大はしゃぎに付き合ってしばらくゆっくり過ごした。




その日は夕食もホテルのレストランでごちそうになり、

ヒロシは豪勢な料理に舌鼓を打った。

しかしヒロシはレストランの料理もかなり前世の世界に寄せられていると感じた。


(やっぱ寄せてるよなぁ??街だけじゃなくて料理までとは)


その後は部屋に戻り早々に休む事にした。

ベルワンヌによると傭兵達はかなり早い時間帯に動き出すようなので、

ヒロシ達もかなり早起きする必要があったからだった。


ふかふかのベッドに横たわりヒロシは今日の出来事を反芻しながら眠りにつこうとしたが、


「ヒロシ様?もう休まれますか?」


コルリルが恐る恐る話しかけてきたので思考を中断した。


「ん?まだ寝ないけど何??」


「えっと、明日なんですけど・・・

もし明日仲間が見つかったらすぐに街を出ませんか??」


「ん?どうして??」


ヒロシはコルリルの様子が変なので身体を起こしてちゃんと話を聞く体勢になった。


「あの、私ホテルや料理や街並みは凄く気に入ってて、今日一日とても楽しかったんですけど、

でもどうしてもベルゴールさんだけは信用出来ないんです。

私の考え過ぎかもしれないですけどあの人なんかこう・・・

邪悪な感じがしてちょっと怖いんです。

ここまでもてなしてもらったのに失礼かもしれませんが・・・」


ヒロシはコルリルが理屈じゃなく直感でベルゴールに不信感を抱いている事に少し驚いた。


「コルリルはさすが妖精だね♪

人の心の動きに凄く敏感だ♪

・・・僕もベルゴールには不信感を感じてるよ。

ベルゴールの誘いに乗るつもりは全くないし、

明日仲間を見つけれたらすぐに街から出ようと思ってる。

それにもし明日見つからなかったとしたら、明日はラボに泊まろう?

これ以上ベルゴールに借りを作るのは避けたいしね♪」


ヒロシは最初から宿泊はラボにしようと思っていたが、

ベルゴールの意図を確かめるためにあえて一日はホテルに泊まる事を決めた。

しかし、長期に渡り宿泊するのはリスクが高いので、コルリルに言われる前から明日からは最初からラボに泊まろうと決めていた。


「ヒロシ様もベルゴールさんに不信感があるんですね。

あの人いったい何が狙いなんでしょうか??」


「さぁ?今はまだわかんないな。

けど警戒はしといた方が良いね」


コルリルに問われてもヒロシにも今はベルゴールの狙いは分からなかった。

ヒロシは再びベッドに寝転びながら明日に備えゆっくり思考を巡らし始めた。





翌日。

早々と起きたヒロシ達は準備をしてベルワンヌを待った。

ちなみにコルリルはヒロシと同じ部屋で寝る事に寝る直前で緊張しだし、非常に可愛らしい反応を見せていた。


「フフフ♪コルリル昨日はちゃんと眠れた??」


ヒロシは面白がりながらコルリルに訊ねてみる。

コルリルは眠そうな様子でヒロシをジロッと睨見つけてきた。


「・・・普通ですよ。全然眠れましたから!

ヒロシ様は良いですね!ゆっくり眠れたみたいで!」


「うん♪コルリルが可愛いから気分良く眠れたよ♪ありがとうね??」


「ヒロシ様ウザいです!ふん!!」


コルリルはプンスカしながらそっぽを向いてしまった。

ヒロシはコルリルのそんな様子を見て非常に愛らしく感じた。


(フフフ♪本当にコルリルは可愛いな。

同じ部屋で寝るってだけであんなに緊張しちゃって♪

もしかして妖精の貞操観念ってめっちゃ固いのかな??

今度聞いてみよかな?けどまた怒るだろうなぁ♪♪)


ヒロシがニコニコと思考を巡らしていると部屋をノックしベルワンヌが入ってきた。


「おはようございますヒロシ様。

本日もよろしくお願い致します。

さっそくですが準備はよろしいでしょうか??」


「はい。準備万端ですよ。

コルリルも大丈夫だね?」


「・・・はい大丈夫ですよ」


二人とも準備が整っていると知りベルワンヌはさっそく動き出した。


「よかったです。では予定より早く傭兵達が動き出しそうなので少し急ぎましょうか。

こちらです、付いて来てください」


ベルワンヌはそう言って移動し始めた。

ヒロシ達もあとに続く。


まずホテルからチェックアウトして用意されていた馬車に乗る。

馬車で管理地区を一気に移動し、傭兵地区前で下車する。


「ここから展望フロアに移動します」


ベルワンヌは管理地区のギリギリに建っている建物に向かっていた。

そこは傭兵街でもひときわ高い場所に作られていて、

建物からは傭兵街も、街の前の戦場も全て見渡せそうだった。


建物の上までは風魔術を使用したリフトで移動するようだった。

客は木で出来た大きな籠に乗り、下から風魔術師が一気に上まで上げ、

上に居る別の魔術師が風を操り建物内に引き入れるというやり方だった。


「へえ?魔術を利用してこんな事も出来るんですね。

コルリルにも出来るかな??」


「いや無理ですよ?上に上げるだけなら出来なくもないですが、

見てくださいあの籠、全く揺れてないですよ?

あの魔術師さん達、籠を全く揺らさず乗ってる方の気分を損なわないように細心の注意を払って魔術を使ってます。

あんな繊細な魔術運用は私にはまだ無理ですね」


コルリルはそう言って魔術師達に羨望の眼差しを送っている。

リフト係の魔術師達は皆初老の魔術師で、コルリルからそんな風に見られて照れているような感じだった。


「はい、では次の方どうぞ〜」


そうするうちにヒロシ達の番になったので、三人共籠に乗り込んだ。


「では動きまーす。危ないので籠から頭等は出さないようにしてくださいね〜

・・・妖精のお嬢ちゃんはしっかり掴まってなよ?」


リフト係の魔術師さんに言われコルリルは慌ててヒロシに掴まった。


「はい!お願いします!」


コルリルがヒロシに掴まったのを見て魔術師が風魔術を発動させる。

リフトはゆっくり動き出し、ゆっくりゆっくりと上がっていった。


「うわぁ〜凄い!全然揺れないし、良い感じですねぇ!」


コルリルはリフトに感動し辺りを見渡している。

ヒロシはそんなコルリルの様子を微笑ましく見ていた。


リフトはゆっくり建物の上まで上がり、別の魔術師が風を操りゆっくりと建物内に入っていった。


「はーい、皆様お疲れ様でした。こちらが展望フロアです。

お降りの際は忘れ物にお気おつけください」


上にいた魔術師が展望フロアに出迎えてくれた。

ヒロシ達は籠から降りて展望フロアを見渡した。


「すご〜い!!」


コルリルは感嘆の声を上げ喜んでいた。

展望フロアはほぼ360°全てがガラス張りになっていて、

周囲の景色全てを見渡せるような造りになっていた。

さらに窓際には望遠鏡のような物も設置されていてそれで戦場を細かに見れるようになっていた。


(うわぁ、これってまんまあれじゃん。

スカイ◯リーとか東◯タワーとか、

そんな感じの造りに凄く似てるなぁ)


ヒロシは前世の建物に似た造りをした展望フロアに既視感を覚えたので、

コルリル程は感動しなかった。


「ん?もしやヒロシ様は高い所が苦手でしたかな?」


ベルワンヌがそんなヒロシの様子を見て気にかけてくる。


「いえ?大丈夫ですよ??ただこんな凄い建物どうやって作ったのか気になってしまって」


ヒロシはさりげなく流してその場を取り繕った。



「ヒロシ様!見てください!!この魔具凄いですよ!遠視の魔術が組み込まれててずっと遠くまで見れますよ!」


コルリルは展望フロアに大はしゃぎし望遠鏡で辺りを見渡していた。

ヒロシも望遠鏡を覗いてみたが確かにかなり遠くまで見渡せる優れものだった。


「なるほど、これで戦場を見るんですね??」


「さようでございます。

こちらはベルゴール様が直々に用意された魔具で、こちらから戦場の様子を見てスカウト達は傭兵を直接雇えるようになっています。

おお、ちょうど始まりますよ??」


ベルワンヌに言われヒロシは戦場を見てみる。

街の前の戦場には大小様々な魔獣達が群れを成して集まっていた。

防護壁を攻撃し街に入ろうと蠢いている。

すると防護壁の一部が開き中から傭兵の一団が飛び出していった。


「ふむ、本日の一番槍は赤槍セキソウローワンですね。

あの先頭にいる槍使いがローワンという傭兵です。

あの槍を使い数多の魔獣を屠ってきた凄腕です。

戦士ランクは四段です」


ベルワンヌが戦場の説明をしてくれている。

ローワンという槍使いは真っ赤でド派手な鎧を着た戦士で、

今は槍で巨大な熊魔獣の頭を貫き勝鬨を挙げていた。


「お、次に現れたのは巨人族のダイガンですね。

彼は巨人族の血を引く戦士で見ての通りの体格です。

あの巨体から繰り出される攻撃は天地を揺るがすでしょう。

戦士ランクは三段です」


ダイガンと呼ばれた傭兵は確かに身の丈三メートルはある巨体で、

無骨な棍棒を振り回し猪魔獣を次々と吹き飛ばしていた。


「戦場の右側をご覧ください。

あそこでエルダー兄弟が暴れていますね。

エルダー兄弟は双子の兄弟で、

兄のハイト・エルダーは双剣使い、

弟のフリル・エルダーは魔術師です。

兄のハイトに弟がバフ魔術をかけ続けサポートする戦いが得意ですね。

兄は戦士ランク二段、

弟は魔術師ランクB級です」


ヒロシが見てみると二人組の傭兵が確かに暴れ回っていた。

双剣使いは目にも留まらぬスピードで動き回り、次々と魔獣をバラバラにしている。

魔術師の弟は兄にバフをかけながら要所要所でサポート魔術を使い手助けしていた。


「おお!ヒロシ様見てください!

雷神が現れましたぞ!」


ヒロシが街の正面に目を向けると一人の男が魔獣の群れに一人で向かって行っていた。


「彼こそがこの街で最強の傭兵、

雷神ボルターです。

ボルターは戦士ランク五段の凄まじい使い手で、

雷斧、ライトニングアックスを使い一撃で複数の魔獣も仕留める傑物です」


ボルターは真っ青な鎧を身にまといバカでかい雷斧を高々と掲げ魔獣の群れに突っ込んで行く。

そして魔獣達に斧を振り下ろした瞬間、稲光が炸裂し、凄まじい轟音と共に魔獣達は消し炭になっていた。

ボルターは無傷で勝鬨をあげている。


「どうですかな?ヒロシのお眼鏡に合う方はいましたかな??

まだまだ有望株はいますのでよろしかったら引き続きご紹介致しますが?」


「あ〜ちょっと待ってくださいね??」


ヒロシはベルワンヌに問われ非常に困ってしまった。


(え〜みんな弱くない??

どいつも、こいつもディロンよりはるか格下なんだけど??

それぞれ動きに無駄が多すぎるし、無駄に暴れてるだけって感じだよなぁ??

あのボルターってやつはちょっとはマシだけど、

でも多分ディロンならもっと上手く魔獣を処理出来るし、

あんな無駄に勝鬨あげたり、無駄な大技を使ったりしないよなぁ)


ヒロシはまさかこんなに傭兵の質が悪いとは思わなかった。

ディロンの代わりに盾役をしてもらうのに、彼らでは全く盾になりそうになかったし、

実力もディロンと比べるとどうしても見劣りしてしまった。


「ヒロシ様?ちょっと」


ヒロシが困っているとコルリルがこっそりと呼びかけてくる。


「ヒロシ様?もしかして彼らとディロンさんを比べてませんか??」


コルリルに言われてヒロシは黙って肯定する。


「やっぱり・・・

ヒロシ様、ディロンさんと比べたら可哀想です。

ディロンさんはこの世界でもトップレベルの使い手ですからね?

あんな方はおいそれと見つかりませんし、実力が近い人を見つけるのも難しいでしょう。

だから多少見劣りしても彼らの中から選ぶのがよろしいかと思います」


コルリルに言われヒロシは改めてディロンの凄さを感じた。


「もしかしてディロンって凄いの?」


「凄いどころじゃないですよ。

だから以前ディロンさん達と初めて戦う前に言ったでしょう?

私達じゃ絶対敵わないって?

正直ヒロシ様に合気?がなかったら瞬殺でしたよ?」


そう言われてヒロシはあの戦いを思い返してみたら、

確かにディロンは強かった。

合気がなかったら勝ち目はなかったし、ディロンはずっとヒロシが瞬間移動しないか警戒した動きをみせていた。

多分まともに動けないフォシュラが狙われるのを警戒していたのだろう、だからあの時は実力を出し切れていなかった可能性があった。


「うわぁ、本当にコルリルったらなんでそんな化け物みたいなやつと僕を戦わせるんだろう?もしかして僕の事嫌いなのかな??」


「・・・ここから落としますよ??」



ヒロシ達はその後も戦場を見ていたが、ヒロシがピンとくる傭兵はいなかった。

やはりどうしてもディロンと比べてしまい誰も彼も見劣りしてしまうのだ。


「あ〜ベルワンヌさんこれで主な傭兵はだいたい全部ですか?」


ヒロシが尋ねるとベルワンヌは申し訳なさそうにした。


「さようでございます、申し訳ありません。

ヒロシ様の気に入った傭兵はいなかったのですね?」


「あ!いえいえ!まぁまだ直接話したわけじゃないし、話したら気に入るかもしれないし・・・

あ!そうだ!今見た中で防御力が一番高いのは誰ですか?その人に話をしてみようかなぁ??」


ヒロシはベルワンヌに気を使ってそう提案してみた。

せめて総合力ではディロンに遠く及ばなくても、防御力だけならまだマシな人がいるかもという淡い期待を込めてもいた。


「・・・ヒロシ様は防御力が高い方をお探しなのでしょうか??」


ベルワンヌは何か考えている様子で尋ねてきた。


「はい、パーティーの盾になれるような方が理想ですけど・・・

どなたかそんな方居ますかね??」


「・・・あまりおすすめはできませんが、一人居ます。

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そう言い切れる傭兵がいるには居ます」


ベルワンヌの言葉を聞いてヒロシは興味が出た。


「へぇ?それはどなたですか?今の戦場に居ました??」


「いえ、戦場には居ません。彼は単独で仕事をしていますのでまず戦場には現れないでしょう。

・・・彼の名前はヨシダヒカル、

ヒロシ様と同じく異世界から召喚された勇者様で、スキル【絶対無敵】によりあらゆるダメージを受けない無敵の勇者です」


ヒロシは新たな勇者の登場に胸を高鳴らせた。

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