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第一部 五話 【ゴブリンとアシスタント】


熊魔獣への残虐行為を止めたヒロシは違う部屋へ移動した、コルリルも渋々付いていく。

移動した部屋は熊魔獣がいる部屋より大きく作られており、真っ白な壁と床の殺風景な部屋だった。


部屋の隅には先ほど毒の沼地に生えていた木が数本並べられている。

ヒロシは木を見て目を輝かせて夢中で木を観察していた。


コルリルはそんなヒロシの様子を注意深く観察していたが、部屋にいる無数のゴブリン達も気になった。

ゴブリン達は皆手足が毒に侵されており、おそらく毒の沼から木を運び出した為と思われた。


「あ、あの〜研究中にすみません。先ほどの続きなんですが、ゴブリン達はなぜこれ程ヒロシ様に忠実なんでしょうか??」


コルリルはヒロシに恐怖を感じていたが、どうしても気になったので、ゴブリンについて質問した。

無視されるかと思ったがヒロシは毒沼の木から目を離さず答えだした。


「うーんとゴブリンは僕が最初に研究した魔獣で、色々試す内にゴブリンを従える方法を見つけた感じかなぁ」


()()()()()にはどのような残虐行為が含まれているかコルリルはゾッとしたが、黙って話を聞いた。


「ゴブリン達は身体能力は低いし知能も悪いけど、強い繁殖力と中々の生命力があるのね。

この特徴って実験する生物にピッタリな特徴だから僕はなんとかゴブリンを制御したかったんだ。

色々試したけどやはり暴力によって制御するのが一番簡単確実だったんだ。

けど暴力での支配は簡単だけど隙あらば逃げたり反抗してくるんだよ」


やはりゴブリンにも残虐行為をしていた様子のヒロシにコルリルはさらに嫌悪感を感じるが、ゴブリン達が従順な理由にさらに興味も湧いた。


「暴力で支配出来なかったのならいったいどうやってゴブリン達を制御してるんですか??」


「コルリルはさ、ゴブリン達に角があるの知ってた??」


「角ですか?そう言われたらあったようなないような、あまり気に留めた事はなかったです。」


コルリルは不意の質問に戸惑った。

ゴブリン達の容姿は似たりよったりなので角の有無は認識しづらかったからだ。


「だよね~、ゴブリン達は角のある子とない子がいるんだけど、

角があるゴブリンに限ってだけどその角をへし折ってあげると、へし折った者に絶対服従するようになるんだよね。

これ、多分あんまり知られてないんじゃない??」


「えー?!全然知らなかったし、私達が魔獣を学習する本にもそんな記述は全然なかったですよ?!」


コルリルはかなり驚いた。今までゴブリン達をそのように制御する方法などまったく知られてなかったし、コルリル自身も今まで本や誰からもそんな情報はまったく見たり聞いた覚えがなかった。


「え?じゃ、じゃあゴブリン達は角を折るだけで絶対服従になるんですか?たったそれだけで??」


「うーん、たったそれだけって言うけど中々難しいんだよ〜??

角はゴブリンの急所みたいで、下手に折るとショック死してしまうから慎重に手早く鮮やかに折らないと奴隷ゴブリンは作れないんだから。

僕もちゃんと奴隷に出来るようになるまでに100体以上は失敗したからね」


コルリルはその話を聞いて納得した、

今までそのゴブリン達を従える方法が世に出なかったのは、角を折る難度の高さからだと。


普通は冒険者がゴブリンに出会ったらすぐに倒すか逃げるだろう。

そして倒す過程で角を折る事もあるはずだ、

けどちゃんとゴブリン達を死なさないように折るのは難しいらしいし、

もし死なさず折れたとしても、突然従順になったゴブリンを冒険者達は絶対信用しない。

すぐにそのまま殺すはずだ。

命乞いをして油断をさそうのはゴブリンの常套手段だからだ。

同時にコルリルは何故この森にゴブリンが少ないのか悟った。


「あのーもしかしてこの森にゴブリンがほとんどいない理由って・・」


「あーうん、まぁ僕がほとんど奴隷にしたり研究に使ったり、単純に倒したりしちゃったからかな~?

あ、ちなみに他の魔獣も細々研究してるからこの森自体に魔獣が少なくなって来てるんだよねぇ」


(つまりゴブリンを100体以上と森のほとんどの魔獣を討伐したって事よね、

・・・やっぱりこの勇者ヤバいや)


コルリルがヒロシの研究熱意を半分呆れ半分恐怖している間に、当の本人は毒の木の解体に取り掛かっていた。


「ふんふん、なるほど。大体はマシビの木と同じかな。

じゃあこうかなぁ?」


ヒロシが手をかざすとラボの床や壁から無数の手が伸び、毒の木を掴みそのままバラバラにしていく、ヒロシは注意深く木片になっていく木を見ている。

そして木片の中から慎重に慎重にある一片を見つけ回収する。


それはマシビの木と同じような毒の木の核とも言うべき毒の源だった。


「よしっ!一発回収成功!!かなり良い感じだ!」


ヒロシは核の取り方をマスターすると毒の木を次々と解体していく。

手際よく次々と毒の核を取り出しているヒロシにコルリルはおずおずと話しかける。


「あのーヒロシ様、その毒の核はいかがなされるんでしょうか?」


「これ?もちろん麻痺針と同じように毒針にするんだよ」


予想通りの返答にコルリルはめまいがする。


(マシビの木の核で出来た針であの威力なのに、それの毒針バージョンって猛毒じゃない!そんなの当たったら即死よ?!)


コルリルが毒針に恐怖する間にヒロシは全ての木から核を取り出し終わっていた。


「よし!これで終了。おーい君たち!」


ヒロシに呼ばれたゴブリン達がすぐに集まってくる。


「これを針に加工しといて」


「ギュギャィ」


ゴブリン達は命令された途端核を持って部屋から出ていく。


「じゃあコルリル、さっきの続きを話そうか?」


「・・・はい、よろしくお願いしたいです」


コルリルは何故こんなちょっとアレな勇者を自分は召喚してしまったのか後悔していた。




再び二人はヒロシの部屋へ戻った。

コルリルは話が逸れる前に本題から話し出した。


「あの!ヒ、ヒロシ様にはこれから王宮に来て頂き、サイマール国の国王バラマール様にお会いして頂きたいんです」


コルリルは緊張しながらも一気に言った。

ヒロシは気持ち半分といった様子で興味なさげだった。


「なんでかな??」


「ヒロシ様を召喚したのは私ですが、その準備や費用を出したのはバラマール様なんです。

バラマール様は勇者様に国に仕える騎士となって頂きたがっています」


「いやぁ〜それはちょっと気が進まないなぁ」


ヒロシは今度はどこか楽しげにしながらも王宮へ行く事は露骨に嫌がっていた。

コルリルとしてはヒロシを連れ戻さないと極刑なので必死だった。


「あ、あの嫌がられてもヒロシ様は勇者なので王宮に居たほうがよろしいかと思います。

勇者様は色々と危険に巻き込まれたりしますから」


「うん?勇者なのに危ないの?どうして??」


ヒロシに問われコルリルはちょっと言いにくかったが話した。


「あ〜それはですね・・・

このサイマール国では、あんまり勇者様が気に入られていないと言いますか、特に王都以外では」


だんだんしりすぼみになりながら答えるコルリルをヒロシは楽しげに眺める。


「ははっ!コルリルって小さいのに感情豊かで可愛いね~♪」


「か、からかわないで下さい!本当に王宮の外じゃ勇者様は嫌われ者なんですから気をつけないと!場合によっては命を狙われるかもですよ?!」


「そうなんだ♪それは結構楽しみだね♪」


ヒロシは命の危険を伝えても一向に気にしていなかった。

むしろさらに楽しげにワクワクした様子だった。


「まぁコルリルの言う事もわかるからじゃあひとまず王宮に行こうかな?

ちょっと王様にも興味あるしね♪」


いったいどのあたりでヒロシの心を動かせたのかコルリルはわからなかったがひとまず安堵した。


(良かったぁぁ〜、手ぶらで帰ったらマ・ジ・で・干物にされるところだったぁ〜

けどこの勇者なんで考えを変えたんだろ??)


「ところで、さっきの熊君を助けた代わりにコルリルにお願いを一つ聞いて欲しいんだけど?」


コルリルは考えているとヒロシから唐突に提案されかなり焦った。


(出たよ〜絶対むちゃくちゃ言うつもりだよ~)


「わ、わかりました、私に出来る事なら、な、何なりと」


内心かなり不安だったがコルリルは健気に答える。

ヒロシがコルリルに提案した事は、意外な事だった。


「じゃあコルリルには僕のアシスタントになってほしいんだ♪」

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