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第一部 四十七話〜エピローグ 挿話 【王国の終わり】


ヒロシ達が謁見の間から消えて三日、バラマールはひたすら臣下達を怒鳴りつけていた。


「まだあのバカ共は見つからんのか!貴様らなにをやっとるのじゃ!!」


臣下達は口々に言い訳をするのでバラマールの怒りはさらに高まっていた。


「ええぃ!貴様らも処刑じゃ!誰かおらんのか!あぁぁ!エディさえいればこのようなことにはならずに済んだものを!!」


バラマールは改めてエディを失った事を悔やんでいた。

エディはバラマールの求める理想の勇者だった。

強く、忠義に厚く冷酷。

より強い国を作るためには欠かせない逸材だった。

それなのにエディは死んでしまった。

バカな勇者や魔術師が助けないからだ。

だからバラマールは今も怒りに任せヒロシの捜索をさせている。


「はようせい!はようせい!はようあのバカを引っ捕らえろ!!」


臣下達はいつ自分が処刑されるかびくびくしながらバラマールの叱責を受けていた。

その時、


「陛下!ご報告いたします!!」


謁見の間に兵士が駆け込んできた。

バラマールはヒロシが見つかったのかと腰を浮かせた。


「あのバカが見つかったのか!?」


「隣国ランスロが攻めてきました!凄まじい勢いで王都に迫っています!!

先鋒は聖騎士アルケインです!」


「なんじゃと!?」


バラマールはランスロの侵攻に驚いた。

ランスロはつい数ヶ月前にエディが勇者を殺し追い払ったはず、

そんなすぐに再侵攻するとは予想もしていなかったからだ。


「すぐに王都の守りを固めよ!兵士は全員出陣じゃ!」


「そ、それが兵は大半が国境や検問所に出払っており、ランスロが通る検問所以外の兵を今呼び戻している状況ですぐには出陣出来ません」


「ええぃ!バニラのバカが!余計な指示を残していきおって!!」


バラマールはバニラが処刑前に兵を分散させていた事を気づいていた。

しかし大した事じゃないと放置した結果がこの有様だった。


「加えまして王都の兵も、ヒロシ様捜索のため近郊に出払っており、今王都は完全に無防備です。

陛下、恐れながら避難の準備をされた方がよろしいかと」


兵士の言葉にバラマールは激昂し怒鳴りつけた。


「貴様!わしに逃げろと申すか!!このわしに、サイマール国の国王に逃げろと!?バカにするでないわ!!」


バラマールは怒りに任せ忠実な兵士を切り捨てた。

臣下達は怯えきり、中には姿をくらます者も現れた。


「兵がいないなら街に命を出せ!

全国民でわしを守るのじゃぁ!」




こうしてバラマールは街の人々にランスロの兵士と戦うよう命を出した。

逃げるものは処刑するよう数少ない兵士に指示を出し臨戦態勢を整えていた。


そして一日後、ランスロ国の軍隊が検問所を楽々突破し王都の前に現れた。

聖騎士アルケインは民衆がびくびくしながらなれない手付きで武器を持っているのを見て宣言した。


「王都バラモンの人々よ!サイマール国の兵士よ!我らは血を流す事を求めない!

武器を置き降伏するならば君たちに危害は加えない!

我らが討つのは暴君バラマールただ一人だ!」


アルケインの言葉で民衆達は動揺している。

兵士の中にも揺れた者がいるようだった。


「バラマールを討ってからは君たちの生活を保証しよう!

暫定の統治者を君たちの中から選び今までと何一つ変わらない生活を約束する!

またバラマールが課していた勇者を召喚する為の重税は撤廃すると誓おう!」


アルケインの宣言で完全に民衆達は戦意を失った。

わざわざ命をかけてバラマールの為に戦う者は誰もいなかった。


「兵士達よ!無駄に命を捨てるな!

君たちの使命は王を守る事だけではない!

民衆を守る事だ!

守るべき民衆を戦場に駆り立てる王は王にあらず!

君たちの使命を忘れるな!!」


アルケインの言葉に兵士達も武器を降ろした。

こうしてランスロ国は無血開城でサイマールを陥落させたのだった。



バラマールはその様子を見て王宮に戻り謁見の間で一人叫んでいた。


「なぜじゃ!なぜじゃ!なぜじゃ!何故誰も戦わん?!何故誰も助けん?!

エディ!バニラ!誰か来い!誰かぁぁ!!」


バラマールの叫びを破るようにアルケインが謁見の間に突入してくる。


「ひぃぃ!」


逃げ惑うバラマールを捕まえアルケインが呟く。


「暴君バラマール観念するんだな」



バラマールの処刑はすぐに決まった。

簡易の処刑台が王宮前に作られバラマールは身包みを剥がれ全裸で磔にされた。


「なぜじゃぁ、わしが何をしたぁ、エディ、バニラァ助けてくれ〜」


処刑台には多くの民衆が詰めかけバラマールの最後を笑いながら見物していた。

その様子をみてアルケインは哀れみを込め一人呟いた。


「・・・人は醜いな」


アルケインの呟きを聞いてバラマールは哀れっぽく命乞いをした。


「アルケインよ、助けてくれ、わしが悪かった、お前達の王ナイトルに合わせてくれ、

属国でも植民地でもなろう、だからわしを助けてくれ〜」


バラマールの命乞いをアルケインは無視した。


「そもそもなぜじゃ?なぜお前らはこのタイミングでわしを討ちに来たのじゃ?

エディが死に、兵がバラけたタイミングでなぜ?

もしかしてなにか勘違いがあるんじゃないか??わしらはお前達に危害は加えんぞ??

兵士達は違う勇者を探していたんじゃぞ??

侵攻作戦とかそんなんじゃないんじゃぞ??」


バラマールは必死にアルケインを説得するがアルケインは無視し時刻を確認して宣言した。


「定刻である!これより暴君バラマールの処刑を執り行う!」


アルケインの宣言で民衆が沸き立つ、口々にバラマールに対する恨み言をぶつけている。


「ま、待ってくれ!なんでもする!だから命だけは助けてくれ〜!」


バラマールの最後の命乞いにアルケインはようやく口を開いた。


「騎士の情だ、せめて真実を知り逝け。

協力者がいたのだ、その者がエディの死や兵士達の状況、検問所の場所や様々な情報をもたらしてくれた。

それどころか

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バラマールは衝撃の事実を知り目を見開いた。


「だ、誰じゃ!誰が裏切った!誰がエディを殺したのじゃ!!?」


バラマールの言葉にアルケインがそっと裏切り者の名を呟いた。


「あいつ!!!やはりあいつが・・・!」


ザンッ!


バラマールが何か言う前にアルケインの剣が首を切り落とした。

バラマールの首は広場まで飛び民衆は一目散に逃げた。

力なく落下した首はバラマールの無念と怒りの表情を貼り付けたまま路地裏に転がっていった。


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