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第一部 四話 【異常な研究と異常な勇者】


沼地での戦闘後ヒロシとコルリルはラボに戻っていた。

再びヒロシの部屋で向かい合い座っている二人。

ヒロシは非常にご機嫌でニコニコしているが、

コルリルは疑り深くヒロシを見つめていた。


「さぁ!色々あって中断しちゃったけどお話を再開しようか♪」


「・・・話の前に色々たくさん確認したい事があるんですけどねぇ!」 


コルリルは本題の前に自分の疑問を話そうと決めていた、また無視される前に。


「まずはヒロシ様は何であんなに強いんですか?!あんな魔獣を一撃で倒すなんて異常ですよ?!」


「いやいや、あの熊君は殺してないよ?一時的に麻痺らせただけだから♪」


「ま、麻痺ですか?それは魔術で?それともスキルで?にしてもあの巨体を一撃で麻痺らせるなんて不可能じゃ?」


「ふふふ、良く聞いてくれました!」


そう言ってヒロシは立ち上がり壁に並んだ瓶から一つ選びコルリルの前に差し出す。

差し出された小さな薬瓶の中には何らかの木片が入っていた。


「あのーこれはなんですか??」


差し出された薬瓶をコルリルはまじまじと見るが、中身の木片はただの木片に見え、

コルリルにはこれがなんなのかまったく分からなかった。


「君はこの森に痺れ作用のある木の実を作る木があるのを知っているかい??」


キョトンとしていたコルリルにヒロシが嬉しそうに話しだした。


「あ〜はい、確かマシビの実がなる木がありましたよね、マシビの実は麻痺効果がある木の実で食べたら麻痺状態になるんですよね??」


「マシビって言うのかあの木は?!僕は麻痺の木って呼んでたよ!」


ヒロシは改めて木の名前が知れて嬉しそうだが、コルリルはヒロシが言いたい事をまだ理解出来なかった。


「あのー確かマシビの実の麻痺効果はあんまり強くないし、多分あの熊魔獣には麻痺耐性があったような気がするんですが」


「もちろん!マシビの実自体は大した麻痺効果はないよね。ゴブリンに食べさせても小一時間手足の動きが悪くなるくらいだったし。


・・・でもあの木の実がなる木自体はどうかな??」


ヒロシは興奮し早口になっていった。


「まず君はあの木の実はどうやって麻痺効果を出すのかわかっているかい?

あの木の実の果肉や果汁にも麻痺効果はある、

けど枝や木の幹にはまったく麻痺効果はない。


じゃあどうやってあの木は木の実に麻痺効果をもたらしているのか?!

そもそもなぜ木の実に麻痺効果を出すのか、僕はそれが知りたかった!


だからあのマシビの木をひたすらに調べまくった!

そうしたら見えてきたのはまず麻痺効果の理由だけど、弱い魔獣が麻痺効果がある木の実を食べて麻痺を起こす、すると違う魔獣がその魔獣を食べてしまう。

そしてその死骸に残された種は死骸を養分にして新たな木を作るわけだよ!」


「は、はぁそうなんですね」


「それから種が捕食魔獣の体内に入った場合はおそらく魔獣の糞から養分を吸収し木を作るのだろう、この事からこの木はおそらく魔獣や生き物の血肉や糞にある養分を糧にして育つ木だとわかった!


そして次の疑問だがではどうやって木の実に麻痺効果を出しているのか?!

これにはかなり悩まされたがついに見つけたんだよ!それがこの木片さ!」


そう言ってヒロシは木片を瓶から取り出す。


コルリルは注意深く木片を観察すると魔の力を感じた。


「この木片から魔力を感じます。木片になにかされたんですか??」


「違う!僕は何もしてないよ!この木片自体に力があるんだ!麻痺させる力が!

この力を枝を通して実に与えていたわけだね。

しかも正確に実にだけ麻痺の効果が出るように。

これはおそらく実を採ろうとする過程で魔獣が麻痺しないように、実にだけ麻痺効果があるんだよ!」


コルリルはよく知る植物の新たな一面をしり驚いた、しかも発見したのはこの世界に来てまだ三ヶ月の勇者なのだから驚きもより大きかった。


「ヒロシ様凄いです!たった三ヶ月でこの植物に対してここまで研究されるなんて!」


「ありがとう♪楽しい研究を他者に発表してちゃんと驚いてくれたら嬉しいね~

ゴブリン達はどうにも反応が悪くて・・・」


ヒロシはコルリルが自分の望んだ反応をしてくれて非常に満足気な様子だった。

ゴブリン達では研究の発表には満足出来なかったようだった。


「しかしヒロシ様、その木片を使ってどうやって熊魔獣を麻痺させたんですか??」


コルリルも新たな知識に嬉しくなりさらに質問を重ねる。

ヒロシは喜んで答えだした。


「良い質問だね!この木片は非常に強い麻痺の力を秘めてる。

だから絶対刺さないように慎重に慎重に加工し出来たのがこれさ!」


そう言ってヒロシは3本の木の針を見せる。


「この針はこの木片を加工して作ったんだ♪

効果は見ての通りであんなに巨大な熊君も一撃で麻痺させれるくらい強い針だよ〜

ただ使い捨てなのがちょっと使いづらいんだよね。

一度使うと全ての麻痺の力を一度に使い切っちゃうみたいでね」


「いやいや!それでもすごいですよ!この針があれば戦力アップじゃないですか!

それにマシビの木なんてこの森ならいくらでもあるんですしたくさん作れますよ!」


コルリルは非常に興奮していた。

これ程の麻痺の効果が出せる道具はざらにはなく、あったとしても目が飛び出るくらいの高級魔具くらいだったからだ。


「いやぁそれがマシビの木はこの森にはもうないんだよね~」


ヒロシは少しバツの悪そうにしながら答える。 

コルリルは不思議だった。

ゴブリンの森にはマシビの木はたくさん生えていたはずであり、マシビの木自体稀少価値はなくどの森にも一定数生えていたはずだった。


「ど、どうしてないのですか??たくさん生えていたはずなのに??」


「あ〜この麻痺針を作るためにたくさん研究してねぇ。

ゴブリン達に手当たり次第マシビの木を集めさせたら全部なくなっちゃったみたいなんだよね〜

だから今は作れないんだよね・・・」


コルリルは再び驚愕した、たった三ヶ月でゴブリンの手を使ったとはいえ無数にある木を森からなくしてしまうとは。


「そ、それはすごいですね・・・

あの、というかなぜゴブリンはヒロシ様に忠実にしているのですか??

普通のゴブリンは絶対あんなふうに言う事を聞いたりしないですが」


コルリルは改めてヒロシとゴブリンの関係を尋ねる。実はコルリルは沼地での戦闘後から一番気になっていたのがゴブリンの事だった。


沼地での戦闘後ゴブリン達はひどいダメージだった。

足が折れた者、顔が潰れた者、もちろん死亡した者もいた。

僅か数体のみが自力で立てるくらいのケガで済んだようだった。

コルリルはゴブリン達を不憫に思ったが、ヒロシはまったく気に掛ける様子もなかった。


そして新たにラボからゴブリン達を呼び寄せ沼地の木や熊魔獣の回収を指示していた。

ゴブリン達はヒロシの指示には従うが、重傷の仲間達には見向きもしなかったのだ。


「ゴブリン達はどんなダメージを受けても仲間が死んでもヒロシ様の指示に絶対服従しています。

ゴブリン達を従えるスキルでも会得したのですか??」


コルリルはヒロシの能力を知るため質問した。


「僕のスキルはラボだけだよ。

ラボのスキルはラボ自体に影響はあるけど、僕自身には何もプラスされたりしないしね」


「そ、そうなんですか?じゃあいったいどうやって・・・?」


ヒロシはゴブリン達を従えるスキルは持っていないという。

コルリルはますます困惑した。


「ゴブリン達を従えた方法はね・・・」


コンコン


ヒロシが話そうとした時、誰かがドアをノックする音がした。

ヒロシはまたすぐに応対する。

ノックの主はやはりゴブリンで、何事かを報告しているようだった。


「よし、じゃあ行こうか!」


そう言ってまたヒロシはコルリルを置き去りにして部屋から出ていく。

コルリルは今度はすぐに追いかけた。


「ちょっと!どこに行くんですか??」


「熊魔獣を無事ラボに入れれたみたいだからね!さっそく研究しなくちゃ!」


ヒロシは早足で移動しながらウキウキと答える。

コルリルは一旦質問を保留しヒロシの研究を見る事にした。


(色々聞きたいけどまずは勇者の研究を見たほうが早いかもね)


知識豊富なヒロシの研究に興味が出てきたコルリルは、今は研究の見学をすることにした。


ヒロシ達はラボの大きな一室にたどり着いた。

そこには熊魔獣がうつ伏せに寝かされており、まだ麻痺が聞いてるのか微動だにしなかった。


「ふむふむ、じゃあまずはっと!」


ヒロシが手をかざすとラボの床や壁が動きスライムのように熊魔獣の手足をすっぽり覆って拘束した。

それからヒロシは熊魔獣に近づきまじまじと観察する。


「推定10メートル弱かな、この森で見つけた魔獣の中じゃ一番大きな個体だな。

ふふふ、ではまずは起きてもらおうかな~」


ヒロシは熊魔獣の首に何かを刺す。

途端に熊魔獣は目覚め暴れ出した。

グォーーー!

熊魔獣は叫びながら暴れ出したがラボの拘束はびくともしなかった。


「結構結構♪元気だねぇ〜

では研究を始めようかな♪」


そう言ってヒロシはナイフで熊魔獣の腕の肉をいきなり削いでいく。

熊魔獣は激痛でより激しく暴れ出すがヒロシはまったく気にしていなかった。


「・・・ちょっ!」


魔獣に対し慈悲もなく拷問じみた事をするヒロシにコルリルは止めようとしたが言葉が出てこなかった。


「ふむふむ、身体が大きくても痛みの度合いは変わらないのかな??

恐竜は痛みに鈍感だったって説もあるけど、痛みと大きさはあんまり関係ないのかなぁ?」


ヒロシは1人で喋りながら熊魔獣の腕の肉を切り落とす。

切り落とした肉はゴブリン達が別の部屋へ運んでいく。

肉の切り方も様々な切り方をしていた、

削ぐように、切るように、ねじ切るように、細かく、大きく、切って刺して断っていく、

切るたびに出血し、部屋の床はほとんど血溜まりになっていた。

ヒロシの異常な行動にコルリルは絶句し、血の臭気と異常な光景に吐きそうだった。


片方の腕肉の大部分を切ったヒロシは熊魔獣の様子を観察する。

熊魔獣は大量の出血で弱っていたが、まだヒロシを攻撃しようと力なくもがいていた。


「うーん、まだそんな元気があるのかぁ。

出血の量から考えると普通の生物なら間違いなく死んでるんだけどなぁ〜

もしかして体内で血を大量生産出来るようになっているのかな??」


ヒロシは出血の割にはまだ元気な熊魔獣を注意深く観察していた。

そんなヒロシにコルリルは怯えながらなんとか話しかける。


「あ、あのヒロシ様、いくら魔獣でもそんな風にしたら可哀想では?

倒してからゆっくり研究なさってはどうでしょうか??」


「ん?どのくらいの出血でこのサイズの魔獣は死ぬのか、

痛みに対する耐性は?恐怖は感じるのか?

それらがわかっていた方が今後の研究にも戦闘にも役立つだろう??」


残虐行為をヒロシはあくまで純粋に研究の為といった様子だった。

しかしコルリルは魔獣相手とはいえここまで痛め付けるのは納得出来なかった。


「い、言いたい事は、わかります・・・けど

魔獣にも感情があって、痛みや苦しさも私達と同じように感じてるんですよ??

そりゃ襲ってくる以上は戦って倒すのはわかります。

けど不必要に痛め付けるのは違うんじゃないでしょうか?!」


コルリルはヒロシに必死に訴えた。


「うーん?コルリルはじっくりゆっくり殺すのはダメで、一気に殺すのは良いって考え方かな??

けど魔獣達に感情があるとしたら、一気に殺されるのもゆっくり殺されるのもそこまで大差ないんじゃいかな??

だって死ぬには変わらないんだから」


コルリルの考えを聞いてもヒロシの気持ちは変わらないようで、話しながら次は逆の腕を切ろうとする。


「・・・まぁけどせっかくのアドバイスだし今はきいておこうかな♪

その代わりなんだけど、あとで一つお願いがあるから聞いてね~?」


ヒロシは急に腕を切るのを止め部屋を出ていく。

コルリルはひとまず残虐行為を止めれて安心したが見返りになにを要求されるのか恐怖もあった。


(なんで私が!?てかお願いってなに?!怖いし、やっぱりあいつマジでヤバい!!)


コルリルはヒロシの人間性を疑い先行きが不安で仕方が無かった。


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