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第一部 四十四話 【戦いの終わり】


ヒロシはプレイをラボに無事捕獲出来て安堵していた。


(いや実際やばかったなぁ〜

散々煽ったけどもう爆発ゴブリンは品切れだし、ディロンも回復したけど応急処置に過ぎなさそうだ、

僕自身も・・・

っ!結構やばかったなぁ)


ヒロシは脇腹を庇うように顔をしかめた。

実はプレイの魔呪をゴブリンの壁で防いだ際に、

コルリルを優先して庇ったのでヒロシ自身は少し毒を浴びていたのだった。

応急処置で解毒草を張り付けてはいるがかなり痛み出してきていた。


(早くラボで治療しないと。

とりあえず帰るか!)


ヒロシは一旦帰ると決めコルリルやディロンの様子を観る。


「ディロン大丈夫〜?そろそろ帰るよ??」


「・・・お前にやられた傷が一番深いぞ」


ディロンが恨みがましく睨んでくる。

ヒロシは一応ディロンには最小限の爆発で済ませれるように配慮したのだが、睨まれるのは仕方なかった。


「まぁまぁ、過ぎた事じゃない♪

さぁ早く帰らないとフォシュラも心配でしょ??」


ヒロシはそう言ってラボを開けた。


「そうだ!フォシュラを治療してやらねば!」


ディロンは慌ててラボに戻った。

ヒロシは次にコルリルの方に向かう。


「コルリルは大丈夫?怪我してない??」


「わ、私は大丈夫です。私達勝ったんですよね??なんかあっさり終わったので実感がなくて・・・」


戸惑っている様子のコルリルにヒロシは優しく声をかけた。


「もちろんだよ!

あいつが逃げ場を探しているのはわかってたからね、

だから嘘ついてラボが外に通じてるみたいに思わせたんだ♪

端からみたらラボは瞬間移動スキルに見えるからね。

けどコルリルがディロンを治療してくれたから追い詰めれたんだよ??

本当にありがとう!よく頑張ったね♪」


「・・・いえ、私なにもしてないですよ。

ディロンさんはいつの間にか治癒魔術を覚えてるし、

ヒロシ様はプレイを捕獲しました、

フォシュラだって大活躍でした、

・・・私だけがなにも出来なかっ・・」


泣き出しそうなコルリルをヒロシがそっと懐に抱えた。


「え?!ヒロシ様?!」


「コルリルはよく頑張ったよ。

コルリルが皆を守ってたのは見えてたし、

僕がフォシュラを避難させてる間にたった一人でプレイと戦ってたじゃないか。

僕が戻るって信じて必死に時間を稼いでくれたんでしょ?」


ヒロシは優しくコルリルを抱きしめながら感謝を述べた。


「ヒロシ様の事はずっと信じてました・・・

私には信じるくらいしか出来なかったから」


うなだれたコルリルをヒロシは優しく撫で続ける。


「僕は人に信じてもらえる事が少ないからね、信じてくれてとっても嬉しかったよ。

ありがとうコルリル、本当にお疲れ様」


コルリルにヒロシは優しく優しく語りかける。

コルリルは泣きじゃくりだした。


「い、今、そんな優しく、じ、じないでぐださい!」


戦い終わりの安心感とヒロシに褒められた嬉しさでコルリルは泣き出してしまった。

ヒロシはとりあえずコルリルを落ち着かせようとラボを開いた。

そのままラボに自分も行こうとしたらバニラから呼び止められた。


「ヒロシ様待って!私からも礼を言わせてくれないか」


ヒロシは振り返りバニラ達を見つめる。

バニラはとりあえず治療は完了し、毒は抜けつつあるようだった。

放心状態のバラマールは臣下が担いで王宮へ避難させている。


「ヒロシ様、本当にありがとう。

ヒロシ様がいなかったら私達は終わりだった。

本当にありがとう」


「いえいえ♪全然大した事ないから大丈夫ですよ?

それよりラボから戻ったらまた授業をしてください。

エディが死んだんだしもう僕に授業しても良いはずですよね??」


ヒロシはあっけらかんと授業をねだってみる。

バニラは流石に苦笑していた。


「ははは、まぁ僕も教えてあげたいけどね。

エディ様を殺した件でバラマール様がなんと言うか・・・

とりあえず私の方からヒロシ様の事を罰しないように進言するよ!

それが上手くいったらまた授業をしよう??」


「了解しました。ではそろそろ」


「あ、待って!最後に一つだけ!

プレイが寄越した短剣を貸してくれないかな??」


「ん?これですか?」


ヒロシはプレイの短剣をバニラに差し出す。

短剣自体には今はあまり興味が沸かなかったので特に抵抗はなかった。

それよりも捕獲しているプレイを研究したくて仕方なかった。


「ありがとう。ちょっとこの短剣を私も見てみたくてね。

・・・多分エディ様の魂を解放するのは無理だと思う。

けどこんなアイテムは非常に貴重だからね。

だからちょっとの間だけ貸しといてくれないかな??」


「全然いいですよ♪また次に返してください♪

じゃあバニラ様また今度♪」


ヒロシは今度こそバニラに別れを告げラボに戻った。

ラボではディロンがさっそくフォシュラの治療をしていた。


「フォシュラ大丈夫か!?まだ痛む所はあるか?毒は抜けたか?俺が治してやるぞ?!」


「ディロン兄ぃ治癒魔術を覚えてからめっちゃグイグイくる!!

もう大丈夫だよ!自分でほとんど治したから!!」


フォシュラとディロンの仲睦まじい姿にヒロシも思わず顔を緩めた。



ヒロシはコルリルをゆっくり休める部屋に移し、

フォシュラとディロンはお互いに任せ、

自分は自室に戻りホッと一息ついた。

ヒロシの部屋は最初にコルリルと話した部屋で、ゆっくり一人で考え事をしたい時によく籠もる部屋だった。


(さぁてまずは、イテテ)


ヒロシは自分の傷と毒の治療を開始した。

ヒロシはまだ治癒魔術は使えないままなので、薬草や解毒草、あとは独自の治療法を使ってゆっくり治していく。

治療しながらヒロシはこの一ヶ月の事をゆっくり思い返す事にした。


(やれやれ、ようやく一段落だな。

エディの件も上手く処理出来たし。

あいつさえいなかったらもっとスムーズに事が運んでたのに!)


ヒロシは一ヶ月前コルリルと決闘の準備をしていた時の事を思い出していた。


(最初は魔術の訓練から始まったよなぁ

けどどうしても魔術が上手くいかなくて困ったよ。

だからあの頃から色々準備しだしたんだよなぁ。

まずはゴブリンの調達からだったし、なかなか大変だったなぁ〜)


ヒロシはゴブリン達が残り少なくなっていたので、魔術の訓練と並行して新たなゴブリン達を探していたのだった。

王都周辺の森をゴブリンに探索させ、

すぐに仲間を見つけさせた。

小さな群れをだったのですぐに全ゴブリンを向かわせ制圧させた。


(あの時はまだグリフォンの傷が残ってたからしんどかったなぁ。

けどだんだん回復してきたし、ゴブリン達も増やせれたし出だしは順調だったね♪)


ヒロシは新たな奴隷ゴブリンを作り、

そのゴブリン達にまたゴブリンを探させる。

それを繰り返し繰り返し行い、僅か一週間で数百匹の奴隷ゴブリンを配下にしていた。


(大量の奴隷を獲得出来たのは収穫だけど、

自分の魔術訓練は全くだったなぁ。

だから魔術以外の方法で戦う事を考えたんだ)


二週間前、ヒロシは自分の魔術訓練は決闘までに実を結ばないと判断し、コルリルの元から一旦姿を消して新たな戦い方を模索していた。


(それで色々考えてボンワームに行き着いたんだ。

爆弾ゴブリン、我ながらなかなか悪趣味だけど、でもやっといて良かったぁ〜

それに途中からきな臭くなってきたんだよね)


ヒロシは爆弾ゴブリンを作りつつ、街に偵察ゴブリンを配備し魔族の行方も捜させていた。

すると街の外に魔族達が集まっているのを見つけたのだった。


(数は四、五人だったけどかなりの魔獣を従えてて焦った焦った。

しかもゴブリン達を魔獣のフリさせて紛れ込ませ情報を探ったら、

決闘の日に王都へ総攻撃をかける事がわかって、

率いるのは三魔将の一人、毒魔将プレイ。

かなりの実力者で、あの時の僕では絶対勝てない相手だとわかったからなぁ)


魔族が大軍で襲って来る、しかもあと数日程しかない、かなり絶望的な状況だったが、ヒロシは勝つつもりだった。


(自分とフォシュラやディロンの力を使って勝てる策を考える。

かなり忙しくなったけど楽しかったなぁ)


ヒロシは魔族の襲来を知ってからできる限りの準備をした。

自分はスキルの向上と、爆弾ゴブリンの量産、

フォシュラには魔術で毒の霧を的確に吹き飛ばす練習や、

高威力の魔術を使う連携、

火炎のブロック魔術を習得してもらった。

ディロンには治癒魔術を習得してもらい、

それを使い解毒しながら戦うやり方を練習してもらう。

二人とも魔族の襲来を知ってかなり真剣に取り組んでくれた。


(まあ二人はしょっちゅう魔族の襲来を国に警告すべきだと言ってきたけどね。

けど国が警戒しだしたら魔族も来ないかもしれない、

魔族側は国が警戒していなくて、勇者二人が揃っている決闘のタイミングが襲来するベストのタイミングだと判断したわけだからなぁ)


ヒロシはサイマールにはあえて知らせなかった。

魔族を確実に迎え撃ちたいという思いもあったが、


(なにより()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()♪)


ヒロシは自分の知識欲を優先し、警告は発さなかった。

その結果一般人に被害が出ると知っても知りたいという思いは裏切れなかった。


(まぁ結果的にはプレイを確保出来たんだし結果オーライだよね♪

残りの魔族は()がなんとかするだろうし、

僕はプレイの研究に専念しよっと♪)


ヒロシは回想を終わり、治療も一段落つけた。

ヒロシはさっそくプレイの下へ行く事にした。

プレイはラボの一室に閉じ込めていた。

ヒロシは部屋の外からラボを操作し、壁をマジックミラーに変化させて観察してみる。

プレイは部屋中に毒を撒き散らし、今は劇毒を使ってなんとか壁を溶かそうとしていた。


(ふむ、まだまだ諦めてないかぁ、

中に入りたいけどあんなに毒があったんじゃ入れないなぁ。

拘束しても毒は使えるかもだし・・・)


ヒロシが思案しているとスキルが反応した。

ヒロシはスキルが変化した感覚を感じ、その力を確認した。


(なるほど♪これは便利だねぇ♪)


ヒロシはさっそくラボの新機能を試すことにする。

まずはラボを操作しプレイを壁に拘束する、

そして新機能【魔力無効化】を発動する。

部屋中の魔力が消失し、毒も瞬く間に消えていく。

プレイも魔力がなくなり新たな毒は出せないようだった。


(よしよし♪これはかなり良い感じだ♪)


ヒロシは部屋に入りプレイに姿を見せる。


「貴様ぁ!私を離せ!この人間風情がぁぁ!!騙して捕まえるなんて卑怯者がぁ!」


プレイはいきり立ちヒロシを攻撃しようともがいている。

ヒロシは苦笑しながら話しかけた。


「いやいや、君が勝手に騙されたんでしょう??

そんな卑怯者扱いは心外だなぁ♪

それよりこれからの話をしようよ??」


「人間と話すことなど無いわ!特に貴様のような者とはな!!」


「まぁまぁそう言わずに♪

君と取引がしたいんだ♪

これは君にも、場合によれば魔王にも良い取引になると思うよ??」


「・・・何だと?」


ヒロシの言葉に興味を示すプレイを見て、ヒロシは思った。


(やっぱり魔族ちょろいなぁー)

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