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第一部 四十話 【エディ対プレイ】


プレイと名乗った魔族は自分は三魔将だと言う。

コルリルは今まで魔族に階級があることも、三魔将なんてものも全く知らなかった。

それどころか口を聞く魔族を見るのも初めてだった。


「バニラ様!?あいつの言うことは本当ですか??こちらとちゃんと話す魔族なんて私初めてです!」


「うん、私もだよ。

文献にはいくつか記載があったけと本物は初めてだ。

・・・気になる所だけど今は避難だ。

さぁ陛下、やつはエディ様にお任せして陛下はひとまず安全な場所に・・・」


「馬鹿者!エディを一人で、戦わせる気か!?エディにもしもの事があればどうする!?

お前達もエディと共に戦うのじゃ!!」


バニラの言葉を遮りバラマールはエディの援護を命じる。

コルリルはバニラの意見に賛成だったが、ひとまずバニラの指示を待つことにした。


「フフフ、逃がさないよ」


プレイが両手を大きく広げると紫の霧が発生し周囲を覆い出した。

コルリルはすぐに霧を解析した、解析の結果霧は凄まじい濃度の毒霧だと判明した。


「いけない!皆さん逃げて!!」


コルリルはまだ観客席に残っていた人に声を上げるが、毒霧は瞬く間に観客席を覆い、霧に飲まれた人は一瞬で全身が腐敗し即死した。


「私の霧は触るとちょっと痛いわよ??

一般人が触れたら痛いじゃ済まないけどねぇ」


プレイはさも楽しげに霧を操り範囲を広げていく。

毒霧はすでに貴賓席周囲にも広がっており、退路が防がれた形になった。

貴賓席の中にはコルリルが事前に貼ったバリアのおかげで霧は入っては来ないが、

コルリル達もバリアからは出られなくなった。


「バ、バニラ様!どうしましょう!?」


コルリルは慌ててバニラに指示を乞う。

バニラは冷静な様子で対策を指示した。


「大丈夫だよ、コルリルはこのままバリアを維持して。

今は霧を防げてるけど、毒の濃度が上がったり、追加の魔術でバリアが割れたら最後だからね。

常に集中してバリア維持に努めるんだ」


「はい!あ!エディ様は!?」


コルリルはエディの事を思い出し確認する。

エディは毒霧の真っ只中にいたが無傷だった。


「おや?お前にはどうして毒が効かないのかなぁ?フフフ。

前に戦った時は慌てて逃げていたのにねぇ」


プレイはエディに毒霧が効かなくても楽しげな様子だった。

対するエディは怒りをさらに顕にしていた。


「いつまでもお前の毒をくらう俺じゃないんだよ!

俺のスキルは全てを斬るスキル、お前の毒霧とやらは俺の周りに漂った瞬間斬り捨ててる!

この【斬魔】のエディがお前を斬る!」


コルリルはエディをよくよく観察すると、目にも留まらないスピードで刀を振り近付いてくる霧を片っ端から斬り捨てていた。


「フフフ、そんな調子でどう戦うのかなぁ!」


プレイはさらに毒霧を増やし、エディを包囲した。

さらに手から毒液を出しエディに向かって勢いよく飛ばした。


キンッ!


金切り音が鳴り響いた瞬間、毒液も毒霧も全て寸刻みに両断されていた。

エディがスキルで全て斬ったようだった。


「す、凄い!あんなに凄い剣技が使えるなんて・・・」


コルリルはエディにこれほどの剣技があるとは思っていなかった。

もしこんなエディとヒロシが戦っていたらと思うとゾッとする感覚に陥った。


「ハハハ!さすがはエディじゃ!さぁ!その不埒な魔族をたたっ斬るのじゃ!!」


バラマールは上機嫌でエディに拍車をかける。

エディもそのつもりのようだった。


「お前の技はもう効かん!大人しく斬られるんだな」


刀をプレイに向け勝利宣言をするエディ、

プレイはニヤニヤと笑いながらエディの刀を眺めていた。


「フフフ、確かに強くなったねぇ。

けど私の毒液を刀で斬って良かったのかい??」


「・・・何?」


エディが刀を見ると刀身が脆く錆びついていた。

急速に腐敗していってるようだった。


「な!こ、これは一体!?」


「ハハハ!おバカだねぇ、さっきあんたが斬ったのは強力な酸性の毒液だよ。

触れれば最後どんな武具もその有様さ」


プレイが話している間にもエディの刀は腐敗していき、とうとう真ん中からバキッと折れてしまった。


「あぁ、俺の刀が・・・」


エディはうろたえ、呆然とした表情で折れた刀を眺めていた。

観覧席からその様子を見ていたバニラ達は慌てた。


「エディ様の刀が!陛下!確かエディ様のスキルは刀無しでは・・・」


「そ、そうじゃ、確かエディのスキルは刀か剣、とにかく刃物がないと使えんと言っておった!

バニラよ!すぐにエディを助けるのじゃ!!」


「了解しました!」


バニラはすぐさま魔術を詠唱しだし、エディを援護しようとしたが、


「邪魔はさせないよ」


プレイが腕を一振りすると、毒液の滝がコルリル達の頭上から降り注いだ。

コルリルは必死にバリアを強く保ち、ギリギリで持ちこたえた。


「バ、バニラ様!ここは私がなんとか耐えますから!!だからあいつを倒してください!!」


「妖精如きに耐えれるかしら??」


プレイがさらに毒霧を増させコルリルのバリアを少しずつ溶かし貴賓席の中にじわじわと毒霧が流れ込んできた。


「いかん!」


バニラは攻撃魔術を中断し、コルリルと同じくバリアを展開する。


カンッ!


強い光のバリアがコルリル達をしっかりと覆い、毒霧も毒液も完全に防いだ。


「バニラ様!すみません!!私もう一度強くバリアを張るのでバニラ様は攻撃を!!」


「ゴホゴホッ!バニラよ苦しいぞ!!

はようなんとかせい!!」


バニラは攻撃魔術を唱えようとしていたが、バラマールが僅かに毒霧を吸った様で猛毒状態になっていた。

解毒するよう命令するので、バニラはバリアを張ったままバラマールの治療を開始した。


「バニラよ!エディも苦しそうじゃぞ!!はようエディにも治療せい!!」


コルリルがエディを見ると、毒霧がエディにもじわじわ迫りエディを苦しめていた。

エディは必死に折れた刀を振り回しスキルを発動させようとしていたが、スキルは全く発動していなかった。


「エディが死んだらどうする!はようせい!はようせい!」


バラマールは杖でバニラをバシバシと

叩きエディの解毒を催促する。


「はい、かしこまりました」


バニラはエディにも観覧席から治療を開始する。

しかし離れている事と、バリアを常に展開させている事、さらにバラマールとエディのダブルで解毒を行っているので治療効率がかなり落ちていた。


「ガハッ!ハァハァ!ァ〜!!」


エディは治癒魔術を受けてはいるが解毒しきれずのたうち回り苦悶の声を上げている。

コルリルはとっさに自分もエディの解毒をしようとしたが、コルリルの技量では離れた位置にいるエディの傷は治せても解毒するのは出来なかった。


「そ、それなら!!

バニラ様!私がバラマール様の治療を致します!早くエディ様の治療を完了させて下さい!!」


コルリルはバニラの負担を減らすために言ったのだが、バラマールが拒絶した。


「たわけが!!貴様のような羽虫にわしの治療を任せれるか!!バニラ!貴様がやれぃ!!」


バラマールはバニラに治療を任せるつもりのようだった。

しかし、その判断がより状況を悪くしていた。


(この王バカじゃないの!?そもそもあんたがさっさと避難してればこんな事になってないのよ!!)


「フフフ、さぁさぁどうする人間?

お前達の勇者はこのザマだ、

諦めて全員死ぬがいいさ」


プレイは勝ち誇りさらに毒霧を増やし闘技場全体を覆い出した。

コルリル達のバリアもだんだんと侵食されている。

エディはすでに虫の息だ。



死の予感がコルリルの頭をよぎった。


(い、嫌だ!死にたくない!

こんな、なんで?!

だ、誰か!誰か助けて!!)


コルリルは恐怖でパニックになりかけ絶叫した。


「ヒロシ様ぁぁ!助けてぇぇ!!」


その瞬間。


ドカァァァン!


凄まじい爆炎が闘技場の上で炸裂し、毒霧を全て吹き飛ばした。


「キャャャア!」


コルリルは叫び目を閉じた。

そして目を開けると、


「やぁコルリル♪お待たせ♪

助けに来たよ♪♪」


ヒロシが笑いながらコルリルの前に立っていた。

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