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第一部 三十九話 【魔の襲来】


決闘当日、コルリルは早々と目覚め準備しだした。

決闘は正午スタート、場所は王宮前広場に作られた簡易闘技場、

いよいよ決闘だと感じコルリルは不安と闘志が沸き上がるのを感じた。


(大丈夫!全部上手くいく!勇者を信じよう!)


内心で自分を激励しながらヒロシを探して王宮内を散策する。

昨日の宴会のあとは王宮の客室でそれぞれ休んだのだが、客室はすでにもぬけの殻でヒロシはいなかった。


(あれ〜?どこいったんだろ?ラボかな??)


コルリルはヒロシがいないので仕方なく装備の再点検や闘技場の視察をして朝を過ごした。


日が高くなり正午が近付いてきてもヒロシは現れなかった。

コルリルはだんだん不安になってきていた。


(え?嘘だよね?まさか今日も遅刻とかないよね??)


コルリルはヒロシの遅刻癖が今日も出たのかと心配になったが、コルリルからはラボにはアクセス出来ないのでただ待つしかなかった。

バニラにもヒロシの行方を尋ねたが知らない様子で、決闘には現れるだろうと励ましてくれたが、コルリルは激しく不安だった。


正午まで目前となった。

ヒロシはまだ現れない。

すでに闘技場にはバラマールやバニラ達臣下が入り最前列の貴賓席に待機していた。

国民も招待されていたが、観客席はまばらだった。


(ど、どうしよう!?あの勇者まさか今日もなの!?今日もいつものアレなの!?)


コルリルはパニックになりそうだった。

貴賓席でヒロシが来ないか当たり中見渡すが、全く現れる気配がなかった。

ヒロシが現れないままどんどん決闘の段取りが進んでいく、

正午直前にエディが先に現れ闘技場の中央に待機した。


「おい妖精!あいつはどこだ?まさか逃げたのか??」


コルリルはエディに問われたが何も言えなかった。


「なに!?あの勇者来ておらんのか!?

妖精!どうなっておる?!」


バラマールもコルリルを詰問するがコルリルには答えようがなかった。

黙ってしまったコルリルを見てバラマールは声を大にして話しだした。


「なんという事か!まさか一対一の決闘から逃れるとは!!

あの者には誇りはないのか!?」


「その通りですよ陛下!やつは誇りも何もないただの下郎です。

やつはいずれ陛下に害をなすと私は感じておりました。

陛下の命を破り現れないのがその証拠、

私はやつを即刻打ち首にする事を提案します!」


エディは芝居がかった言い回しでバラマールに進言する。

コルリルは慌ててとりなした。


「まっ、待って下さい!

ヒロシ様は必ず現れます!少し時間に遅れてるかもしれませんが、必ず現れます!

もう少しお待ち下さい!!」


コルリルは必死に訴えるがバラマールは聞く耳持たなかった。


「ええい!黙らんか!エディの言う通りじゃ!

あの勇者はわしの言いつけを破った、つまりは反逆ではないか!

反逆者は即刻打ち首じゃ!貴様もまとめて処刑されたいか!?」


バラマールは怒りコルリルまで処刑しようとした。

バニラや臣下達がバラマールを宥めようと必死になっている。

エディはその様子を見て高笑いした。


「ハハハ!バカな妖精め!貴様もあいつも終わりだ!俺に逆らうからそうなるんだよ!!

ハハハ!ハハハァ!」




「ずいぶん楽しそうじゃないか」


その声は突如空中から聞こえてきた。

次の瞬間闘技場に居たエディの目の前に何者かが飛来した。


ドンッ!!


凄まじい勢いで着地し現れたのはヒロシではなかった。

紫の肌と頭から生える鋭い角、長く赤い髪をはためかせながら周囲を見渡す、

ハッとするような美人でありながら、眼差しは冷たく、黒と朱の眼で周囲を見下していた。

スラッとしたスタイルの良い身体を強調する衣装に身を包んだ女性はゆっくりとした様子で話しだした。


「おやおや、勇者が一人しか居ないじゃないか。

今日は勇者同士の決闘があるんだろう??」


「き、き、貴様ぁぁ!!」


エディは女性を見た瞬間刀を抜き放ち構えていた。

その姿からは激しい怒りと恐怖をコルリルは感じた。


「貴様は誰じゃ!何者か名乗るが良い!」


バラマールは正体不明の人物に下に見られないよう威厳を放ちながら問いかけた。

コルリルはバラマールからも恐怖の感情を感じていたし、自分自身もあの女性からは恐怖を感じていた。


(なに!?なんなのあの人!?見てるだけで怖い!一体何者??)


バニラや他の臣下もわからない様子で口々に女性が何者か話し合っているのが聞こえた。


「フフフ、なんとまぁずいぶんのんびりした国じゃないか。

魔族の幹部が現れたのにそんな様子じゃあねぇ。

フフフ、フフフ」


女性は笑いながら自分は魔族の幹部だと言い放った。

周囲の人々のざわめきが大きくなった。

エディは震えながらも刀を女性に向けたまま叫んだ。


「陛下!こいつの言うことは事実です!!

すぐに増援を寄越して下さい!!

私を召喚した国はこいつに滅ぼされたんだ!!」


「フフフ、そうだね、お前のいた国は今頃魔獣共の巣になってるだろうね。

お前が私から逃げたからだ、探し出すのにずいぶん苦労したよ」


「黙れ!!以前敗れたのはお前の力が分からなかったからだ!

けど今は対策が取れてるんだよ!

あの時の屈辱今こそ晴らしてくれる!!

うぉぉぉ!!!」


エディの叫びにバラマールはすぐ反応し臣下に増援の手配をさせた。

バニラも杖を抜き放ち油断なく女性を睨みつけている。

コルリルは自分と周囲の人に魔力のバリアを張り攻撃に備えた。


「フフフ、増援なんて来やしないよ」


女性がそう言って指を鳴らすと闘技場の外から凄まじい叫びや地鳴りが響いてきた。


「な、何事じゃ!?」


「配下の魔獣をたーくさん連れて来たのさ。

今やこの街中に魔獣が溢れかえっているよ。

つまりあんたを助けには誰も来れないって事だね。フフフ」


女性の言葉を裏付けるように周囲から戦いの音が鳴り響いてきた。

空中にはグリフォンが複数体見え、地上にも無数の魔獣が街に放たれたとコルリルには感じれた。


「フフフ、そういえば自己紹介がまだだったね。

私は魔王様の配下で三魔将の地位を授かりし者。

名をプレイ、毒魔将プレイと言う。

生きていれば以後お見知りおきを、フフフ」

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