第一部 三十七話 【決闘の準備】
ヒロシとエディの決闘が決まってから二週間が経った。
コルリルはヒロシと決闘に向けて様々な準備をしていた。
「ヒロシ様、武具の準備は順調ですか??」
「うん♪それはばっちりだよ♪
コルリルはスクロールの準備は抜かりないかい??」
「それも順調です。まだもう少し書き足したいのであと数日待って下さいね。
じゃあ今日も魔術の修行をしっかり始めましょうか!」
「よし!今日もよろしくね!」
コルリル達は戦闘に使えそうなアイテムや武具を念入りに準備し、
ヒロシの魔術の修行も行い、
エディのスキルを踏まえた策を考えたりと忙しい日々を送っていた。
そして今は、ヒロシが毎日の課題である魔力放出の修行をしていた。
無垢の魔力を体内から出す、ただそれだけの修行だがヒロシはかなり苦戦していた。
「ん!はぁっ!やぁぁ!」
掛け声をあげながら手に魔力を集中されるヒロシだが、無垢の魔力は全く現れなかった。
「ヒロシ様!落ち着いて!焦らずリラックスしてすれば大丈夫ですよ!」
コルリルは色々とアドバイスをしてサポートするがヒロシの魔術は一向に上手くならなかった。
「ねぇコルリル?僕才能ないのかなぁ??」
ヒロシが珍しく落ち込んだ様子で問いかけてくる、
コルリルにはかなりしょぼくれて見えた。
「だ、大丈夫です!ちゃんと練習すれば大丈夫ですよ!
今は焦らずゆっくりやりましょう!」
「けど決闘まであと二週間だよ?僕は未だなんの魔術も使えないしさぁ」
「まだ二週間あります!無垢の魔力さえ出せれば色々な魔術を使えますから!
それに万が一決闘までに魔術が習得出来なくても私がスクロールに魔術を書けばヒロシ様も使えますから!
最悪そのスクロールを使って戦うようにしましょう??」
「はぁ、魔術むずいなぁ」
コルリルはなんとかヒロシを励まして魔術の修行を続けさせていたが、何故かヒロシは一向に上達しなかった。
しかし、新しい武具やアイテムなどは順調に揃えれていた。
ヒロシの防具は王宮の武具庫からバニラが一級品を持ってきてくれた。
白の上着に白のズボン、白の丈長マント、
全て魔古虫と呼ばれる魔術耐性の高い魔獣の糸で編まれた衣服だ、その特性を引き継ぎ高い魔術耐性がある。
武器はヒロシが自分の作った武器を使うと断ったので用意してない。
しかし、コルリルは代わりにスクロールをヒロシに渡していた。
特殊なインクと魔力が籠もった紙に、術者が魔力を出しながら描く事で、スクロールは完成する。
あらかじめスクロールに記載された魔術を使うのでノータイムで魔術を使える利点がある。
他にも様々な薬や魔獣素材アイテム等、用意出来るだけの事はしていた。あとはヒロシが魔術を使えたら勝率はグッと上がるのだが・・・
「あ〜!もう無理!魔術キツイなぁ!」
ヒロシがとうとう音を上げた。
毎日数時間、みっちり修行してもまるで成果がない、さすがのヒロシもキツイようだった。
「・・・お疲れ様です、今日はもう止めときましょうか。
また明日頑張ってみましょう!」
「・・・明日はいいや、ちょっと他にも準備したいこともあるし。
悪いけどちょっと間修行は休むね」
ヒロシはそう言ってコルリルが止める間もなくラボに消えてしまった。
その後ヒロシが帰って来たのは決闘の三日前だった。
その間コルリルは黙って待ったり、
街中あちこち探し回ったり、
街中を探す過程で人々に追いかけ回されたり、
と準備どころではない日々だったのだが、
当のヒロシはいたって上機嫌な様子で帰って来たのだった。
「やぁ♪コルリルただいま♪元気だったかな??」
「元気だった?じゃないですよ!!
どれだけ待たせるんですか?!?
ヒロシ様が居ないから私どれだけ探し回ったか!!」
コルリルは不平不満をヒロシにぶつけた。
しかしヒロシは変わらず上機嫌でコルリルをニコニコしながら撫で回した。
「いやぁ~コルリルは可愛いねぇ♪
心配してくれたんだ??」
「べ、別に心配だったわけじゃないです!
ただヒロシ様、魔術の修行がうまくいかない事を悩んでいたからそれで・・・」
「あぁ♪それならもう大丈夫だよ♪
ちゃんと自主練してものにしたからさ♪」
ヒロシはあっさりと魔術が使えるようになったと話す、コルリルは信じられなかった。
「ほ、本当ですか?!いったいどうやって?というか何の魔術を使えるようになったんですか??」
コルリルはヒロシに質問するがヒロシはヘラヘラとして答えなかった。
「それは内緒だよ♪決闘当日に見せるから楽しみにしててね♪」
ヒロシは魔術については話さないつもりのようだった。
コルリルは何度も尋ねたがはぐらかされ教えてくれなかった。
「心配しないでよ♪ちゃんと勝つからさ♪
さぁ最後の仕上げをしようよコルリル!
しっかり準備してやり残しがないようにしよう♪」
そう言ってヒロシは装備の再点検を始めてしまった、
秘密にされたコルリルは、面白くないと感じながらも一緒に点検を手伝う事にした。
(まぁ、この勇者ならなんとかエディに勝てる策を考えてくれてるのかな??)
コルリルは一抹の不安を感じながらもヒロシと最後の準備をすることにした。




