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第一部 三話 【最低勇者とその力】


コルリルは勇者に招き入れられた部屋を見渡した。

部屋の中央に真っ白な机に真っ白な椅子が置いてありまるで病院の診察室のようだった。

同じく真っ白な棚には森で採れたに違いない植物や木の実が並べてあり、

瓶詰めされた魔獣の身体のような物もあった。


コルリルは恐る恐る部屋の真ん中まで進むと、勇者はしっかりドアを閉めてから机の向こうの椅子に腰掛けた。


「まあまずは座りなよ」


ヒロシがそう言うと床から妖精サイズの椅子が生えてきた。

コルリルはかなり驚きながらも椅子に座って話し始めた。


「勇者様、じゃなくて、ヒ、ヒロシ様、ありがとうございます。かなりスキルを使いこなしていらっしゃるんですね?」


「うん、このスキル?はラボって名付けたのだけど、ラボは使えば使う程色々な事が出来るようになったからね♪

最初なんて小さな空間に明かりのオンオフしか出来なかったんだから。

けど今は色々遊べるようになってかなり楽しいかな♪」


「それは良かったです。あ、改めまして私は召喚士のコルリルです。見ての通りの妖精ですが、精一杯ヒロシ様のサポートを致しますのでこれからよろしくお願いします!」


上機嫌で話すヒロシにコルリルは改めて挨拶する。


「こちらこそよろしくねコルリル。じゃあさっそく聞きたい事がたくさんあるからお話しようか〜??」


「は、はい、では何なりとお聞き下さい!」


コルリルはヒロシからおそらくこの世界の事を色々聞かれるんだろうと身構えた。

頭に浮かぶのは魔族の事、横暴な王達、戦争やこれから待ち受ける戦い等、話づらい話題ばかりだった。


「じゃあまずは君は妖精って言ってたけどメスなのかな??

メスならどうやって受精して子をなすのか教えてくれるかな??」


「・・・・・はい???」


あまりの質問にコルリルは言葉を失う。

少しして頭が質問を受け入れ出しコルリルは真っ赤になって叫びだした。


「ななな、何言ってんですかあんたぁぁ!?

子の作り方なんて最初に聞く事じゃないでしょ!?

それに私は女です!!!」


コルリルは怒りながらもちゃんと質問には答えた。


「女なんだ?メスじゃなくて女?

僕の世界じゃ女って敬称は人間の女性にしか使わなかった・・・

動物のメスに女の子とは言うけど女とは言わない、それは多分人間が動物と子をなせるかなせないかで気持ちの切り替えがあるからかな??

今まで気にした事もなかったけどとても興味深いなぁ」


ヒロシはコルリルを無視し独りつぶやきながら考えだした。

そんなヒロシにコルリルはドン引きした。


(ま・じ・で・なんなのこの人!!初対面からありえないでしょう!?てか私を無視するな!!)


「あの!勇者ヒロシ様!これからの事や王国についてお話したいのですが?!」


コルリルはこちらから世界の説明をしようとする。

しかしヒロシはまったく聞いていなかった。


「うーん?子を作る過程を話しにくいって事は羞恥心があるって感じなのかな??

それにかなり知能は高そうだ。少なくともゴブリンよりはかなり賢い感じだな。

・・・ねぇ?コルリルは排泄はどんな感じでするのかな??」


「答えるわけないでしょ!!!」


コルリルはしばらくの間ヒロシのドセクハラな質問に悩まされた。




「なるほど、つまり君は妖精の女性で人間と同じように感情があり、羞恥心や自尊心もあると。

だから辱めるような問いかけはしないでほしいんだね??」


コルリルは懇切丁寧に自分の事や妖精の事を説明しようやくヒロシに女性扱いしてもらえるようになれた。


しかしその間にコルリルのヒロシに対する評価は底割れしたのだった。


「だから最初に私言いましたよね?私は女性だって。ヒロシ様は私を虫かなにかだと思ってたんですか??」


コルリルは冷ややかに尋ねた。


「うーんまぁ君がどんな生き物なのか、感情があるのかぱっと見じゃわかんないしねぇ、

だから自分の知りたい事から聞いて判断しようと思ったんだ♪」


コルリルにヒロシは全く悪びれる様子もなかった。むしろコルリルにさらに興味が出た様子だった。


「じゃあ君の気持ちを傷付けないように質問をするね〜??まずは・・・」


コンコン


ヒロシが質問しようとすると、ドアをノックする音が聞こえた。


ヒロシは素早くドアまで向かい開けるとゴブリンが立っていた。


「ギャギャイ!ギヮギヮ」


ゴブリンが何事か説明するとヒロシは顔を輝かせ、


「よくやった!!すぐ行こう!」


そう言ってゴブリンとどこかへ走っていく。コルリルの事は放置だった。


「ちょっと!待ってよ!?」


コルリルも慌てて後を追いかける。

ヒロシ達はラボの入口まで戻っていた。コルリルが入ったモヤとは違うモヤが展開されており、ヒロシ達はすぐに外へ出ていった。


(なんなのよ!あの勇者!)


コルリルは不満を感じつつも続いて外へ出た。

外はゴブリンの森の沼地のようだった、沼地からはひどい悪臭が漂っておりコルリルは思わず顔をしかめた。


「ちょっ!なにこれ!?これ普通の沼地じゃないでしょ??!」


コルリルはとりあえず沼地の成分を魔術で解析していく。

その結果沼全体に強力な毒が流れていることがわかった。


「ど、毒沼・・・なんでこんなところに」


コルリルはヒロシを探す為周囲を見渡す。

ヒロシ達はすでに沼地の奥地まで進んだようで、コルリルは理由もわからないまま跡を追う事にした。


コルリルはヒロシ達の跡を追うと沼地の奥地にたどり着いた。

少し開かれた場所に何本か木が生えている。

それ以外はなにもない場所だった。

ヒロシ達は僅かな陸地に立って木を見ていた。

そこには最初のゴブリン以外にもたくさんのゴブリン達が集まっており、数にして50はいた。


(ゴ、ゴブリンの群れ?!まだこんなにいるの!?)


コルリルは驚愕したがヒロシは呑気な様子だった。


「これが例の木かぁ~いやぁ良く見つけてくれたねぇ!こんな沼の奥地まで!本当にご苦労さま!」


「ギンギヮギヮ」


ヒロシは木を見つけたゴブリンを褒めている。

ゴブリンは少し嬉しそうにしているようだ。


(てか今更だけど勇者とゴブリンがなんであんなに仲良いのよ??)


コルリルはヒロシの行動も謎だったが、ヒロシと仲が良く従順なゴブリン達にもかなり疑問を抱いていた。



コルリルはとにかくヒロシと話そうと近づくと、沼地の中から突如大きな熊の魔獣が現れた!


「グォーーー!!」


その魔獣は普通の魔獣より遥かに大きくちょっとした家くらいのサイズはあった。


熊魔獣は大声で威嚇しながら、巨体に似合わない素早さでヒロシ達に襲いかかる。


ヒロシとゴブリンは沼に入らぬように気をつけ回避していた。

コルリルは魔獣の大きさや動きを見て明らかにヒロシや自分より強いと判断した。


「普通の熊魔獣よりかなり大きいし速い!

・・・こんなの絶対勝てないよ!」


コルリルはいち早く敗戦を考えヒロシ達と撤退することに決める。

ヒロシには腹を立てていたが勇者を死なすわけにはいかなかった。


「ヒロシ様!撤退しましょう!?ラボは開けますか?!」


コルリルは必死に叫ぶがヒロシはコルリルを無視し、なにやら近くのゴブリン達に指示を出していた。


(あの勇者こんな時にも私を無視してる!)


憤りを感じたコルリルは一瞬我を忘れヒロシに突撃していきかけた、しかしその前にヒロシが熊魔獣に向かって駆け出した。


「ちょ?!ヒロシ様待って?!無理ですって!!」


熊魔獣は向かってくるヒロシを迎え撃つため向き直るが、周りのゴブリン達が一斉にその巨大な身体へ取り付き出した。

熊魔獣は振り払い、薙ぎ払い、噛みつき、あらゆる方法でゴブリン達を剥がしていく。


ゴブリン達は仲間が無残に死のうが自分が大怪我をしようがおかまいなく取り付く事をやめなかった。


(な、なんなのあのゴブリン達。利己主義なゴブリン達が自分や仲間の損害を無視してあんな事をするなんて・・・)


コルリルが驚いている間に、隙を突いて熊魔獣の足元にたどり着いたヒロシは、魔獣の巨大な脚に何かを突き刺した!


すぐにヒロシは離れ、取り付いていたゴブリン達も距離を取る。


熊魔獣はヒロシに襲いかかろうと2、3歩歩いた途端沼地に倒れ込み動かなくなった。


「ふぅ~成功成功、耐性が高そうだから効くか不安だったけど効いて良かった♪」


「なっ?!何で倒せたのー?!」


コルリルは巨大な魔獣が一撃で戦闘不能になった事に信じられず叫ぶ、


しかしやはりヒロシに無視されるのだった。

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