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第一部 三十五話 【虐殺と決闘】


「よっ!」


ヒロシはラボからコルリルと共に飛び出した。

場所はグリフォンと戦った市場に出たつもりだった。

しかしそこはすでに市場ではなく、大きなクレーターが出来た爆心地だった。


「うっわぁ〜これやばいねぇ〜

こんな爆発の中よく助かったなぁ〜」


さすがのヒロシも爆心地を見て改めて肝を冷やした。


「はい、あのグリフォンの魔力は異常でしたから。

それよりどうやら魔族達はいないようですね??」


コルリルの言う通り魔族はいなかった。

ヒロシは内心ではラボを出た瞬間、大量の魔族達に囲まれる事を想像していたが、

実際は爆心地には誰もいないが、少し離れた場所からは人の賑わう声が聞こえてきていた。


「うん♪どうやら魔族達はまだ侵攻してないみたいだね♪」


「はい、ひとまず安心ですね。

では予定通り王宮に向かいましょう。

まだラボは使えませんよね?歩きで出来るだけ警戒しながら行きましょう」


「了解♪まぁラボも思ったより早く使えるようになりそうだしゆっくり行こうか♪」


ヒロシとコルリルは徒歩で王宮を目指す。

その間コルリルはヒロシに積極的に話しかけてきた。


「ヒロシ様体調は大丈夫ですか?傷は痛みませんか??」


「大丈夫大丈夫!コルリル達の治療のおかげでかなり回復したよ♪」


「それなら良かったです。

あ、そう言えばゴブリン達はどうしてますか??グリフォンとの戦いでかなりやられてましたが」


「あぁ、実はかなりゴブリンの数が減ってきてねぇ。

もう戦闘用ゴブリンは数体しかいないんだ。

残りは諜報用、採集用としてるからねぇ。

またゴブリンのいる森に行って奴隷にしなきゃだ♪」


「またそんな事言って。いい加減魔獣の虐待は止めましょう??」


「あれは虐待じゃなくて調教♪

コルリルもゴブリン達には助けられてるんだし良いじゃない♪」


二人はとりとめのない会話をしながらゆっくり歩き、市場から少し離れた場所まで来たた。

そこはヒロシ達が絡まれた店があった場所だったが。


「ここもかなり被害がありますねぇ」


店はグリフォンの竜巻にやられたのかぐちゃぐちゃに破壊されていた。

周囲の店も似たような有り様だった。


「まぁ爆発以外にも竜巻やらかまいたちやら水攻めで被害が広がったからねぇ♪」


「いやいや、水攻めはヒロシ様でしょ・・

ちなみにあんな大量の水どうやって出したんですか??」


「ん?この間川に行ったじゃない?

そこで川に住む魔獣の調査をして、ついでに場所の記録もしといたんだよ♪

あとはラボを操作して、小さな部屋に川側の入口とグリフォン側に出口を作ると・・・

あら不思議!水攻め策の完成〜って感じかな♪♪」


「・・・その技間違っても室内ではしないで下さいね?」


ラフに話しながらヒロシ達は先に進んだ。

王宮に近付くにつれ人が増えてきた。

どうやら破壊された地区に居た人達が避難してきているようだった。


「ヒロシ様、避難された人達で人混みが出来ていますね。

トラブルになるかもですから避けて行きましょう?」


「えー、もう王宮はすぐそこだしこのまま行こう♪」


そう言ってヒロシは構わず人混みの中を前進していく。

コルリルは渋々といった風情で付いてきた。

王宮に進むにつれ人混みは増していき、到着直前ではピークになっていた。

どうやら王宮の門に一際大きな人混みが出来ているようで、

何やら騒ぎになっていた。


「おい!早く勇者を出せ!!俺達の街を壊した勇者を出せ!」


「王はちゃんと保証してくれんだろうなぁ!」


「あの魔獣はどうなったんだ!?また来たらどうすんだ!」


「それより飯だ!なにか食いもん寄越せ!!」


人々は口々に叫び王宮の門を叩いている。

王宮の衛士は門の内側で素知らぬ顔だ。


「ヒロシ様?あれやばいですよ。

どうしましょうか?」


コルリルが怯えた様子でヒロシに問いかける。

ヒロシは自身の身体とスキルの具合を再度確認した。


「うーん、あんまり無理したくないけど仕方ないか。

また一瞬だけラボを開けるか試すからそれで門の内側に入ろう。

多分それくらいの距離しか今は無理だし」


ヒロシは集中しスキルを使用した。普段よりおぼろげだがなんとか入口を作り出せた。

すぐにヒロシとコルリルは入り、一旦ラボに移動する。

ヒロシはすぐ入口を閉じ、そのまま出口を作り出した。

ヒロシ達が出るとそこは門の内側だった。


「ハァハァハァ、な、なんとか出来たね!

あ〜しんど!もう今日はラボは無理だね。何日か休まないと無理無理!」


「ヒロシ様お疲れ様です。

すみません、無理させてしまって」


息も絶えなヒロシと謝るコルリル、二人が一息つく間もなく、周囲が騒がしくなった。

門の外側の群衆はヒロシを見て一気に怒りだした。


「あ!あいつだ!あいつがあの勇者だぞ!」


「てめぇ!ふざけやがって!こっちこいや!!」


「ぶち殺してやる!出てこい!!」


人々はヒロシに殺気を出しながら門を激しく揺らす。

王宮の衛士達もかなり驚いていた。


「貴様!勇者か?!」


「おい!エディ様を呼んでこい!勇者が出たぞ!陛下にも報告だ!」


衛士達はヒロシ達を包囲しながらエディや王に報告しにいったようだった。

ヒロシ達としては全く意味が分からなかった。


「あ、あの!皆さんなんで私達を敵視するんですか??

私達は大事な報告があって来たんです!話をさせてください!」


コルリルが必死に叫ぶも群衆のざわめきに打ち消されていく。


「うるせぇ!てめぇらが街を破壊したんだろうが!絶対許さねぇぞ!」


「貴様ら!大人しくしていろ!じきにエディ様がいらっしゃる!!」


群衆も衛士も全くコルリルの話を聞かない。

ヒロシは少し苛立ちを覚えた。


「もういいよコルリル、それより早く中に入ろうよ?」


「で、でも!ちゃんと誤解を解かないと!」


二人が戸惑っていると王宮から横柄な声が聞こえてきた。


「ようやく現れたか!この無能な勇者が!」


エディがまるで自分が王のような態度で現れた。

ヒロシを睨み見下し薄ら笑いを浮かべている。

群衆はエディを見て更に怒りを見せた。


「あ、あいつはエディだ!」


「あの野郎!よくもぬけぬけと俺達の前に出てきやがって!」


「二人とも死んじまぇ!」


群衆はヒロシに向ける敵意に負けず劣らずエディを憎んでいる様子だった。


「蛆虫共がうるさいな」


エディは群衆に向け刀を向け振りかざす。

止める間もなくエディが刀を振り抜いた。


「断空刀、飛閃」


エディのスキルにより斬撃が群衆の真っ只中に殺到する。

斬撃はヒロシや門は通過し、群衆の多くを真っ二つに切り捨てた。


「ギャァァァ!」


叫び声を上げ逃げ惑う人達、辺りはパニックになっていた。


「ハハハ!ほらほら!早く逃げろ蛆虫が!」


エディは逃げる群衆に向かって斬撃を連発する。

辺り一帯に血の海が出来ていた。


「な、なんて事を!エディ様止めて下さい!!」


あまりの事態に呆然としていたコルリルがエディを止めようとする。

しかしエディは狂気に取り憑かれたように刀を振るい続けた。


ヒロシは咄嗟にコルリルを庇い床に伏せた。

しばらくするとエディの殺戮は終わっていた。

王宮前には誰もいなくなり、血と死体だけが残されていた。


「ハハハ、ようやく静かになったな、

よし!お前ら来い!王の前でお前らを処分する為に今は生かしておいてやったんだ!ありがたく思え!」


エディは衛士に命じてヒロシ達を拘束させた。

ヒロシは黙って拘束され、コルリルは涙を浮かべていた。


「ひ、ひどすぎる、あ、あんなの駄目だよ、

ヒロシ様、どうしよう」


「コルリル、大丈夫だよ。なるようになるから心配ないさ♪」


ヒロシは全く根拠はなかったがコルリルを安心させる為に嘘をついた。

二人は拘束されそのまま謁見の間に連行される。

そこには以前と同じように中央の椅子にバラマールが以前より遥かに怒った様子で座っており、

後ろには疲れた様子のバニラが控えていた。

エディは意気揚々と王の前まで行きひざまずいて話しだした。


「陛下!勇者ヒロシと、召喚士コルリル、両名をこのエディが捕らえました!」


「うむ!ようやった!ようやった!さすがはエディじゃ!褒めて遣わすぞ!」


バラマールはいたくエディを褒めエディは優越感に浸っているようだった。


「それで!貴様ら今までどこでなにをしておった!!わしの街を破壊した反逆者が!」


バラマールの言葉にコルリルが慌てて弁明する。


「ちょっと待って下さい!私達は破壊なんてしてません!

街を破壊したのはグリフォンです!」


「わかっておるわこの羽虫が!

貴様らがグリフォンと愚かにも街中で戦い、その結果街中が破壊されたのだろうが!?」


「そ、それはそうですが、魔族がグリフォンを呼んだんです!

魔族の破壊工作に私達はハマってしまったんです!

今は魔族の襲来に備えないと!!」


コルリルは魔族の件を必死に伝えるが、誰も聞く耳を持たなかった。


「魔族じゃと!羽虫が!わしを謀る気か!

魔族なんぞここしばらく現れておらんわ!」


「全くです陛下!このエディ、街が破壊された時にその場にいましたが、魔族なんて居ませんでした!

居たのは愚かにも街中で戦闘をし、水まで使い街を破壊する愚か者達だけです!」


「ほ、本当なんです!信じてください!

それにグリフォンとは確かに戦いましたが、安全に倒すため止むなくです!

もう少しで最小限の被害で倒せたんです!

でもエディ様がグリフォンを倒してしまって、それで爆発が・・・」


コルリルの弁解をバラマールは遮った。


「貴様!言うに事欠いてエディに責任をなすりつける気か!

エディからの報告では貴様らはグリフォンを倒すのにグズグズしておったそうじゃな!

だからグリフォンが自爆したのじゃろう!?

その結果街一番の市場が完全に失われたわ!」


「違います!グリフォンを爆発させないように慎重に戦ってたんです!」


「陛下もういいでしょう?こんな奴らの話は聞く価値ありませんよ。

早く処分を決めましょう」


エディが立ち上がりバラマールのそばに移動し、ヒロシ達を見下ろす。

バラマールもエディの言葉に従うようだった。


「そうじゃな。では処分を申し渡す!

貴様らは街を破壊し、人々を傷つけ、わしに弓を引いた大罪人じゃ!

よって貴様らは処刑するのが・・・」


「お待ち下さい!!」


バニラがバラマールの前にひざまずき処分を遮った。


「陛下!なにとぞこの者達に温情を下さい!

彼らも街を守るために必死だっただけなのです」


「えぇい!下がれ下がれ!バニラ!貴様がこいつらに肩入れしておるのはわかっておるわ!

街を破壊したこいつらに温情はない!歯向かうなら貴様も処刑じゃ!!」


「陛下!なにとぞ!なにとぞ!」


バニラはひたすら頭を下げる。

バラマールは怒り心頭で怒鳴り散らし、

エディは優越感に浸り眺めている、

コルリルは自分達だけでなく、バニラまで処刑されるかもしれない事態に怯えきっていた。

そしてヒロシは急に笑いがこみ上げてきて笑い出した。


「クククッ♪異世界にきてもくだらないね♪ハハハ♪」


笑い出したヒロシに全員が注目する。


「貴様!何がおかしい!」


バラマールが怒り、問い詰めるがヒロシのニヤニヤ笑いは止まらなかった。


「陛下♪一つ遊びをしませんか??

陛下が大変気に入っておられるそこのボンクラと、この私、どちらが強いのか決める戦いをしませんか??」


突然の申し入れにバラマールは戸惑った。


「何?貴様がエディと?なぜじゃ?!」


「いえ、そこのボンクラは大した強さもないくせに威張り散らすバカですから。

実は一度手合わせしてるんですよ♪

その時は私の圧勝でしたね♪」


「何?!それは真か?!」


エディはバラマールに問われ、怒りに任せヒロシを怒鳴りつけた。


「う、嘘だ!この俺が貴様なんかに負けるわけないだろが!!」


「いやいや、陛下も覚えがあるでしょう?このボンクラの顔に傷があった時期があるはずですよ??」


「そ、そういえばいつぞやにエディの顔に傷があった気が。

確かエディは訓練でついたと言っておったが・・・」


「嘘だ嘘だ!貴様!これ以上でまかせを言う気ならこの場でたたっ斬ってやる!」


エディが刀を抜きヒロシに迫る。

その間にバニラが立ちはだかった。


「どけ!お前も斬られたいか!?」


「陛下!私からも一つご提案があります!

以前進言させていただいた、ヒロシ様とエディ様、どちらがよりサイマールに有益か図るチャンスを下さい!!」


バニラは目の前のエディを無視してバラマールに話しかける。

エディもさすがにこの状況では刀を振るえないようだった。


「ヒロシ様の言う通りエディ様とヒロシ様の一騎打ちをさせるのはいかがでしょう?!

ヒロシ様の言う事が正しいか、エディ様が正しいか、それではっきりわかるはずです!」


「ふむ、一騎打ちとは面白いのぉ。

よかろう!では一騎打ちを申しつける!」


バラマールはあっさりとバニラの要求を飲んだ。

エディは慌ててバラマールに抗弁しだした。


「陛下?!今更私の実力を疑いですか?!私が負けるわけないじゃないですか?!」


「ならよいではないか?一騎打ちで改めて打ち倒せば良かろう?わしもお前が負けるとは思っておらんわ、これはただの余興じゃ」


「しかし!」


「もうよいもうよい!さぁ細かい話はバニラとせぇ」


そう言って退室を命じるバラマール。

エディは屈辱に顔を歪ませながら退室する。

退室間際、ヒロシ達のそばを通る際にボソッと捨て台詞を吐いた。


「・・・命拾いしたと思うなよ、一騎打ちの場で八つ裂きにしてやる。」


「・・・それは楽しみだね♪」


ヒロシとエディはお互いに憎しみ合いながら言葉を交わした。

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