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第一部 三十三話 【爆発と決着】


キィー!

グリフォンが鳴きながら一気にコルリル達に詰め寄る。

ヒロシがラボを開きコルリルと共に一旦逃れる。

コルリルはラボ内に避難しヒロシに向き直った。


「それで?何か策があるんですね??

ヒロシ様の事ですから何か考えてるんでしょ??」


「おやおや!よくわかったね♪

じゃあまずは今回の戦闘の条件を確認しようか??」


お互いに話し合いの間合いはわかるので、スムーズに話が始まった。


「わかりました。

まず今回は捕獲ではなく討伐が目的、それはよろしいでしょうか?」


「うん、惜しいけど仕方ないね。

まぁあのレベルの研究素材なら死体でも充分楽しめそうだしね♪」


ヒロシはとりあえず今回は捕獲は諦めてくれた。

前回の強敵、バーン兄妹の時は頑なに捕獲にこだわっていたのでコルリルは安堵した。


「あ、それと今回はフォシュラさんとディロンさんは戦闘には参加させないでください」


コルリルからの提案にヒロシは首を傾げた。


「ん?どうしてだい??」


「それはあのグリフォンが強力な風の魔術を纏っているからです。

もしあの風の鎧にフォシュラさんの火炎魔術なんて放ったら、炎が風に巻き上げられて周囲に散らばり大惨事になります。

ディロンさんの大斧や鎧の炎も同じ理由で駄目です。

となるとお二人は待機してたほうが良いでしょう??」


「なるほど、でもディロンなら素手でも勝てそうな気もするけど・・・」


「いくらディロンさんでも素手では無理ですよ。

そもそも近接戦になれば必ず竜巻の手痛い反撃が待ってます。

あのグリフォンを倒すためには火炎属性以外の魔術による遠距離攻撃しかありません。」


「そういう事なら了解♪コルリルの判断に従うよ♪」


コルリルの冷静な判断にヒロシも納得したようだった。


「よし!じゃあ決まりだね♪僕が気を引くからコルリルが魔術で倒す!これでいこう!」


「はい!しかしあの風の鎧を破るには魔術を溜めないといけません。

充分な威力を出すために1分程お時間を下さい」


コルリルはグリフォンの鎧を破るために岩魔術を使うつもりだった。

充分な威力を出す為に普段の数倍は魔力を込めるのでどうしても時間はかかってしまうのだった。


「1分かぁ、かなり長いけどなんとか頑張るよ♪

それじゃいこう!そろそろグリフォンがしびれを切らすだろ♪」


二人は簡単に策を決め、ラボから出る。

グリフォンは空中を旋回しながらヒロシを探している様子だった。


「よし、まだいるね。

じゃあ今から僕が気を引くからコルリルは魔術をよろしく!」


「はい。攻撃する場所やタイミングはどうしますか??」


「うーん、相手の動き次第だけど、さっきの市場にしようか??

タイミングや何か変更があるときは大声で伝えるよ。

相手は魔獣なんだしこっちの言葉はわかんないでしょ??」


「なるほど、了解しました!」


「じゃあ行くよ!プレイボール!!」


「何ですかその掛け声は・・・」


ヒロシはラボに消えすぐにグリフォンの近くに現れた。

空中でグリフォン目掛けて麻痺粉を投げている。

しかし全て風の鎧に阻まれ麻痺には至らなかった。


「ヒロシ様、頑張ってください・・・

さぁ私も準備だ!」


コルリルはヒロシが気を引いている間に市場まで移動した。

建物の上に陣取りゆっくりと焦らずに魔術を詠唱していく。


「敵を撃て地の精よ!その偉大な力を僅かばかり貸し給え!アースボール!」


コルリルが詠唱すると小さな石が現れゆっくりとコルリルを中心に回転しだした。

コルリルは通常の基礎魔術からさらに追加詠唱を行う。


「鳴動する大地、揺れる泰山、あらゆる悪しき物を打ち砕く力を顕現させよ!

アースクレイド!」


第二詠唱によりコルリルの周りを回っていた石が頭上に移動し、激しく回転しだした。

コルリルは巧みに魔力を操り回転をより鋭く、より速く整えていく。


(よし!上出来上出来!さぁ勇者は上手くやってるかしら??)


コルリルは魔術に集中しながらヒロシの様子を伺う。

ヒロシはグリフォンの近くをラボの連続移動で現れたり消えたりしていた。

グリフォンはなかなか捕まらないヒロシにかなり怒りをためているようだった。


キィーキィー!!


怒りに任せてかまいたちを全方位に放つグリフォンだが、ヒロシはラボに避難しかすりもしなかった。


(さすが!あの勇者やるぅ!私も負けてらんないな!)


コルリルはより魔術を洗練させていく、

すると集中したコルリルの感覚がグリフォンの魔力の乱れを感知した。


(え?あのグリフォンもしかして?!)


コルリルは慌ててグリフォンに意識を向けた。

より集中してグリフォンの魔力を感知してみると、体内に莫大な風魔力を溜め込んでいる事がわかった。


(な、な、なによこれ!?こんなの自然にはありえないし、まさかこれが魔族の策!?)


コルリルは大量の風魔力を溜め込んでいるグリフォンをこのまま仕留めた場合を考えた、

このままだとグリフォンの魔力が暴発し、周囲に風魔力による甚大な被害が出ると容易に想像出来た。


「ヒロシ様!緊急事態です!」


コルリルは大声を出して呼びかけ

とりあえず簡単に事態の不味さを伝えた。


「なるほど!コルリルなんとかならないかなぁ?!って危な!!」


ヒロシは器用にグリフォンの攻撃を避けながら、コルリルは高威力アースボールを維持しながら相談する。

コルリルは悩んだが一つ策を提示した。


「ヒロシ様!なんとかグリフォンを下に下ろせますか?!

地面に降ろして下されば、なんとかグリフォンの頭だけを狙ってみます!!」


「頭を狙う?それって何か意味があるの?!」


「頭を撃ち抜けばすぐには魔力は暴発しないはずです、少しの間が出来ますからその瞬間にラボを使いましょう!」


「なるほど!了解!けどコルリル?ちゃんと狙えるの?」


「わかりませんがやってみます!」


コルリルはより難度が高くなった攻撃を成功させる為、アースボールの形を変えていく。

大きさをさらに削り、より鋭角に、より速く、より正確に撃ち抜けるよう変える。

アースボールはだんだん球体から弾丸のような形になり、さらに研ぎ澄ませ一本の小さな槍となった。


「よし!これならいける!ヒロシ様!こちらはいつでも大丈夫です!」


コルリルの合図にヒロシは素早く反応した。

ラボを巧みに操作し、複数の入口をグリフォンの周囲に展開させた。

さらにその入口からゴブリンが現れグリフォンの気を引く。

もちろんゴブリンは地面に落下する前にグリフォンの竜巻でずたずたにされていった。

しかし、その隙にヒロシはグリフォンの頭上に移動していた。

そして頭上にひときわ大きな入口を作り、中から大量の水を出現させた!


キィー?!?!


グリフォンは突如出現した大量の水に動揺し、まともに水流を受けた。

水自体は風の鎧が防いだが、膨大な水流がグリフォンから浮力を奪い、水の流れのまま地面に叩きつけられた。


バシャーン!!


市場は全て水浸しになり、グリフォンはその中央で何が起きたか分からない様子だった。

しかしゆっくりと起き上がり再び飛ぼうと準備を整えている。


「ヒロシ様ありがとう!」


コルリルはその隙を逃さなかった。

溜めに溜め、形を変えたアースボールの狙いを定め、一気に解き放った!


「地の精よ敵を撃て!」


コルリルの詠唱と共にアースボールが一気に飛び出していく。

狙いはグリフォンの頭部、グリフォンはまだ気付いておらずそのまま撃ち抜けるかと思われたが、

グリフォンが再び飛び立つ為に脚に力を入れた瞬間、濡れた地面で脚を滑らせた。

身体がぐらつき頭部が動く、その瞬間コルリルの魔術が頭部の横をすり抜けていった。


バーン!

ギャァァァ!


コルリルの魔術は頭部を外しはしたが、大きく広げていたグリフォンの羽の一部を撃ち抜いた。

グリフォンはまだ生きてはいたがほとんど片翼となり再び飛翔は出来ない様子だった。


「ヒロシ様!すみません!外しました!」


一撃で決めきれなかったコルリルはヒロシに謝った。


「大丈夫だよ!また僕があいつの動きを止めるから!

だからもう一度お願い!」


ヒロシは再びラボを複数展開しグリフォンの周りを囲むようにした。

グリフォンは入口が邪魔で動きが制限されていた。


「よし!更に追加!」


ヒロシはラボより捕獲していた魔獣を次々と解き放つ、魔獣達は目の前のグリフォンに襲いかかるが、グリフォンは竜巻を発生させ魔獣達を八つ裂きにしていく、

しかし数が多いのでその処理に集中して動きは更に制限されていた。


「長くは持たないよ!コルリルあとは任せた!!」


「はい!!」


ヒロシの必死の策を活かすためコルリルは再び高威力アースボールの作成に取り掛かった。

極限まで高めた集中力が先程より早く魔術が完成するように導いてくれた。


(よしよし!あともうちょっとで完成するわ!次こそは必ず当てる!)


コルリルが勝利を確信したその時、戦場に場違いな気取った声が響いた。


「何を泥臭く戦っているんだ??

お前等はすっこんでろ!俺が全部切ってやる!!」


市場に現れたのはエディだった、すでに刀を振りかぶりグリフォンとヒロシに狙いを定めていた。


「死ね!ヒロシ!!」


「待って!!!」


コルリルの静止も虚しくエディはグリフォンとヒロシにスキル、【断空刀】を振るう、

全てを両断する刃はグリフォンを真っ二つに切り裂く、

その瞬間莫大な風魔力が一気に発散し、大爆破を起こした。

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