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第一部 三十二話 【竜巻と街中の戦闘】


今日はコルリルにとって驚きの連続だった。

朝、いきなりヒロシにデートに誘われ、

まさかあの勇者が私に気があるなんて!と勘違いして驚き、

同時に自分のダサさに気付かされ、

案外楽しく過ごせたデートにまた驚き、

謂れのない迫害を受け、

最後にはグリフォンが襲来だ。


(今日は一体なんなのよっーー!!)


一度は頭が真っ白になったコルリルだが、すぐに驚いている場合じゃないと我に返り、

ヒロシのガードに回る。


「ヒロシ様!あれはグリフォンです!非常に強力な風の魔獣です!

私達が今まで戦ってきた魔獣の中では間違いなく最強です!!」


「へぇ♪まさにファンタジー!って感じだねぇ!これは是非研究材料に加えたいなぁ」


グリフォンを見ても全く動じてないヒロシにコルリルは苛立った。


「ヒロシ様!あれは研究材料にするのは無理です!

早く逃げましょう!?王宮に戻ってバニラ様や城の兵士さん達と協力しないと絶対勝てません!!」


コルリルは撤退を進言するが、ヒロシは相変わらずコルリルを無視してグリフォンを捕まえる策を練っているようだった。


「ヒロシ様?!聞いてますか?!」


その時、グリフォンが自然魔力を貯めだしたのをコルリルは感知した。

凄まじい魔力がグリフォンに集中してゆく。


「や、やば、やばいです!あのグリフォンブレスを吐く気です!!」


コルリルは逃げる事を考えたが、自分達の周りにはまだ市民達がたくさん居た。彼らを見捨てるわけにはいかないので、コルリルはダメ元でバリアの準備をした。


「私がバリアを作ります!皆様私の近くに来て・・・」


コルリルがバリアを作ろうとした時、周囲から複数の影が飛び出した。

影たちは一斉にグリフォンに向かっていった。


「え?!何?!」


コルリルが驚いている間に影たちはグリフォンを空中で取り囲み、剣やハンマー、槍や魔術で攻撃しだした。


「わぁお♪エディの部下達もやるねぇ♪」


ヒロシが訳知り顔で空中の戦闘を眺めていた。


「ヒロシ様!?エディ様の部下って?彼らの事ご存知なんですか??」


驚いて尋ねるコルリルにヒロシは飄々と答えてくる。


「いや?全然知らないよ??

まぁもう言っちゃうけど、彼らは今日ずっと僕達を監視してたんだよ♪

殺気も感じれたから多分街中で暗殺するのを狙ってたんだね♪

ちなみに、さっき僕達を勇者だとバラして騒動を引き起こしたのも彼らだ」


衝撃の事実を明かされコルリルは空いた口が塞がらなかった。


「暗殺?!監視してた?!私全然気付きませんでしたよ!?なんで言ってくれないんですか?!」


「・・・内緒♪」


ヒロシのふざけた態度に怒りを感じたコルリルだが、それよりも空中の戦闘が気になった。

エディの部下達はグリフォンにブレスを撃たせないように注意を引きつつ、空中と地面を行ったり来たりしながら攻撃し、じわじわとダメージを稼いでいる状態だった。


「それにしてもこんな、街にグリフォンなんてありえませんよ??

一体なんで・・・」


「そんなに街中にグリフォンが出るのは珍しいの??」


ヒロシはグリフォンを凝視しながらコルリルに尋ねてくる。


「はい、珍しいというかあり得ないです。

グリフォンは本来山の上に巣を作り、代々そこで子をなし、育てていく習性があります。

自分の縄張りからは滅多に出ないですし、この辺りにはグリフォンの縄張りは一つもありません。

だからなんで街中に現れたのか、全くわからなくて・・・」


「あぁ、それは多分あの魔族の呼び声に応えたんだろうね。

本で読んだけど魔族は魔獣を操れるんでしょ??だからグリフォンを操って連れてきたんじゃない??」


ヒロシはあっさりと話しているが、

コルリルには到底聞き逃がせない言葉があった。


「・・・ヒロシ様?今魔族っておっしゃりました??この街に魔族がいるんですか??」


「あぁ、魔族も居たよ?三人で街と僕らを監視してたね。

エディの部下よりすごい殺気だったなぁ。

あ、あとよくわからない騎士っぽい人達も僕らを監視してたからね♪」


「・・・言ってよ!!!!」


コルリルは思わず怒鳴ってしまった。

自分の知らない間に暗殺者と、魔族と謎の騎士に自分達のデートが監視されているなんて!コルリルは衝撃を通り越して笑いが出そうだった。

しかしヒロシはグリフォンを夢中で観察していて、コルリルに怒鳴られた事も気にしていないようだった。


「まぁまぁコルリル怒らないでよ♪

それより見て?空中がやばい事になってるよ?」


ヒロシに言われコルリルは空中へ目を向けた。

そこには先程までの戦いは無く、決着がついていた。

エディの部下達は四肢を無惨にもがれ、バラバラになり周囲に散らばっていた。

対するグリフォンはくちばしに穴が空いているだけで、胴体や羽は無傷だった。


「え〜!い、いつの間に決着が?!さっきまでエディ様の部下さん達が優勢に見えたのに!!」


「優勢だったよ?実際あの硬そうなくちばしに穴開けるまで頑張ってたからね。

けどそれが良くなかったのかな?くちばしが傷付いた途端グリフォンが全身から小さな竜巻を出してね?

彼らは竜巻に当たった瞬間ミンチにされたってわけ♪

いや〜♪あれも魔術に入るのかな??それかグリフォンの固有スキル??めっちゃ気になるなぁ♪♪」


コルリルはヒロシの態度に嫌悪感を抱いた。

いくら自分達を狙っていた相手だとはいえ、

魔獣に真っ先に向かっていった勇気ある人

達の死に、ヒロシは憐憫の欠片も見せなかったからだ。


「・・・今は早く逃げましょう。さぁヒロシ様、王宮へラボを開いてください」


グリフォンは今は蹴散らしたエディの部下達の屍肉を貪っている。

しかし、あのグリフォンが魔族の手下ならまたすぐにヒロシを狙い出すに違いなかった。

だから一刻も早く逃げるのが良いのだが・・・


「おい!お前ら何してんだ!?」


先程の店長がヒロシとコルリルに怒声を浴びせかけてきた。


「お前ら勇者なんだろ?!だったら早くあのデカブツをなんとかしろよ!!」


店長はグリフォンの討伐をするように声を上げた。

それに呼応するように周りの逃げ遅れた人達も口々に怒声をあげる。


「早くしろよ!勇者だろ!」


「やっぱり勇者なんて見せかけか?!」


「商売にならないだろ!さっさと倒せよ!」


周囲からの心ない言葉にコルリルは悲しくなった。

いくら勇者パーティだからと言ってここまで言われなきゃいけないのかと悔しかった。


「はいはい♪じゃあ僕らがあの鳥をなんとかしますかね♪

コルリル行くよ♪」


ヒロシは怒声に全く気にすることも無く、死んだエディの部下達が持っていた武器を拾い集めに動いていた。

コルリルも慌てて付いていく。


「ヒ、ヒロシ様?まさかほんとに戦うんですか??正直今の私達じゃ無理だと思いますよ??」


「そうかな?案外いけるんじゃない??」


楽観的なヒロシにコルリル大声をあげる。


「絶対無理です!いいですか?グリフォンは絶えず空中から仕掛けてきます。

あのくちばしじゃブレスは吐けないでしょうが、かまいたちや竜巻で攻撃したり、

あの鋭い鉤爪で引き裂く事も出来ます。

空中のグリフォンは極めて素早く動けます。

私達が何か仕掛けても難なく躱すでしょう。

もし万が一当てれたとしても、グリフォンの身体をよく見てください」


ヒロシはグリフォンの身体をじっくり見始めた。


「あ、もしかしてあのグリフォン何か纏ってる??」


ヒロシはよく観察してグリフォンの身体に風が纏わりついている事がわかったようだった。


「はい、グリフォンは強い風の自然魔力を自分の魔力と混ぜた風の鎧にして纏わせているんです。

私やヒロシ様の攻撃なんか全て弾かれます。

これでもまだやりますか??」


「やる!」


ヒロシは目を輝かせ全く諦めなかった。

コルリルは頭が痛くなってきた。


「・・・どうやってグリフォンを倒す気ですか??」


「うーん、まだわからないね♪

だからまずは様子観察からだね!」


ヒロシはそう言ってグリフォンに向かって飛び出しって行った。

グリフォンはすぐにヒロシに気付き迎撃しようとする。


「危ない!!」


コルリルは叫んでヒロシに危険を知らせる。

しかしヒロシはすでにラボに避難していた。


ズサァァ!


一瞬遅れてヒロシがいた場所にかまいたちが無数に殺到する。

グリフォンはヒロシを見失い戸惑っている様子だ。


「な、なんて早業。ラボの展開スピードさらに上がってますね」


ヒロシがよりスキルを使いこなしている様子でコルリルは少し安心したが、

まだまだ油断出来ない状況だった。


「ほら!こっちだ!」


グリフォンの頭上からヒロシとゴブリン部隊が急襲する。

エディの部下が使っていた高品質の斧や槍を装備し、高所から現れ隙を付くと同時に、高所からの落下エネルギーも力に加えグリフォンの風を破ろうという策のようだった。

タイミングはばっちり、攻撃場所も完璧。


しかし通らなかった。

かなりの速度で攻撃を仕掛けたにも関わらず風の鎧にすべて弾かれてしまっていた。


キィー!キャアァァ!


グリフォンが甲高い叫びと共にエディの部下を惨殺した竜巻を発生させる。

小さな竜巻の群れは攻撃後の無防備なヒロシとゴブリンに殺到した。


「ヒロシ様!!!」


コルリルの叫びが再び響き渡る。

そのまま八つ裂きにされたかに見えたヒロシ達だが、

竜巻が当たる直前に、ゴブリン達が身を挺してヒロシの盾となったのをコルリルは見た。

おかげでヒロシは竜巻の直撃寸前でラボへ再避難していた。


「いや〜あれはかなり固いね!ありゃ捕獲は無理ゲーかなぁ♪♪」


心配するコルリルの隣にヒロシが現れた。

攻撃が失敗したのに全く堪えていない様子だった。


「だから言ったでしょ?!もう無理ですから早く逃げますよ!!

てか急に仕掛けないで下さい!!」


心配と憤りが混ざり合いコルリルはヒロシに詰め寄った。

しかしやっぱりヒロシは気にせず次の策を考えていた。


「ふむ。あの鎧が厄介だな。近接になると竜巻もあるし、

しかし遠距離だと空中からのかまいたちで終わりだしなぁ?

マジで厄介!だけどだからこそやりがいあるね♪」


独り言をブツブツ言うヒロシにコルリルはもっと言ってやりたい事があったが、


「おい!早くやっつけろよ!何やってんだよ!」


また店長がヒロシにやじを飛ばしていた。

それに乗っかり周囲も口々に文句を言い出していた。


「やれやれ。今ゆっくり考えてたのに。

大丈夫、あのグリフォンは僕達が必ず倒すからね♪」


ヒロシは憤りを見せずラフな様子だった。

しかしそんな様子は店長の気に障ったようだった。


「じゃあ早くやれ!いいか!もしあの化け物のせいで俺の店が壊れたら、お前に弁償してもらうからな!!!」


店長のあまりの言い草にコルリルは思わず口が出た。


「ちょっと!何でヒロシ様が弁償しなきゃいけないんですか?!

ヒロシ様はちゃんとグリフォンと戦ってるじゃないですか!

あのグリフォンは私達が呼んだわけじゃないのに何で私達の責任にされるんです!?」


「うるさい!お前みたいなチビに話してないんだよ!

化け物退治は勇者の仕事だろうが!

普段からバカ高い税を払ってるのはお前らが働く為だろう?!

だから早く仕事しろこのボンクラ勇者!!」


「はぁ?いったい何を言って・・・」


キィー!!


コルリルと店長の口論を遮りグリフォンが再び動き出した。

とうとう見失ったヒロシを見つけたらしい。


「と、とにかく!あのグリフォンは私達でなんとかします!

皆さんは早く逃げなさい!!」


コルリルの指示を聞くまでもなく、こちらに向かってくるグリフォンを見て、群衆は一目散に逃げたした。


「ヒロシ様来ますよ!」


「ククク♪コルリル言ったね?私達でなんとかしますって♪

じゃあ今回もよろしくねぇ♪♪」


「あぁ!もう!わかりましたよ!

とりあえずラボで逃げながら策を考えますよ!!」


こうしてヒロシ&コルリルVSグリフォン戦が始まった。

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