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第一部 十八話 【悪辣勇者と深まる絆】


コルリルはヒロシがラボに消えてからの数日間で、フォシュラとゆっくり話す事が出来た。

どうやらヒロシは盗賊達は研究素材とし、フォシュラとディロンはアシスタントとしてパーティーに入れたようだった。

しかもパーティー入りさせるために兄妹を互いに人質にするという悪辣ぷりだった。


「フォシュラさん、何度も言いますがほんとにすみません。

勇者には私からちゃんと話しますから。

やっぱり人質を取って無理やりパーティー入りさせるなんて絶対良くないですよ・・・」


コルリルは何度もフォシュラに謝罪し、ヒロシが帰ったらすぐ二人を解放するよう説得するつもりだった。


「いいわよ別に。殺されなかっただけマシだしね。

それに私達盗賊よ??せっかく捕まえた私達を逃がしたらあんたが罰を受けるんじゃない??」


「それはそうですが・・・」


「それにあんたも最初は私達を捕まえるか倒すつもりだったんでしょ??

なんで急に救けるのよ??」


「そ、それは、あんな話を聞いたらそりゃ助けたくなりますよ!!」


コルリルはフォシュラからラボ内での顛末を聞いていた。

フォシュラやディロンの預かり知らぬところで盗賊達が悪事をしていた事、

その事に二人がとても怒っている事。

確かにニ人のしてきた事は悪い事だが、それでもコルリルにはちゃんと話したフォシュラが悪人とは思えなかった。

少なくとも死刑になったり勇者の奴隷になるほどの悪人ではないと感じていた。


「そもそもなんでフォシュラさんたち程の実力で盗賊なんてしてるんですか??

お二人の実力なら傭兵とか、ギルドで冒険者になってもいいですし、

その方が盗賊よりよっぽど稼げるはずですけど?」


「それは言いたくないわ。ディロン兄ぃにでも聞いてみたら??

・・・てかあの勇者本当性格悪いわね??

あんたよく今まで一対一で旅してこれたわね??」


「はぁ・・・

まぁ旅と言っても二人きりだったのはまだ一週間程ですし、もう振り回されるのにも慣れましたしね〜」


「私があんたなら一時間でもムリだから」


フォシュラはコルリルの質問をはぐらかし答えてくれなかった。

コルリルも話しにくい事を無理やり聞き出したくなかったのでそっとしておく事にする。


(まぁ後日改めて聞いても良いし、

ディロンさんに聞いても良いかも。

今はもっとこの子と仲良くなろうと!)



コルリルはフォシュラと仲良くなるために色々な話をした。

主に二人はヒロシの愚痴を話し、時には魔術の話もした。


「あんたの魔術なかなか良いじゃない。

特に砂の蛇はかなり使い勝手良さげね?

私にも教えてよ!」


「それはもちろん良いですが、魔術師としてはフォシュラさんの方が断然優れてますよね??

高威力の魔術や無詠唱魔術を使えますし。

魔力容量も私よりかなり多いのでは??

あ、でも、できたら私も無詠唱魔術をフォシュラさんから教わりたいです!」


「無詠唱魔術?あんなの簡単じゃない!

私が教えたらすぐに使えるようになるわ!

私は天才だからね!!」


フォシュラとコルリルはお互いに自分の知らない魔術や技術を教え合い修練をして、ヒロシが帰って来るのを待った。


フォシュラはコルリルには出来ない技を使え、魔術師としてはかなりの腕だった。

しかし、コルリルも得意の魔術系統ではフォシュラを上回っており、特に召喚魔術ではフォシュラは全く及びもつかなかった。




「これが幻蝶召喚です。蝶は私の意のままに操れます。

召喚魔術の基礎ですが、応用次第で様々な近い道があるんですよ??」


コルリルはそう言って無数の蝶を自身の周囲に展開させ、一糸乱れぬ統率を見せ宙を自在に飛ばせた。

コルリルの指示どおり蝶は飛び、空中で様々な形を作った。

そんな蝶を見てフォシュラはほとほと感心した様子だった。


「あんたすごいわねぇ?!!この魔術は知ってたけど、ここまで自在に蝶を操れるなんて知らなかったわ!!」


コルリルの魔術を格上のフォシュラがひたすら驚き褒めるので、コルリルは嬉しいような恥ずかしいような複雑な気持ちになった。


「あ、ありがとうございます。

けど私なんてまだまだです。実際の戦闘じゃフォシュラさんに全然勝てなさそうですし。」


「戦闘に役立つだけが魔術じゃないでしょ?

私はあんたの・・・

コルリルの魔術がすごいと思うから言ってるのよ!

素直に認めなさい!!」


フォシュラがちゃんとコルリルを名前で呼んだ。

それはフォシュラが自分を認めた証のような気がして、コルリルはとても嬉しくなった。


「わかりました。ありがとうございますフォシュラさん。

改めてよろしくお願いします!」


「ふん!わかれば良いのよ!

さぁ早く修業するわよ!もっと強くなってあの勇者を出し抜けるようにならないとね!!」


こうして二人はよりパーティーとして絆を深めていき、お互いに魔術師として教え合い力を高めていった。

そんな日々が一週間程続いた後、ようやくヒロシがラボから出てきた。


「いやぁ〜待たせてごめんねぇ?研究がキリのいい所までなかなか終わらなくて」


一週間待ちぼうけさせたわりにはヘラヘラと現れるヒロシにコルリルもフォシュラも冷たい視線を向ける。


「いえ、別に大丈夫ですよ?フォシュラさんと楽しく修業してましたので」


「ふん!あんたが居なくても全然困らなかったし!

むしろコルリルが居てとっても助かったわ!」


「・・・あれ〜?もしかして僕お邪魔??」


こうして勇者パーティーは勇者以外の絆は深まり、改めて旅を再開するのだった。

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