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第一部 十六話 【盗賊の末路と新たな仲間】


ラボに入ったヒロシは非常に上機嫌で戦闘の疲れなど吹き飛んでいた。


(研究素材が16人も!

しかもバーン兄妹はかなり良い!!

研究素材にしても良いけどやはり今後の事を考えると・・・)


ヒロシは様々な研究について考えながらすぐにバーン兄妹が囚われている部屋へ向かった。


部屋に着くとヒロシは壁を変化させマジックミラーにした、外から様子を伺う。

バーン兄妹は二人で寄り添いあって座っていた、どうやらフォシュラの麻痺が進行し動けない様子だった。


(ふむふむ、やっぱりディロンは妹を大事にしてるんだね、妹も兄を頼りにしてるみたいだし、中々良い情報だ♪)


ヒロシは穴を閉じて次は盗賊団が囚われている部屋に行き同じように様子を見る。

盗賊団は怯えきって隅に固まったり、壁を叩いたり、大声を出したりしている。


(ふむふむ、こちらはまだ反抗意志があるみたいだね。さてさてこれはどうしようか)


ヒロシが考えているとゴブリンがやってきた。アジトの探索を任せていたゴブリンだった。


「ギギギィガィガア」


ゴブリンはアジトの探索は終了したと報告してきた、いくつかの物品をラボに持ち帰ったので確認してほしい旨があるようだった。


「ギギ」


ヒロシはすぐに確認すると伝えそちらに出向く事にした。


ゴブリン達が盗賊のアジトから持ち帰った物品はラボの倉庫部屋に集められていた。

各地の村で奪われた食料、僅かだが金品もあった。

だがそれ以上にヒロシの目を惹きつけたのは。


「これは・・・」




それから少しして、ヒロシは再びディロン達の部屋を訪れた。

部屋に入って来たヒロシを見てディロンがすぐに怒りを露わにする。


「貴様ぁ!!」


ディロンは怒声を上げヒロシに襲いかかろうとする。しかしヒロシは手を上げそれを制した。


「まず初めに言っとくけど、ここは僕のスキルで生み出したラボという特殊空間だ。

ラボから出るには僕が作る出入口を使うしかない。

したがって僕が死ねば君達はラボから出れなくなる、餓死するしかなくなるわけだ。

まずはそこを理解してね?」


第一声でヒロシはディロン達の反撃の目を潰した。

これでディロン達は不意をついてヒロシを仕留めたりする事が出来なくなった。


反撃のチャンスがなくなり睨みつける事しか出来なくなったディロンを見てヒロシは続ける。


「理解してくれたみたいだね??

では続けるよ、これを見るんだ」


ヒロシが指を鳴らすと壁が変化し、隣の部屋と繋がる。

そこには盗賊達が壁に手足を拘束されていた。皆ディロンの部下達だった。


「お前達!?貴様!こいつ等をどうする気だ?!」


ディロンが気炎を上げる。ヒロシは無視して話し続けた。


「先ほど君達のアジトを探索して得た物資から興味深い品が見つかった、これだ」


そう言ってヒロシは一振りの剣を出す。何の変哲もない剣だが、刀身に血糊がべっとり付いていた。


「これは魔獣ではなく人間の血だ。

君達はフシリ村では怪我人は出さなかった。

じゃあこの血糊はいつどこで付けたんだろうね??」


ヒロシは淡々と尋ねるが言葉の裏に静かな怒りを出していた。

それはディロン達に血糊が真実だと感じさせれたようだった。


「まさか??俺や妹は村人や他の誰も傷つけていない。

お前等?!なにかしたのか?!!」


ディロンが怒りを露わに盗賊達を見る。盗賊達は目を伏せ各々言い訳をする。


「お頭?!俺は何もしてねぇ?!あ、あいつはちょっと悪さしてたけどよ?」


「は、ふざけんなよ!?俺だけじゃねぇ、他の奴らもやったじゃねえか?!」


「知らねぇよ?!てかお頭達が村からあんまり金取らねぇからだろが?!

稼ぎがすくねぇからちょいと別口で働いただけだろが!!」


「そ、そうだよ!他の村は何人か殺せばたんまり金出したぜ?!お頭が悪いんだよ!!」


盗賊達は各々が勝手な言い訳をしてわめき出した。

ヒロシの予想通り部下達はディロン達の知らぬところで違う村を襲い利益を得ていたようだった。しかもそこでは殺人をしている。


「あ、あんたら、なんて事を!」


フォシュラが怒りを露わにしたその時、ディロンは素早く盗賊の一人に近付き渾身の一撃で拳をふるった。

殴られた盗賊は身体ごとバラバラになってしまい周囲に血潮が飛び散った。


「ひぃぃ!」


拘束された盗賊達は怯え叫ぶ。

ディロンは次の盗賊に拳を振り上げ叫ぶ。


「お前らぁぁ!俺達は盗賊だが、誰も傷つけないと約束しただろうが?!

仲間がやられない限り手は出さない!それが俺達の信条だろう?!それを破って何してんだぁぁ!!」


ディロンは再び殴りかかろうとするが、


「そこまで」


ヒロシはラボを操作しディロンを拘束する。


「勝手に僕の研究材料を減らすなよ。

あと誰も傷つけない?それが信条?笑わせる」


ヒロシは嘲るようにディロンに語りかける。


「フシリ村のような小さな村では僅かな金品も貴重だ、

そして食料はそれよりさらに貴重だ。

それを奪われた村の人は絶望し生きる活力を失う。

この世界では餓死するか自死するか選択しなければならないだろう。

実際僕達が尋ねなければ死んでいた村人もいたかもな。

仮に死なずに済んでも奪われた悔しさ、恐怖、悲しみ、怒り、後悔、憎しみ。

そんな負の感情を抱えたままこれから先の人生を歩ませる。

それが傷付けていない??

はっきり言って呆れるな。お前実はかなりのバカだろう??」


ヒロシの強い言葉にディロンは何も言い返せないようで、黙ってうなだれヒロシに頭を垂れた。

ヒロシは戦っている最中よりよっぽど怒りや闘志を露わにしていた。


「まず盗賊団のクズ共、お前らは僕が念入りに研究してやる。

人間扱いされると思うな」


ヒロシの言葉に盗賊達は全員竦み上がる。

ヒロシは気にせず続ける。


「そしてディロン、フォシュラ、君達には一つ命令がある」


ディロンとフォシュラは固くなりながらヒロシの言葉を待った。


「僕の仲間になれ。これは命令だ」

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