表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
17/87

第一部 十五話 【兄妹愛と決着】


「もう終わりだな、お前はよくやったがここまでだ」


ディロンとヒロシの戦いも大詰めだった。

ディロンが満身創痍のヒロシに迫る、

ヒロシにはもう逃げる体力は残されていなかった。

しかし、ヒロシは顔に笑みを浮かべディロンと向き合う。


「君の力は素晴らしいね♪

戦いは僕の負けだ・・・

でも勝敗は別だよ?」


そう言ってヒロシは高台の方に目を向ける。

何故なら先程見えたからだ、コルリルがフォシュラと戦っているのが。

ディロンもすぐにその意味を理解したようだった。


「貴様達!!まさかフォシュラを?!」


ディロンも高台を見た。

ちょうどフォシュラが空を駆け、コルリルに斬りかかる所だった。

しかしその体捌きはふらついており、傍目から見ても麻痺の影響があるのが丸わかりだった。


(よし!まだ麻痺は効果が残ってるみたいだね!

コルリル頑張って!けど無理しないでよ!)


自分達の策が上手くいきつつあるのでヒロシは満足だった。

策1、自分がディロンと一騎打ちをしてコルリルをフリーにする。

策2、コルリルがフォシュラと戦い、身体を動かさせて麻痺の進行を促す。

そして最後の策は、


(最後の策は僕次第だね!)


「妹はまだ麻痺が残っているんだぞ!!

それを狙うとはなんと卑怯な!!」


ディロンはヒロシを糾弾しすぐにフォシュラの元に向かおうとする。

しかしヒロシはその隙を見逃さなかった。

ラボからあるアイテムを引き出したヒロシはディロンの足元に投げる。


バシャ!


ディロンの足元に液体が撒き散らされた。


「な、なんのマネだ!っ!これは?!」


ディロンはすぐに異変を感じたようだった。

足が地面とくっつき全く動かなくなっていた。

足元にかけられた液体が急速に固まっているからだ。


「それは森で取れた樹脂に蜘蛛魔獣の巣を溶かし込んだ物だよ。

この液体は、外気と高熱で急速に固まり対象を固定してくれる。

君が炎の鎧を発動してくれたから使えたよ♪」


ヒロシの説明を聞きながらディロンは必死で足を動かしていた

足の固定は取れなかったが、地面が音を立てひび割れて来ていた。


「こんなものでたいした時間稼ぎにもなるか!」


足を地面から無理矢理引き剥がそうとするディロンにヒロシは追い打ちをかける事にした。


「やっぱり拘束は無理か。

でもこれはどう?」


ヒロシはラボの入口を複数同時展開する。

その瞬間、中からアンデッドが無数に飛び出した。


ヒロシがコルリルから聞いた情報だと、

アンデッドは人が朽ちたあと魔力によって蘇った魔獣であり、

人の面影を残してはいるがゴブリンよりよっぽど化け物らしかった。


(旅の途中で見つけたアンデッドの群れ!

一応全部捕まえといて良かった!)


アンデッドは外に出ると一斉にディロンに襲いかかる。近くにいるヒロシには目もくれなかった。


「バ、バカな!アンデッドだと?!こいつらは決して人に服従せず、命あるものは全て食らう魔獣なはず!?何故お前はこいつらを飼いならせる!?」


アンデッドの猛攻を足が動かない状態でなんとか凌ぐディロンはヒロシを問い詰めてくる。

ヒロシは平然とアンデッド達の群れの中で笑みを浮かべ話した。


「いやいや、決して飼いならしたわけじゃないんだよ?

確かに彼らは全く言う事を聞かない、脅しても痛みを与えても何をしても絶対言う事を聞かない。

だから僕は研究の方向性を変えて、

彼らの戦闘力だけを使えるようにしたんだ!」


ヒロシは研究成果を話せる事に興奮していた。


「彼らを研究し、彼らが匂いを頼りに敵に襲いかかることがわかったんだ!

僕の世界のゾンビのような感じだ♪

つまり彼らに襲われない方法は一つ♪」


ディロンは得意気に話すヒロシから、いつの間にか目の前のアンデッド達と同じ激しい腐臭が漂っていることに気がついたようだった。


「ま、まさか?!」


「そのまさか♪アンデッド達の腐った内臓の腐液を身体に散布したんだよ。

匂いは最悪だけど、これで僕はアンデッド達には仲間にしか見えないはずだ♪」


簡単に話すヒロシにディロンは戦慄した様子だった。

しかも周囲のアンデッドはどんどん増すばかり、火炎や大斧でいくら薙ぎ払われても全く勢いは落ちなかった。


「無駄だよ?かなりの数のアンデッドを確保しているから先に君の体力が尽きるはず。

諦めて僕の研究材料になってね♪」


ヒロシは勝ち誇り大声で降伏を迫る。

それは高台のコルリル達にも届いたようだった。

コルリルが必死にフォシュラの剣を躱しながらヒロシ達の方を見てくれた。

アンデッドに取り囲まれたディロンを確認してくれた様子だった。


(よし!これで予想通りなら上手くいくはず!)


ヒロシは様子を見る、するとコルリルが叫びだした。


「フォシュラ!あなたのお兄さんがアンデッドに食べられそうよ?助けなくて良いの?!」


コルリルから突如兄のピンチを知らされ、

フォシュラもディロンの方を見た。


「ディロン兄ぃ!まさか、アンデッド!?」


フォシュラは今にもアンデッドにやられそうなディロンを見てパニックになっていた。


その瞬間、コルリルが詠唱した魔術がフォシュラを捕らえる。フォシュラは砂に身体を拘束され身動き出来なくなる。


「あんた!ひ、卑怯よ!」 


(コルリルナイス!!)


ヒロシは思わずガッツポーズをする。

これでフォシュラは捕獲、ディロンはアンデッドに取り囲まれている。

もうほとんど勝利だった。


しかしフォシュラが炎による転移準備を始めたようだった。

全身が発火し今にも転移しようとしている。

コルリルも気付きすぐに魔術を発動する。


「・・・敵を捕らえよ!風鞭!」


コルリルの魔術がフォシュラに迫る。ギリギリのところでフォシュラは転移魔術を発動させた。


「火焔転移!」


火の玉となったフォシュラは勢いよくディロンに向かっていった。


しかしそれはヒロシの予想通りだった。


フォシュラは捕まえても絶対転移魔術で逃げる。

しかし、ディロンがピンチになれば、兄を置いて逃げるわけにはいかない。

必ず一緒に転移して逃げようとするはずだ。

だからフォシュラが転移しようとした瞬間自然とその行き先もヒロシにはわかっていた。

ヒロシはディロンとフォシュラの間に割り込みラボの入口を発動させた。


「いらっしゃい~♪」


フォシュラは転移状態のままラボに突入するしかなかった。

火焔状態のフォシュラをラボ内に誘導したヒロシは素早くラボを閉じた。

そしてディロンの方を見て勝ち誇るように宣言する。


「はい!これで君の妹、フォシュラ・バーンは僕の手の中だ♪

君はどうする??ここでまだ戦う?それとも・・・?」


そう言ってヒロシは再びラボの入口をディロンのすぐ近くに開く。

ディロンには妹が捕らえられた以上選択の余地はないだろう。


「フォシュラ!!」


ディロンは拘束を無理やり振りほどき、アンデッドを蹴散らしながら、

フォシュラを追いラボに突入する。

ヒロシはすぐに入口を閉じようやく一息ついた。


「勝ったぁ〜」






戦う前は余裕を見せていたヒロシだったが、実はギリギリの勝利だった。

いや、実際には勝ててはいないが、ラボに入れた時点で脱出不可能なので、実質勝ちと言っても良かった。

ひとまずヒロシは心から安堵した。


その後、ヒロシはコルリルの所へ移動する事にした。


「コルリル大丈夫だった??」


ラボによる転移ですぐに移動したヒロシはコルリルの安否を確認した。


「大丈夫ですよ、ちょっと羽が焼けちゃいましたけど、これくらいなら自分で回復出来ます、ヒロシ様も大丈夫ですか??」


「自分で回復出来るんだ!?流石コルリルだね♪

こっちも大丈夫だよ♪

かなり手強かったから苦戦したけどでも大きな怪我はないよ。あちこち火傷だらけだけどね~」


コルリルも大きな怪我はなく無事戦闘を終えれていたようだった。


「無事なら良かったです。でもほんとによく勝てたと思いますよ?

フォシュラもですがディロンの実力は想定よりかなり上でしたね?」


「ほんとにね、まさか装備で火炎を出してくるなんてねぇ。

けどそのおかげで拘束薬を使えたし良いかな~

でもコルリルがフォシュラを追い詰めてくれたから、ディロンに隙が出来たからね。

助かったよコルリル、ありがとう♪」


ヒロシがコルリルに感謝の意を伝えるとコルリルは照れたようにもじもじしていた。


「や、止めて下さい、私が召喚士として勇者様のフォローをするのは当然ですから!

それに今回の戦いは私が村の人達の助けになりたかったから始まったわけですし、

本来なら私達の力量じゃまだまだバーン兄妹と戦うには早すぎたと思います。

だから感謝するのはこちらです、ありがとうございますヒロシ様!」


激戦を終えにこやかに話すヒロシとコルリル。

そこには以前のわだかまりはなく、立派なパーティーとしての絆があった。


「いやいや、今回は僕も人間の研究素材を手に入れるチャンスだったからね♪

お互いに利益がある戦いだったから良いんだよ♪」


ヒロシの一言でコルリルのにこやかな笑顔は強張っていった。


「あ、あのーやっぱり今回捕まえたバーン兄妹や盗賊団は研究なさるんですか??」


コルリルは恐る恐るといった感じで聞いてくる


「もちろんだよ!今からどんな研究をしようか胸が躍るねぇ!

まぁ盗賊団はともかくバーン兄妹には違う使い道がありそうだけど・・・」


ヒロシは笑みを浮かべながら研究について思案する。

それをみてコルリルはより怯えた様子を見せた。


「じゃあそういう事だから僕はラボに籠もるね♪

多分数日後くらいに出てくるからフシリ村でちょっと待ってて??」


ヒロシはそう言ってラボを開き中に入ろうとした。

しかし、コルリルが慌てて引き止めてきた。


「ちょ、ちょっと待って下さいよ!今からいきなりですか?!まずはフシリ村に報告しないと?!

それにアジトの探索や休息もいるでしょ?!」


「報告は任せるよ♪アジトの探索はゴブリン達に任せてたから、多分大体終わってるはずだしこちらで確認しとくよ♪

コルリルはフシリ村でゆっくり休息しといてね♪」


ヒロシはそう言い残しラボに入り入口を閉じた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ