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第一部 十話 【実戦とボス現る】


コルリルとヒロシは潜伏場所からラボを開きアジト近くまで移動した。

コルリルはヒロシのラボは生活面だけでなく、潜入にも使える万能スキルだと改めて感心した。

そしてコルリル達はそのままアジト内に潜入し、気付かれないように細かいラボの発動で移動する。


「ヒロシ様、ラボでの潜入かなり良い感じですね?」


「そうだろう?研究以外にも使えるし中々良さげだね♪」


アジトの中は岩場を利用している質素な造りだった。

コルリルはこのアジトは長居するような感じはなく、急ごしらえで造られたように感じた。


ひとまず潜入には成功したので、まず見張り台にいる盗賊から無力化する事にした。


「ヒロシ様、どの見張り台からいきますか?」


コルリルは周囲の魔力を感知しながらヒロシに話しかける。

この感知をしている間コルリルは魔術は使えないし、周囲に気も配れない。

だからヒロシが一人で盗賊達とやり合う事になる。

もちろん危うくなったらすぐに感知を止めて加勢するつもりだが、コルリルは心配だった。


(魔獣相手だとこの勇者めっぽう強いけど、人間相手にどこまで戦えるかなぁ?

もしヤバそうならすぐ助けないと)


「じゃあ一番近くの見張り台から行こうか?

案内と感知よろしくね??」


コルリルが不安がっている間にヒロシはテキパキと制圧の準備を進めていた。

コルリルもとりあえずヒロシにやらせてみる事にした。


「・・・了解しました」




コルリル達は近くの見張り台までラボ移動で近付いた。


「今は見張り台には一人しかいないみたいです、チャンスですよ」


コルリルは魔力を感知し、周囲には見張りの盗賊一人しかいない事を確かめ報告する。


「アイアイサー」


「なんですかその返事は・・・」


ヒロシはコルリルの指示通り見張り台にラボを開いて移動した。


見張り台には盗賊が一人見張りをしていた、気だるそうにしており完全に油断している。


ヒロシは音もなく背後に忍び寄り後ろから羽交い締めにし、盗賊の口に薬剤を染み込ませた布を押し当てた。


「〜ん!う〜!!!」


盗賊は多少暴れるもすぐに力なく倒れた、眠っているようだった。


「よし!ちゃんと効いて良かった♪」


ヒロシは眠っている盗賊をラボの監禁部屋へ放り込んだ。ヒロシ曰く、縛らずともこの部屋に入れたらあとは煮るなり焼くなり好きに出来るという具合らしかった。

コルリルは見ているだけで何も手伝う必要もないくらい鮮やかな手際だった。


「コルリル、見張りを一人無力化したよ、あと17人かな?」


「はい、あと17人です。

・・・それにしても手早いですね、なんか慣れてるような感じがしますが」


「森に生えてる睡眠効果のある草を大量に煎じて濃縮させた特製睡眠薬だからね♪効果てきめんで良かったヨ~」


ヒロシは微妙にはぐらかしてきた。




コルリルとヒロシは次々と他の見張り台に移動していく。


そしてヒロシは同じように一人で鮮やかに他の見張りを捕まえていく。

三人目を確保しひとまず見張りは無力化出来た。


「これで見張り台の盗賊は全員確保したかな??さぁ次はどうしよかな??」


「ではアジト内の盗賊をできる限り見つからないように確保していきましょう。

巡回している盗賊がいるのでそのあたりから」


「了解!ボス!」


「誰がボスですか・・・」


コルリルとヒロシは次に巡回している盗賊を確保していく事にした。

またコルリルが感知し、ヒロシがラボで移動する。

そして盗賊を見つけ同じように睡眠布を使い確保する。

コルリルは簡単過ぎて正直油断していた。

このまま全員楽々確保できるだろうと思っていた。

それが失敗だった。



四人目、五人目までは順調に確保出来た。


「また一人確保、これで五人目だね~

なんか楽勝だね?」


「はい!非常に順調ですね。では次は・・・

ヒロシ様!後ろ!!」


「・・・っ!」


ヒロシが身を躱した瞬間、今居た場所に鋭い刃が振り下ろされた。

ヒロシは間一髪背後からの奇襲を回避出来た。


「あ、危ないなー。全然気づかなかったよ」


奇襲してきたのは盗賊団の一味で、どうやら異変を感知し、様子を見に来たようだった。


「ちっ!感の良い野郎だ!

敵襲!敵襲〜!アジトに侵入者だ!!」


「うわぁ〜バレちゃったよ、どうしようかコルリル??」


ヒロシは目の前の盗賊から目を離さずコルリルに指示を求めてきた。


「・・・盗賊団の残りは12人、流石にヒロシ様一人じゃ厳しいです。

私も加勢します。体制を立て直しましょう」


コルリルの計画では正面から戦うのは十人以上は確保してからが理想だった。

しかしもうバレてしまった以上このまま戦闘にならざる得なかった。


「・・・いや、コルリルはそのまま位置の把握だけよろしく、出来るだけ僕がもう少し数を減らすよ。

てか奇襲に気付いてくれてありがとう、けどもう少し早く教えてほしかったなぁ〜」


「・・・っ!そ、それは盗賊が多分気配を消していたから感知しにくくなってたからで!

も、もう大丈夫です!感知にもっと集中すれば見破れます!」


コルリルは痛いところを突かれしどろもどろになる。

正直に言うといくら気配を消してもちゃんと集中していたら感知出来たはずだった。


「くす♪了解♪やっぱりコルリルはからかいがいがあって可愛いね♪

じゃあ感知よろしく!」


ヒロシは会話を止め集中し始めた。

盗賊は増援が来るまで下手に動かない様子だった。


あたり中から騒がしい音が響いてくる、ここに盗賊達が集まるのも時間の問題だった。

コルリルは盗賊達が続々とこちらに迫るのが感知出来ている。

非常に不味い状況だったが、

ヒロシは余裕な様子だった。


「じゃあさっさと片付けますか!」


そう言ってヒロシは周囲にラボの入口を複数展開する。


「ギャイアギャイア!(来い!ゴブリン共)」


ヒロシの呼びかけに応じラボから武装したゴブリン達が出てきた。

それは熊魔獣を捕まえた時のゴブリンとは違い、戦闘用に訓練、編成された戦闘用のゴブリン達だった。


「ギギ!ギャイギー!ガガキャイギギ

(洞穴中に散らばり人間を無力化しろ

ただし出来るだけ殺すなよ)」


「ギギギャイア!」


ヒロシの指示を受けゴブリン達は洞穴中に散らばっていった。

目の前の盗賊は激しく動揺していた。


「な、なんでゴブリンが!?お、お前なにもんだ!?」


「勇者♪」


ヒロシは盗賊に襲いかかった。



コルリルは、ヒロシがゴブリン達を使って盗賊達を蹂躙していく様子をただ見ているしかなかった。


(す、すごいな。あっという間に制圧していく、あの勇者も凄いけどゴブリン達も強い)


ヒロシは目の前の盗賊をすぐに無力化したあとゴブリン達が倒した盗賊を次々とラボに回収していった。


ゴブリン達は通常考えれないくらいの戦闘力を発揮していた。

個では盗賊達より力量は下でも、圧倒的物量と洗練された連携プレイで格上の盗賊を難なく無力化していく。


(もうアジトの盗賊はバーン兄妹を合わせても三人しか残っていない。対するこちらは勇者とゴブリンが五十体以上。

わ、私の出番がない!)


コルリルは自分がゴブリンより役に立っていないと感じ焦った。



そうしてコルリルが焦っている間に戦闘はほとんど終わっていた。

盗賊達は瞬く間にゴブリン達に制圧された。

残り三人、ボスのバーン兄妹と部下が一人だけだった。

対するこちらはヒロシもコルリルも無傷。

ゴブリン達も怪我した者もおらず、完勝に近かった。


「あの〜?ヒロシ様、これなら最初からゴブリン達に任せたら良かったじゃないですか??」


コルリルは自分が何もしていない感じになったのでややいじけてヒロシに話しかけた。

対するヒロシはにこやかに戦果を確認している。


「ふむふむ、盗賊は全部で13人確保で2人死亡か!

まぁ初陣にしては上等だね♪

コルリルありがとう♪コルリルのおかげで大勝利だよ♪」


「・・・私なにもしてませんけど」


「いやいや!コルリルの感知のおかげで全員逃さず捕まえれたんだよ!

もし最初から真っ向勝負してたら何人かは逃げてたと思うし!」


ヒロシの言う事にも一理あった。

確かに最初からゴブリン達を真っ向から突撃させたら、見張りの盗賊に気付かれすぐに戦闘になっただろう。

盗賊達は五十を超えるゴブリンの群れを見て戦うだろうか?いや、多分逃げていたとコルリルにも予想出来た。


今回盗賊が逃げなかったのはアジトにいきなり大量のゴブリンが出現して、理解が追いつく前に制圧されたからだ。

そしてその状況を作り出したのは自分のラボと、コルリルの感知だとヒロシは言う。

コルリルは頭では理解出来るが、感情では自分はなにもできなかったと感じていた。


コルリルがしょげているとアジトの奥から怒声が響いてきた。

逃げた盗賊と奥からもう一人誰かがやってくるようだ。


「あ、姉御!ゴブリン共がわんさか居てめちゃくちゃつえぇんです!男の方もやべぇし、た、助けてくだせぇ!」


盗賊の一人が助けを求めているようだ。

だんだん声は近付いてくる。


「あんたねぇ〜ゴブリンくらいあんた達で倒しなさいよ!なぁんでこの私がゴブリンなんて相手しなきゃいけないのよ!!」


ゴブリンごときで自分を頼るなと声の主は激怒している。


「す、すみません!けど仲間はほとんど捕まっちまいました!

もうお頭達に頼るしかありません!」


「・・・だったら最初からそう言いなさないよ!!

私が始末してあげるわっ!!」



そして声の主、盗賊達のボスは現れた。


真っ赤な赤毛のツインテール、

褐色肌で瞳はオレンジ、

三白眼でヒロシとコルリルを見下し、

腕組みをしながらボスと呼ばれた少女は名乗りをあげる。


「そこまでよ!私が直々に火祭りにしてあげるわっ!

このフォシュラ・バーンの火炎を味わいなさい

!!」


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