第一部 プロローグ 【召喚と失敗】
その日、サイマール国で勇者召喚の儀が行われようとしていた。
勇者を召喚する目的は、魔族の侵攻による魔戦争が原因だった。
圧倒的な戦力で迫る魔族を相手に、各国は自国の戦力や他国と同盟を組んで対抗していたが、戦況は膠着状態だった。
だからこの状況を覆す為に王達は伝承にある勇者召喚を行うのだった。
伝承によれば異世界より来る勇者は魔を打ち払い世界に平穏をもたらすとあり、各国の王達は世界の平穏の為勇者を召喚させようとしている。
もしくは自国がもたらした平穏の上で各国を統べる覇王となるためだった。
サイマール国の国王、バラマール王は自らの王宮で三度目の勇者召喚の儀を試す所だった。
「妖精よ!次こそは勇者は現れるのであろうな!?
すでに隣国の国王、ナイトルのバカ者は勇者を召喚させ自国の領土を次々に取り返しておる!
我が国にも勇者がいなければいずれナイトルは我が領土に攻め入るであろう!」
バラマール王は唾を飛ばしながら召喚の儀を執り行おうとしている召喚士を怒鳴りつける。
すでにサイマール国は2度勇者召喚の儀を行っているが2度とも勇者は現れず失敗していたからだ。
「お、王様、次こそは必ず召喚してみせます!
・・・前回の失敗は王が魔石をケチったから失敗したし、前々回は一度に10人召喚しろなんて無茶言うから・・」
妖精召喚士コルリルは小声でボソッとつぶやいた、
実際、王がもっと協力的なら召喚は成功していた確信があったからだ。
「なにかもうしたか!?儀式はまだかぁ!?」
「いえ!なにもありません!た、ただいまから始めさせて頂きます・・・」
仕方なくコルリルは急ピッチで準備を進めた。
少しして儀式の準備が整い、いよいよ勇者を召喚させる時が来た。
魔石から魔法陣に魔力が流れる、その流れをコルリルは巧みに操りそして、
「異世界にありし勇者よ!今こそ我が導きにより降誕せよ!」
言霊による命令が発せられた瞬間魔法陣の魔力が凄まじい勢いで噴出し光の柱となった。
その中から勇者がゆっくり現れ
・・・るはずであった。
光の柱からは誰も出てこずしばらくすると柱は光を失い消えてしまった。