四話 四魔将 降臨
転移魔法が発動し、一瞬の暗転の後、俺とアスモは巨大な扉の前に立っていた。
本来なら玉座の間に直接転移できるのだが、今回は初めてと言うことで扉の前に転移先に指定した。
こういう初めての時は、入口から雰囲気を味わいたいからな……。
玉座の間。
そこはアセロンにある我が最高の居城『破滅竜魔殿』の最上階の最奥に位置する部屋であり、最終防衛ラインとして作った最高の部屋である。
巨大な西洋の竜が掘られた黒を基調とした巨大な扉には黄金の装飾、様々な種類や色をした宝石がこれでもかと散りばめられている。此処こそが、この玉座の間へと入るための唯一の入り口。
扉を押すと、玉座の間の全貌が目に飛び込んでくる。
「おおっ、こうして設定したデザインを目の当たりにすると、すごいなぁ……」
思わず声を漏らす。
まず目につくのは、圧倒的までの広さ。詳しい人数上限は設定してないけど、見た感じおそらく百人くらいは余裕で入りそうである。
そして次に目を引くのは、扉の位置から、玉座まで長い奥深い道。扉から玉座まで高級そうな質のいい素材を使用した黒い布が敷かれている。
部屋の素材は全てが俺の自室と同じ黒い大理石。そんな漆黒の壁には左右どちらにも黄金の燭台が無数に一定の距離を空けて立てかけられていて、消えない効果を持った紫色の火が灯してある。
天井にも黄金を使ったシャンデリアが吊るされていて、見るからにザ・魔王がいる部屋と誰もが想像できる様な部屋になっている。
魔王なのだから黒と金をふんだんに使った高級な部屋にしたい、と当時の俺がめちゃくちゃ考えた自慢の部屋だ。ちなみに、主なデザインのモデルは俺が好きなドラゴンの王を勇者が倒すゲームのラスボスの部屋である。
「よし、行くか」
「はい、ノマ様」
扉の前から一歩踏み出す。自分が王であるという自覚はまだそこまで感じられない。
歩き進めて、チラチラと左右を見渡す。
竜を模した黒い騎士の様な甲胄が左右にずらりと扉から玉座まで並び、剣先を上にして構えている。王の間なのだから騎士の像をたくさん設置した方がそれっぽいなと、そう設定したのは俺だが、ちょっと怖いなこれ。威圧感がやべぇ……。
鎧の数減らした方がよかったかなとちょっと後悔しながら、玉座に辿り着く。
「近くで見ると立派だな……」
「ノマ様が一から設計し、創造したのです。立派ではないわけがありません」
「ははは……、ありがとうアスモ」
「もったいなきお言葉です」
俺が創った、俺のためだけの席。
名前は『魔王心臓』。
この玉座にはこの城の様々な設定ができる様に施してある。俺やアスモ達が殺され、此処に誰かに座られたら詰みーーそういう意味も込めて、この玉座を心臓と喩えて名付けたのだ。
素材は漆黒のオリハルコンをふんだんに使っており、どんな魔法、どんな武具であれ破壊されない一品となっている。
「よいしょ……」
座ってみるが、なかなかに座り心地はいい。これは癖になりそうだ。
背もたれに寄っ掛かる。ふぅ……、なかなかにいい眺めだ。玉座から見る部屋全体に感嘆していると、アスモが隣へ来る。
「如何でしょうかノマ様。その玉座から見られるこの部屋の光景は」
「サイコー。マジで魔王になったみたいだよ」
「今のノマ様は魔王ですよ、ふふ」
「そうだけどさ! 昨日まで社会人の一般男性だったんだぞ! 実感湧かないよ……」
「ならば、これからたくさん実感して行きましょう。貴方はもうあの現実から解き放たれたのです。我らの創造主よ」
アスモが優しく微笑んでくる。
その姿にちょっと安堵した。リアルで俺が色々苦しい思いをしてたのを、タルパのこいつはずっと生まれてから隣で見てくれていたんだ。
姿も見えず、声も脳内でしか聞こえず、触ることも普通の人間の様に出来なかったが……それでも、確かに俺の味方でいてくれた。
「これまで見守っていてくれて、護衛をしてくれて、本当にありがとうな。アスモ」
「メイドとして、タルパとして当然の務めですよノマ様」
玉座に座り、ふとこれから来るであろう四魔将達のことを考える。
四魔将。
RPGでいう四天王ポジションに位置する俺の古参のタルパの配下達だ。
正式名称は、【破滅竜魔王の四駒】。
俺自身をチェスの『王』と見立て、残り四人を『女王』、『僧侶』、『戦車』、『騎士』と喩え、その称号を四魔将には与えている。それぞれの得意分野では、俺の全タルパの中でも最強に位置し、他の四魔将、他のタルパ達に全く引けを取らない。
我ながら、なかなかいい設定ではなかろうか?最古参にして、最強の四人の配下。その役割をチェスの駒に見立てるのは当時の俺にしてはよく考えたと今更ながら思う。
「お待たせ真。遅くなったわ」
四魔将の設定の見事さに思いふけっていると、玉座のそばに一人の少女が現れた。
姿を見せたと同時に、ふんっと鼻を鳴らし腕組みをして俺を見つめる。
キラ・アーク。
種族は【破滅】を司る邪竜。詳しくは、破滅竜王という俺オリジナルの種族。与えられた称号は『騎士』。
黒い長髪を左右に括っており、水色の瞳、凛とした雰囲気の少女の姿をしている。
黒で統一された重そうな、背中には赤いマントが付いている、胸が若干露出した禍々しい鎧を着用しており、黒いツノが生えている。
彼女は四魔将の中で『集団戦闘』特化であり、無数の軍を率いることで彼女の真価は発揮される。
暗黒竜騎士団という暗黒騎士と邪竜で構成された部隊を個人で持っていて、圧倒的なまでの武力と数の暴力を持って敵を殲滅する。
「俺たちもさっききたばかりだし問題ない。それに一番最初だよ、キラは」
「ふーん。まだあの二人は来てないわけ……?」
周りを見渡し、呆れる様にため息を吐く。
キラは俺の相棒として創り出したドラゴンであり、そのため俺をリアルの名前である『真』と基本は呼び、立場上配下ではあるが敬語は一切使わない。相棒ポジションなのだからむしろもっと図々しくしてきていい。俺もその方がやりやすいしね。
「遅くなったー! ごめんねぇーまーくん!」
そんな部屋全体に響く大きな声音と共に、一瞬にしてキラの後ろに現れた女性。
マイ・アーク。
種族は【無】を司る魔女。正確には、闇属性に特化した魔女という設定だ。与えられた称号は『僧侶』。
紫色の美しい髪を腰のあたりまで伸ばしており、紫の瞳をしている。漆黒のドレスに身を包んでおり、魔女の象徴といえる黒い尖り帽子を頭にかぶっている。さらに、アスモと互角なほどプロポーションが抜群でおっぱいはなんとHカップ。
全体的に見ると妖艶な雰囲気を醸し出しているが、見ての通りとても明るいので妖艶なのは雰囲気だけ。
彼女は四魔将の中で『魔法』特化であり、四魔将一の頭脳と無数の魔法の知識を持つ。あらゆる知識を持ち、性格ははっちゃけていて、皆のムードーメーカーであり、タルパ達にも人気が高い。
そんな彼女も役職があり、『破滅竜魔殿』内の防衛システム創立者であり、管理責任者である。
「マイ、遅くないから安心してくれ。俺達もキラもついさっき来たばかりだから」
「ほんとぉ? ありがとー! まーくんったら優しいねぇー。私がリアルの時みたいになでなでしてあげようかー?」
「そ、それは、またの機会にお願いするかな」
マイは俺の姉という設定キャラであるため、俺を「まーくん」と愛称で呼び、俺のことを本当の弟の様に接してくる。
リアルの時はよく甘やかしてもらっていたが、それは視覚化や聴覚化、触覚化が曖昧な段階で行っていたものであり、全てが完璧な今甘やかしてもらったら俺の理性がぶっ壊れる恐れがある、というか絶対に理性の壁が激しい音を立てて崩れ去るから遠慮しておきたい。童貞には刺激が強すぎます。
「相変わらず元気いっぱいね、マイ」
「もちのろんだよー! マイちゃんが元気ないとかありえないのでぇす!」
呆れるように肩をすくめるキラに、それを受けてにははーと笑うマイ。
マイは基本明るく元気でテンションが高いのだが、あくまでこれは演技の性格なのだ。本当のマイは妖艶で悪女とも呼べるドSな性格なのだが、普段はこうして演技をして本当の自分を隠している。もちろんキラもこの事実を知っているのだが、普段本性を見せずこの明るさを一貫しているため、キラからは若干呆れられてたりする。
「そういうキラも相変わらず硬いねぇ。もっとリラックスして笑顔になった方が楽だよー?」
「う、うるさいわねっ。私達は四魔将なのよ! 皆の憧れ、リーダー的存在なんだから、もっとしっかりしなきゃダメなのよ!」
本当に、キラは真面目だなぁ……。
配下の暗黒騎士や邪竜達から自分達の王として慕われてるだけのことはある。キラが自分を曝け出すのは、俺と二人きりの時がほとんどであり、こうした公の場では王たらんと常に心がけているのだ。
「おっと……急いだつもりだったが、僕がこれは一番遅かったかな?」
扉の方から、透き通った声が聞こえた。そういえばまだ扉開けっぱなしだったのを忘れてた。
そんなことを思いながら、声のした方に視線をやる。
アリア・アーク。
種族は【支配】を司る吸血鬼。真祖を超えた俺オリジナルの神祖という俺オリジナルの吸血種だ。与えられた称号は『戦車』。
全体的に暗いこの玉座の間でも輝きを放つほどの黄金の腰まで伸びた綺麗な長い髪をうなじ辺りで一つに結び、左肩から前へ垂らしている。その瞳は真紅で、知的な雰囲気を醸し出している女性。血のような赤い薄い素材で作られた胸が盛大に露出したドレスを身に纏っていた。
コツ、コツと深紅のハイヒールが音を立てて、こちらへと歩いてくる姿はまさにファッションショーに出てるプロのモデルのようだ。
彼女は四魔将の中で『戦闘』特化であり、単独戦闘において、絶対的な力と多彩な圧倒的な数の能力、舞にも匹敵する頭脳で他者を寄せ付けない四魔将最強の称号を持つ。
「アリアたん、そんなことないよー。私も今来た所なのでぇす」
「それは良かったよ。ノマ直々の招集命令なんて、リアルで数ヶ月ぶり程の久しぶりだったからさ。慌てて身なりを整えてきたのだが、時間を費やしてしまった。すまないね?」
俺の方を見つめ、口角をニヤリとあげるアリア。その際に鋭い八重歯がチラリと見えた。
とてもすまなそうに見えないが、別に気にしてはいない。
アリアは元々俺の宿敵ポジションとして生み出している。だからこそ、設定の中で何度も死闘を繰り広げているため、互いに互いを認め合う仲である。タルパとして生み出してからはやり合ったことは一度もないし、できないが。
「これで四魔将は全員揃った、かな」
「はっ。四魔将リーダー、アスモを除く四魔将、ここに集結致しましたことを確認。この瞬間を持って、ノマ様にご報告いたします」
俺が四人に視線を向けると、アスモが首部を垂れる。
ずっと俺に付き従ってくれていたメイド長のアスモ。彼女も四魔将の一人であり、与えられた称号は『女王』。四魔将の中では何かに特化しているということは無い。しかし、あらゆる能力やスキルを身につけており、『万能』といえる事こそがアスモの最大の武器である。
この城に住む全てのメイドを束ねるメイド長でありながら、その気になれば、戦闘も、魔法も、軍団の指揮も補える超有能キャラクター。俺の右腕と呼んでも過言ではない。
「よく皆来てくれた。改めて感謝をする」
「今更いいわよ、そういうのは。私達はあんたのタルパであり配下なんだからさ」
「そうそうっ、だから気にしなくていいんだよぉー」
「王の命に従うのが配下の務めだろう?君は王として当然のことをしているだけにすぎない。もっと胸を張りたまえ」
三人ともそれぞれが優しい笑みを浮かべてくる。
「みんなありがとう。……さて、それでは皆が集まったことで、本題に入ろう。俺は今日、目覚めたらこの城の中にある自分の部屋にいたんだ。最初はびっくりした。いきなりアスモの声がはっきり聞けて、姿もばっちり見えてたからな。
俺はこの現象をダイブ成功したかもしれないと思っていた。だがそれは違ったんだ。……アスモ、映像を出せるか」
「はい」
アスモが頷き、指を鳴らす。
すると、アスモの真上の空間に、先ほど俺達が見た外の映像が流れる。
「これは、随分と静かな野原と夜空じゃないか。僕に知るアセロンとは大きな違いがあるね?」
映像を見て、アリアが目を細める。
「ぁあ、そうだ。俺はダイブが成功したのなら、と……アセロンを楽しむために、アスモと一緒に外へ出た。だがご覧の通り、この城の外は、俺の知るアセロンとは異なった世界が拡がっていたんだ。
これを見て、俺は何かしらの理由で、俺達はこの城ごと異世界転移したと結論づけた」
「ちょっと待ちなさいよ! 異世界転移って!? 私達や私達の城がアセロンから別の世界に移動したってこと!?」
驚いた様子で声を荒げるキラ。
確かにその反応は至極当然である。マイやアリアは興味深そうにその映像を眺めていた。
「異世界転移かぁ。まさか、まーくんが夢にまで見ていた事が現実になるなんてねぇー」
「本当だね。色々謎はあるが、実に面白い出来事じゃないか」
「あんた達なんでそんな冷静でいられるわけ!?」
楽しそうに話す二人を見て、キラが目を見開いて突っ込む。
そんな様子を見てアリアがキラの頭に手を当て、宥めるように撫でる。
「落ち着きたまえ、キラ。確かにいきなりすぎるが、何もそこまで驚く事ではない。むしろ、喜ばしい事だろう? ノマはずっと前から僕達と共に異世界に行く事を望んで、妄想していたじゃないか」
「そ、それはそうだけど……」
「慌てても何も起きない。だからこそ、僕達を呼んだのは、これからどうするべきかを話し合うためだね、ノマ?」
「ぁあ、その通りだよアリア。キラも理解してくれたかな」
「……信じ難いけど、あんたの言葉を今更疑うなんてしないわ。それに、驚いただけで別に異世界転移に違和感はないから。ごめんなさいね、話折って。続けていいわよ」
姫雷の言葉を受け、俺は話を続ける。
「いきなりの異世界転移……という驚くべき展開になってしまったわけだけど。これからどうするべきだと思う?皆、それぞれ意見を教えてくれると助かる」
「そうだねぇー。まずはこの世界の情報が何よりかな! 何も知らないで動くのは危険が高すぎるからね!」
ふむ。この世界の情報、か。
確かに転移してきたばかりで、俺達はこの世界について何も知らない。知らないまま下手に動くとこちらが危険に晒される可能性が非常に高くなる、か。
マイの意見は最もだと俺も思った。
「というわけで! 情報収集が真っ先に優先される行為だとマイちゃんは思いまーすっ!」
ぴょんぴょんと自分を主張するマイ。その際に胸が激しく揺れた。胸が、激しく、揺れた。
大事なことなので二回言いました。
「僕からもいいかな、ノマ」
「構わない」
「君が何をしたいかを聞かせてくれるかい?」
「俺が、か」
「そうだ。君の悲願だったろう?異世界転移は。しかも君はノマの姿として我々と共にここにいる。ならば、僕達は君の願いを叶えるのが、この世界で何よりも最優先で行う事じゃないかな、とね」
俺が何をしたいのか、か。
異世界転移がもしできたら、もし叶ったらという妄想はこれまでリアルで沢山行ってきた。
玉座の間にきてからも考えているのだが……叶ってしまった今現在、何をするべきなのか、何から叶えるべきなのか、まだ整理ができていない。
「そう言ってくれるのはありがたいが、すまないアリア。たくさんありすぎて、何を最初にやるべきなのかが纏められないんだ」
「ふむ。それもそうか。いきなり異世界に来て、『夢が叶いました。じゃあ、なにをします?』と言われても沢山あってあわあわしてしまうか……」
納得するように顎に手を当てる仕草をするアリア。
「やっぱり、マイの言う通り最初は情報集めからスタートしていいんじゃないかしら? この世界にどんな種族、どんな国があるのか。私たちの強さはこの世界基準だとどの程度のものなのか。それらを把握してからでも、この世界でやりたい事を考えても遅くないと思うわよ」
「というとー、キラちんも私の意見に賛成って事でいいのかな!?」
「そうね。アリアはどう?」
「僕も情報集めには賛成だよ。何事も無知のまま行動するのは、愚の極みだからね。アスモは?君の意見はあるかい」
「私も今の所、特には意見はございません」
どうやら全員、マイの意見である情報収集に賛成のようだ。
ならば次に行う事は決まったな。
「ひとまず次の俺らの行動はこの世界の情報集めだ。マイ、索敵魔法でこの辺り周辺に生命反応、および人工の建築物がないか確認してくれるか」
「はぁーいっ! 任せてよぉ! 探知魔法オン!」
マイが瞳を閉じ、左手を掲げる。すると、マイを中心に、紫の魔法陣が一枚出現し、空へ浮かび上がる。
マイはあらゆる魔法を使いこなす魔法のスペシャリストであり、どんな魔法も【無】から生み出せてしまうチート能力がある。
今使ったのは、索敵魔法。その名の通り、様々な条件を設定してそれらの居場所を知ることができる便利な魔法である。
しばらくして、マイが目を開ける。同時に魔法陣が消えた。
「ん。軽く索敵をかけたんだけど。生命反応が数十くらいあって密集してる場所があるねー。それにそこの周りにも生命反応がチラホラあったよー」
「数十くらいが密集。国にしては少ないな。つまり、村か集落みたいな所がこの城の近くにある、ということか?」
「ずばり! この城の北西の方角に少し進んだ所に反応ありだよ! 少し空を飛んで軽く視察してこようかー?」
「いや。俺が直接向かう。せっかくの異世界だからな。この城の周りを観察がてら、接触してこの異世界の情報を聞き出そうと思う」
「オッケー。わかったよー」
この城の近くにそう言う場所があるのは助かる。そこで情報を得て、うまくいけば友好関係を築けるかもしれないからな。
「なら早速向かうとしようか。アスモ、一緒に来てくれるか」
「もちろんでございます。ノマ様とならばどこまでもお供致します」
アスモが微笑みを浮かべて返事を返してくる。
「これからお前達に命令を出す。まず、マイ。お前は大至急、この城の防衛魔法を強化、この城に人祓いの結界を張り、防衛に徹しろ」
「りょーかい!」
「アリア。これより俺とアスモが調査へ向かう。その間、この玉座の間をお前が守れ」
「任せたまえ」
「キラ。お前は配下の暗黒騎士達に命じ、城の至る所に警備につかせよ。後は邪竜達はマイの透化魔法を付与させた後に、この城の上空を監視させるのだ」
「わかったわ」
「それでは、四魔将よ!直ちに行動を開始せよ!」
俺の言葉に全員が強く頷くと同時に、玉座の間から三人が転移魔法を使い消える。
「ふぅ。王らしく出来たかな?最後」
「はい。初めてのそのお姿でのご命令。まさしく世界を支配する魔王そのものと見て取れる素晴らしいものでございました」
「ふふ、そっかぁ。魔王ムーブ、か。いいかもしれない」
厨二ごっこはよくリアルでやってたから、演技力には自信がある。この異世界で、素を隠しつつ、威厳ある滅びの魔王として振る舞う魔王ムーブを行うのもいいかもしれない。
言動は魔王らしくするとして、見た目も魔王っぽいからな。
「確か、マイの言ってた反応は北西辺りだったよな」
「そうですね」
「よし、ならいくか!俺たちの初の異世界探索へ!」
「はっ!」
一体どんな種族がいて、どんな村や国があるのか。どんな冒険が待っていて、どんな強敵達がいるのか。
これから起きるおそらく楽しいであろう異世界ライフに、俺は期待に胸を躍らせた。