5話 『構築』
放心したままの爺さんは居間に放置して部屋に戻ってきた。
今日は一日疲れたのでそのまま横のベッドに飛び込みたい気もするが、まだ一仕事ある。
明日は早速ダンジョンに行くつもりなのでデッキを構築しないといけない。
『起動』
そう呟いてデバイスを起動すると、画面にデババトに似たカードが写った。
多分デッキを構築するための画面だろう。
拡大されたカードの画像とその他のカードが一覧になっている。
適当に指でスライドさせてカードを数枚確認する。
ユニットカードやバグカードと行った基本のカード構成は同じだが効果が微妙に異なっている。
初めて見る種類のカードもあるし、説明会で聞いた内容も合わせて少し情報を整理してみるか。
◆デバッグバトルカードゲーム
デバッガーのデバッグ方式を参考にして作られたTCGだ。
元々はデバッガ達がデバッグ用の戦術を練るための道具がベースらしい。
αレギュとβレギュでは、もはや全く別のゲームと言ってもいいくらいだが
基本のカードはどちらのルールでも使用可能だ。
◆αレギュレーション
α時代のデバッグ方式をカードゲーム化したもので、カードの種類は以下の5種類だ。
カードの他には魔石カウンターも使用する。
・モンスターカード
・バグカード
・デバッガーカード
・修正パッチカード
・装備カード
基本的な流れは、モンスターを致命的にバグらせて作ったチートモンスターか、バグモンスターを倒し続けてチート化させたデバッガーで相手のデバッガーを倒せば勝利だ。
相手のモンスターを違う方向にバグらせたり、修正パッチで直接妨害することも考える必要がある。
装備カードは序盤の強化にはなるが、バグっていくにつれて効果が薄れるので俺はあまり使っていない。
◆βレギュレーション
β時代では、モンスターは致命的にバグらなくなったが、デバッガーもチート化できず無力のため、主に地形や魔石を利用したスキル等、戦術的なデバッグが行われていた。
そのため、以下のカードの追加と廃止があった。
『追加カード』
・地形カード
・スキルカード
『廃止カード』
・デバッガーカード
モンスターを倒した回数で勝敗が決まる。
バグる回数が制限されているので圧倒的な火力で蹂躙することはできないが、地形やスキルの組み合わせが相乗効果を生むので、戦略性が向上しておりゲーム性は向上している。
しかし、世の中はαデバッガーへの憧れや蹂躙できた際の爽快感が好まれているので、αレギュの方が圧倒的に人気が高く、βレギュでの大会はあまり行われていない。
多分、デバッガーカードは実際の人物が描かれているのも人気の理由だろう。
肖像権については世界の混乱に任せてスルーされているようだ。
当然、父さんや母さんのカードもある。
ちなみに、俺のデッキと相性が良いのでメインデッキで使用している。
◆ダンジョンデバッグ
説明によると、モンスターで戦闘を行いながら進んでいき、最奥のコアを制圧するか、DMを倒すと勝利だ。
尚、βの終了で魔石が消滅しているので従来のスキルは使用できないが、
モンスター自身のエネルギーをダンジョンに作用させる『ダンジョンスキル』が存在するようだ。
また、デバッガーカード、修正パッチカード、装備カードはデバイスに登録されていない。
そりゃあ、デバイス上はカードのように見えるが、実際は現実のダンジョンなので当たり前だ。
細かい感覚は実際に行って確かめる必要があるだろう。
さて、何はともあれデッキを構築しないと話にならない。
手元にあるカードを確認しよう。