表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

41/59

40話 『計画』 (2021年8月11日)

 昨日は協会に少女を送り届けたが、今日も再び双子ダンジョンに来ている。

 『解放』は2回目なのもあって、後処理はスムーズに対応できた。

 主にアズサが……ではあるが。

 

「双子って話だともう一人も『解放』してあげなきゃって気になるわね」

「そうだな。しかし、今度は1人ずつかな?」


 2対2のデバッグになるパターンは珍しいと聞いている。

 そのため、今回も継続して2対2になる可能性もあるが、恐らく次は残りの女の子1人のパターンになるだろう。

 

「4人家族って話だから、残り3人ね。今度は3人同時ってことはないわよね」

「そう言うと発生するフラグじゃないか。 まさか、発生させようとしてる?」


 ルール上は何人でも可能だから、可能性だけは0ではないだろう。

 ただ、前例があるとは聞いていないからほぼないと思うが。


「じゃ、とりあえず2人同時に触れて、残った方が待機ってことにしない?」

「了解。アズサが残ったらちゃんと家を使いなよ」

 

 家で休む話は、このダンジョンに入るときにも言おうと思っていたことだが、結局2人同時にデバッグが可能とわかって棚上げしていた。

 そう確認してアズサと共にダンジョンボードに触れる。

 いつもの通り黒い光に包まれると、メインコアの部屋に転移したのが判った。

 どうやら、僅かに俺が先に触れたのか俺がデバッグすることになったようだ。


『……ナギ。フラグって本当にあるのね』

「え?」


 デバイスからアズサの声が聞こえた。

 横を見ると確かにメインコアの部屋の壁が無く、もう一つのメインコアとアズサの姿が見える。

 なるほど。結局2対2のままか。

 ……と思ったが、アズサの言った言葉に違和感を感じた。

 直前では、2対2になる話はしていなかった。

 デバイスを見るとその違和感の正体に簡単に気付く。

 それが意味するのは――


「2対3か……いいじゃないか。自信はあるだろ?」

『当然よ。蹴散らしてあげましょ』


 1対2なら流石に厳しいが、2対3程度の不利ならはじき返せる自信がある。

 なによりアズサと共にデバッグして来て、デッキ構成や考え方までお互いに理解している。

 2人でいれば一般人には負ける気が全くしない。


「じゃ、やるか」

『OKよ』


「『勝負開始(デバッグスタート)』」



  ◇  ◇  ◇



 DMの3人は、予想通りの3人だった。

 双子の片割れの少女、そして大人の男性と女性。

 ほぼ間違いなく双子の両親だろう。

 相変わらずデバッグ中は3人とも無表情で感情が見えては来ない。

 しかし、双子が2人同時に出現、また双子の片方がいなくなったら家族全員でと変わってくるのは、なにかしらの感情面がDMの出現パターンに影響を及ぼしている気がしてならない。


「なぁ、アズサ。明日は用事があるからデバッグは休憩で頼む」


 明日は部活の合宿だ。

 つい最近までデバッグばかりで日付ごと忘れていたが、朝にシンジからメッセージが入っていたので気づいた。

 シンジの夏期講習も今日で終わりらしい。

 合宿自体は夜からだが、夜まではシンジが息抜きをしたいらしく遊びに誘われている。


『奇遇ね。私も言おうと思ってたけど明日は用事があるのよ』


 デバイスからアズサの声が聞こえる。

 雑談に興じているが、今もダンジョンデバッグ中だ。

 2対3の戦いも慣れてきて、既に周回に入っている。

 2対3はやや大変だが捌けないこともない。

 デババトの大会等で強者と対戦している緊張感と比べると、息抜きしながらでもなんとかなるほど安定している。


「そっか、じゃあお盆はどうなる?」

『《クラーケン》で《マーマン親衛隊》に《反撃》。……んー、13日と14日は親戚とか諸々の集まりがあるかな』


 アズサがまた前線でモンスターを蹴散らしていた。

 あれだけ大きい家だと人が集まってくるのだろう。


「《サンダー・ドラゴン》、《感電》使用」


 DMが3人もいると、いくらアズサの機動力が高くても俺も進軍する必要が出てくる。

 《サンダー・ドラゴン》から極大の雷が放たれ、攻撃してきたハーピーの集団をまとめて叩き落した。

 あぁ、これは6が出たな。

 ランダムダメージは1~6だ。

 デババトと同じくランダム値はサイコロと同じ確率なので判りやすい。


「じゃあ、次に会うのは15日かな。……なぁ、アズサ、15日になったら行ってみたいダンジョンがあるんだ。時期的にも丁度良いしね」

『行ってみたいダンジョン? ……え、もしかして』


 アズサにも予想がついたらしい。

 そうだ、デッキはほぼ完成している。

 多少の改良の余地はあるだろうが、妥協で入っているカードは既にない。

 時期としてはお盆期間であり、協会の人員も多くは休暇になっているため俺達がしようとしていることにも都合が良い。

 そう、アズサと最初から話していた最終目標――


「あぁ、スズのところに行ってみよう」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ