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34話 『用事』 (2021年8月3日)

 昨日はアカネの言葉により色々判明した。

 アカネの言葉の解読は困難であったが、ダンジョンの裏ではモンスターを戦わせるゲームが流行っており、それを統括しているのがスズだとかなんとか。

 少なくとも、特徴を確認する限りにおいては、『すずおねえちゃん』はスズで間違いなさそうだ。 


 アカネの負担にならないレベルで今後も調査を進めるらしい。

 調査もあるが、守秘義務の説明、その他の事務処理等諸々の手続きがあるようで、正式に解放(・・)されるのは1ヵ月程後とのことだ。

 また遊びに来る約束をアカネとして帰ってきた。

 尚、母さんと部長も探してみたが、件の幼稚園ダンジョンの調査やら、別の重要事項が発生しているらしく会うことはできなかった。

 ちなみに、帰りもアズサが呼んだ車であったため、再び緊張の場を経験した。


 今は、再び『双子ダンジョン』にやってきている。

 既に何周か周回しており、今回が午前の最後のつもりだ。


「あ、アズサ。条件が揃っているから試してみる」

『了解。うまくいくといいわね』

 

 本来ならば勝負の中盤だが、相手に1つの隙があった。

 仕組み的にはうまくいくはずの奇襲戦法だが、初めて試してみるのでうまくいくかは賭けだ。


「《竜人が封印されしアミュレット》使用。《八咫烏(やたがらす)》に使用」


 八咫烏は大型で3本脚のカラスだ。

 性能はなかなか高いユニットだが今はそれ以外の条件が重要だ。

 バグってバグ進行度が10になっており、メインコアにその1体しかいない。

 《竜人が封印されしアミュレット》が砕け散るのがなんとも言えない気持ちにはなるが、デバッグ後は元に戻るのは確認しているので今は割り切っている。

 デバイスで確認すると《八咫烏》が消えたのを確認できた。

 《竜人が封印されしアミュレット》は、攻防一体で使用できるが、攻撃単体でも使用可能だった。

 また、倒せるのはバグ進行度が10のユニットだけらしい。


「《ストーム・ペガサス》の特殊能力で進軍」


 すると、《ストーム・ペガサス》の目の前の空間が歪み、歪みの先には不規則に回転する立方体が映し出される。

 《ストーム・ペガサス》は俺が跨ったままその空間に飛び込む。

 到着したのは相手のメインコアだ。

 《ストーム・ペガサス》の特殊能力は、空いている地形に移動が可能とただそれだけが、メインコアは不可能との制約はない。

 あっけない結果ではあるが、相手のメインコアに居るということは一つの結果を意味する。


「うまくいったな。『走破』完了だ」


 相手のDMはいない。

 しかし、2つのメインコアは既にカードセットへ変化している。

 制圧した証だ。


『普段の半分の時間で終わったわね。ちょっと早いけどお昼休憩にしましょ』

「了解」


 2つのカードセットを拾い、出口へと足を運ぶ。



  ◇  ◇  ◇



「インドカレーもいいけど、家のカレーも美味しいわね。やっぱり何か隠し味をいれるの? チョコレートとか」


 アズサが俺の部屋でカレーを食べている。

 一昨日焼きそばを作った時の反応で予想していたが、家で食べる昼食にハマってしまったようだ。

 アズサは買い物することも考えていたようが、丁度昨日作ったカレーが余って鍋ごと冷蔵庫に入れていたのでそれを温め直して振舞っている。

 昨日は色々なことがあって衝撃を受けたので、気分転換がてらにいつもよりこだわって作ってしまった。

 ちなみに爺さんは全く作らない。

 そもそも、いつも散歩がてらに食事をしてくるようで家でも食べているのを見たことがない。

 その点、「飯はまだかのう」とかたまに言ってくるから質が悪い。その場合は全スルーだ。


「入れるのはコーヒーとヨーグルトだね。持論だけど甘みはいらないと思ってる。でも、アズサは普段もっと美味しいカレー食べてるんじゃない?」

「え? えっと…………それは、そうだけど……。でも、普通のが食べたくて自分で作ったりするわよ。今度は何か作るわね」


 そういえば、アズサには変に家のことを隠そうとする癖があったな。

 そのくせ、必要とあればコネやらなにやらは簡単に使ってくるので全く隠せていないのだが。

 まぁ、あえて突っ込む必要もないのでそこは見て見ぬ振りをする。


 ブーブーブー。


「あれ? メールね」


 メッセージアプリではなくてメールらしい。

 そもそも、自分のスマホに登録されていたのも電話番号とメールアドレスだった。

 何か理由があるのかもしれないが今度聞いてみよう。


「ねぇ、ナギ。明日は休みにしてくれない。ちょっと用事ができてしまって」

「え……うん。いいけど」


 メールを見たアズサがやたら嬉しそうな顔をしている。

 なんとなく気にはなるが、あえて何も聞かずに頷いた。 

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