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11話 『再会』

 出口を潜ると、入る時とは逆に白い光に包まれる。

 そして浮遊感を感じると、段々と光も薄くなり重力も感じ始める。

 外の熱気も感じ始めたので、特に何事もなく外に出られるようだ。


 白い光が消え視界に光景が戻ると、目の前に何かが――


「え! ちょっ! ……うへっ!」


 突然何もない空間に召喚されたのか、本来その場所にいた何かを押しのけたようだ。……何かというのも適切ではない、誰かだ。

 目の前で膝を追って倒れ込んでいる人――女の子がいる。年の頃は自分より少し年下といったところか。


「……すまない。急に飛ばされて……大丈夫か?」


 俺が悪いわけではないが、反射的に謝罪の言葉がでた。


「……いいえ、大丈夫よ。急に現れたから吃驚して。」


 女の子はゆっくりと立ち上がると服の汚れを気にしている。

 白い半袖のブラウスと、黒系統のズボン、肩掛けの大きめの茶色い鞄を持った格好をしている。

 長い髪も後ろで1つにまとめており動きやすそうな格好だ。

 一通り汚れを払い落としたのか、こちらに顔を向けてくる。

 鋭めの目つきが特徴的だが整った顔をしている。

 が、どうにも見覚えがある――いや、昨日会ったばかりだ。


「確か、アズサだったか」

「……そういうアンタは、小瀬が――――ナギ、だったわね! なんで先にいるのよ!」


 いきなり女の子を呼び捨てるのはまずかったか。

 ユキから名前を聞いて以来、頭の中で固定されていたためつい口に出てしまった。

 が、アズサも名前で返してきたし遠慮する必要はないだろう。


「あぁ、学校か……。うん……サボった!!」

「サボ……」


 今更隠しても仕方が無いので堂々と答えると、アズサは勢いに怯んだのか狼狽えている。


「――そういうアズサはどうなんだ?」


 体感的にも昼頃のはずだ。自分のことは棚に上げたとしてもこの時間に学生程の歳の人間がこの辺りにいるのは違和感がある。

 ズボンからスマホを取り出して時間を確認すると実際12時手前だった。

 体感通りではあるが、3時間近くダンジョンに居たことになる。もっと効率よく回りたいものだが。


「……早退……した。ちょっと周りの空気にあてられて……具合が悪くなって……その……」


 戸惑いながら答えるところをみると、早退自体は嘘ではないように聞こえる。

 だが、罪悪感が混ざったような歯切れの悪い言葉や、現在の恰好から考えるとその後の理由は俺と同じだろう。


「そりゃあ気になるよな……」

「そう……よねっ! そうよ、アンタもう潜ったのよね。どうだったの? 教えなさいよ!」


 どうやら罪悪感には踏ん切りをつけたようで、食い気味に問いただしてくる。

 どう答えたものかと逡巡していると、ふと意識が別の事に気をとられた。

 質問に応えるのは特に問題はない。

 だが、ダンジョンを走破し終わったことで冷静になり、今まで気にしていなかった重要なことに気づいた。

 目の前のアズサの様子を見るとすぐには解放してくれそうにない。

 仕方がないので提案してみる。


「なぁ……」

「ん? なに?」

「……とりあえずそれは後にして、まずは飯を食いにいかないか?」

 

 さらっと女の子を誘ってしまったが、どうやら体が限界で心の機微なんて考える余裕はなかった。


 ――それもそのはずだ。昨日の昼から何かを口にした覚えがない。

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