63.孤児院(大地の光)訪問だわ。
「で、リョウさんはどちらに行くんで?」
ツバイがリョウに質問する。
「歓楽街に在る孤児院に行こうと思って」
「え?オイラも孤児院にいくんでさぁ」
「ツバイさんも?」
「へい、オイラその孤児院出身なんで」
「そうなんですね、私は実は、、」
リョウは憲兵隊長から聞いた、孤児院のひとさらい事件の話をツバイにした。
「へい、その話なら聞いておりやすオイラも頭を痛めてるんで、、」
「この国では、借金奴隷と犯罪奴隷以外禁止でしょ?更に15歳以下は奴隷に出来ないはず」
「どんな事にも裏道ってのが存在するんでさぁ」
「何か抜け道があるって事だね」
「へい、仰る通りで」
どの世界でも、本当に悪人と言う奴は悪事を働く事にかけては頭が回るんだなぁーとリョウは思う。
乗り合い馬車が止まりリョウ達は馬車から降りる。
「孤児院にはオイラが案内します」
「え?有難うございますw」
「ついでなんで気にしないでくだせぇ」
ツバイは頬をかきながら、照れる。
歓楽街も今の時間はひっそりしている。数件の食堂が開いているだけだ。他の店は大体夕方から店が開きだし賑やかになると言う。
ネオンを伴い一時の男女の儚い夢が交わる場所、良き夢も又悪夢も同時に見れる魔境と言った所か。
その歓楽街から少し外れた所にポツンと2階建ての建物があった。薄汚れた外壁に所処塗装が剥げて、廃墟と言われたら納得出来る程の外観をしている。
「ここが孤児院の大地の光でさぁ」
ツバイはリョウを伴い孤児院へとやって来た。
「アマンダさん居るかい?」
ツバイが孤児院のドアをノックしながら、声をかける。
「はい~どちら様ですか?」
中から50代位とおぼしきシスターの女性が出て来た。
「オイラだよ」
「あら、ツバイ君いらっしゃい」
「今日は知り合いもいるんだ、一緒に中に入っても大丈夫かい?」
ツバイはリョウの方を振り向き、シスターに紹介する。
「どうも、リョウと言いますよろしく」
「もちろんどうぞ、見た感じと一緒で汚い所ですが、、」
「さぁ、リョウさんどうぞ入っておくんなさい」
「すいません、お邪魔します」
シスターとツバイに促されて中へとはいる。
「一応こちらが院長室です」
古い革貼りの3人掛けのソファーが2脚にテーブルのみが置かれた部屋へとリョウとツバイは通された。
「今、お茶を入れて来ますからお待ち下さい」
「あ、お構い無く」
「いえそれくらいさせて下さいw」
シスターは部屋を出て行った。
この院長室の窓から猫の額程の中庭がみえる。
子供達がその中庭の畑らしき所で作業しているのがみえる。
「リョウさんは畑仕事はやった事ありやすかい?」
「小さい時に少し祖父の手伝いでした事ありますが、遊びみたいな物ですよ」
小さい時に祖父の畑でスコップを握りしめ、サツマイモを掘り出していた思い出が甦る。
「ここでは、生きる為に畑仕事をするんですが、オイラは遊びたくて良くさぼってたなぁ~w」
中庭を見ながらツバイが微笑んでいる。きっと懐かしい情景が浮かんでいるのだろう。
「ツバイ君はやんちゃだったからねw」
シスターが丁度二人の会話を聞いたみたいで、笑いながらお茶を運んで来た。
「へえ~ツバイさんはやんちゃだったんですね」
「そうなのよ~手を焼いて困ったもんだったわw」
「どんなやんちゃしてたんですか?」
「そうね~勝手にお店の商品を取ってきたり、食堂で無銭飲食でしょ?後女の子のシャワーを覗いたり、、」
「ちょ!アマンダさん喋り過ぎでさぁ~」
シスターの暴露話を慌てて止めるツバイ。
「え~もっと聞きたかったなぁ~」
「リョウさんこれ以上は勘弁してくだせぇ」
ツバイは泣きそうな顔でリョウに懇願する。
「「あははははぁ~」」
リョウとシスターが目を合わせ同時に笑う。
「ちぇ~様になんねでさぁ~」
ツバイは顔を少し赤らめ、二人を睨むのだった。




