61.階層BOSS戦なのだわ
ボス部屋の扉を開く。「ギギーィ」無機質な扉の音が辺りに響く。
全員が中に入ると「バタン」扉が閉まる。これでボスを倒さない限り扉は開かない。
部屋の中は暗かったのに、扉が閉まった途端明るくなる。
「どういう仕組みなのかしら?」
リョウがダンジョンの構造に興味を抱く。
「ガオオオン!」
獣の咆哮という可愛いものではない。もう怪獣の咆哮と言われた方が納得できる。それくらいの大音響で響きわたるボスの声。
「来るぞ!」
ライドの声に全員が身構える。階層ボスのクレイジーアクリス、その身体のサイズはブラッドアクリスの優に4倍にはなる。
「本当に怪獣ね、皆よく立ち向かうやね」
リョウはこの世界の冒険者達に感心する、世界の違いと言うか何と言うか。
「ボディーエクストラ(身体能力向上)」「アボイトエクストラ(回避能力向上)」「アタックエクストラ(攻撃能力向上)」「ディフェンスエクストラ(防御能力向上)」
リョウは考えられるバフをメンバーにかける。
「リョウ殿ありがとう」
「リョウさん頼りになる~」
「何か力が沸いて来る感じだな!」
「私はサポートするから、皆思い切り張り切って」
リョウはこのパーティーメンバーのレベルを上げるつもりなので、なるべく手は出さないつもりなのだ。
「ガオオオン!」
クレイジーアクリスが(獣の咆哮)と言う技をだす。
まあ、威圧の一種なのだがクレイジーアクリスともなると威力は高い。リョウが防御のバフをかけていなければ、ライドは兎も角マルザとイメルダはきつかっただろう。
「マルザは回り込め!」「イメルダは側面だ!」
ライドの指示で展開する。
クレイジーアクリスの角が光出した。
「サンダーストーム(雷の嵐)がくるぞ!」
ライドが声を張り上げる。つかさずマルザとイメルダが距離をとる。
「ガガガガドン!!!」
すると二人のいた場所に激しい雷の竜巻が起こる。
「ウインドカッタ(風の刃)」
リョウがクレイジーアクリスの後ろ足に風魔法を放つ。
「ギギーヤァー」
クレイジーアクリスが声を上げる。しかし流石の巨体だ、皮も固いのか傷を少しつけた程度だった。
「今だ!喰らえ!」
ライドバトルアックスで、クレイジーアクリスの片方の角に切りかかる。
「バキキっ」
クレイジーアクリスの右側の角が1/3吹き飛ぶ。
「隙あり!」
マルザがリョウのつけた傷の所を攻撃する。
「はぁ~ドリァ~ァ」
イメルダが剣を構え側面から攻撃する。
「ガァオオオン!」
クレイジーアクリスの角が青色に染まる。
「来るわよ、三人共に回避!」
リョウが三人の教えると、素早く回避行動を取る。
「バン、パキパキ」
三人の居た場所が今度は凍り出した。
「アイスランス(凍りの槍)みたいだわ」
リョウが呟く。
「なら、ファイヤーランス(炎の槍)」を唱え、自分やマルザのつけた方の、クレイジーアクリスの足を狙う。
「ギャーヤァ!」
クレイジーアクリスの後ろ足が千切れ体勢が崩れる。
「今だイメルダ!ライド殿!」
マルザが声をかける。イメルダがクレイジーアクリスの首を狙い、ライドが眉間を狙う。
「ギギャガガガ!」
クレイジーアクリスもその巨大で鋭利な角で応戦するが、ライドとイメルダが一歩早かった。
「バトルクラッシュ!」
「グランスラッシュ!」
ライドとイメルダのそれぞれ出した必殺技がクレイジーアクリスの眉間と首を捕らえた。
「ズドン!」
ついにクレイジーアクリスが倒れた。
「ロージングスラッシュ!」
マルザが跳躍してクレイジーアクリスの首に攻撃を加える。
「ギヤガガガ」
クレイジーアクリスは絶命した。
「お疲れ様、良くやったわね」
リョウが三人を労いの言葉をかける。
「殆どリョウ殿にかけて貰ったバフのおかげだ」
「本当に、凄い威力だったね」
「まさか、階層ボス戦でこの程度の傷で済む何てな。ありがたいこった!」
三人共リョウのバフに感謝を述べる。
「仲間なんだからお礼はいらないわ、それに出来たら踏破してない階層をこのパーティーで探索&攻略したいし、成るべく皆に経験値獲得して貰いたいのよ」
リョウが笑顔で伝える。
「まあ、有難い話しだわ」
イメルダが微笑む。イメルダ達とてレベルを上げれるなら、上げたいのが本音だしリョウがいればリスクは下がる。
「だから何回かこのクレイジーアクリスを倒しに来たいのよ」
「成る程、私達のレベリングの一環と言うわけなのだな」
マルザがリョウの意図を瞬時に理解してくれた。
「そう言う事、後は資金稼ぎにも成るからね」
リョウは笑いながら頷く。
「俺に不満はねぇぜ」
「私も大丈夫だ」
「私も文句なし~」
ライド、マルザ、イメルダがリョウの提案に賛成する。
「じゃ~今月中に何回かクレイジーアクリスを倒しましょう」
リョウは話しのわかるメンバーで良かったと思った。
いくら実力があってもやはり、年下に指示されるのは嫌がる冒険者も多いと聞くからだ。
「とりあえず、今日は戻ろうか?」
「「「賛成!」」」
全員一致で地上に帰る事にする。因みにボス部屋は一日経つと、ボスが復活するらしい。
「やっぱりダンジョンの仕組みは謎だわ」
リョウはダンジョンの仕組みに不思議な感覚を覚えながら、メンバー達と地上に戻るのだった。




