57.憲兵隊長の悩みなのだわ。
憲兵隊の詰所に到着して用件を告げると、待合室みたいな一室に通される。
しばらくすると、ドアがノックされ荷物を抱えた隊長ライルが入ってきた。
「リョウ君昨日待っていたんだよ?」
「すいません、宿屋を決めたり街を散策したりですっかり忘れてまして」
リョウは平謝りする。
「ハッハッハ、その辺りは年相応と言うか、何と言うかだな」
どうやら余り怒って無い様子にリョウは胸を撫で下ろす。
「とりあえずこの書類にサインしてくれるかな?」
ライルが書類をリョウに渡す。結構な枚数がある。淡々とサインをしてライルに返す。
「じゃ~盗賊の討伐の懸賞金光貨1枚(100万)に金貨8枚(80万)大銀貨5枚(5万)だ」
「え?以外に高いですね」
「今回捕まえた盗賊は全員生きてる事と、褒賞金も上乗せされているぞ」
ライルから渡された一枚の紙に詳しい明細が載っていた。
「一番の懸賞金はレッドブァファローの幹部?」
「そうだ、今回捕まえた中で一番の懸賞金だな」
「レッドブァファローって?」
「アルメンで昔からある犯罪組織だ、なかなか全貌が把握できてなかったが今回幹部を捕まえれた事がでかい、リョウ君は本当にお手柄だった」
憲兵隊長として色々思う事もあるのだろう、笑顔の中にも厳しい目を漂わせている。
「最近子供の獣人の孤児が失踪する事件が多発していてな」
「子供の獣人の孤児がですか?」
「うむ、リョウ君はもう歓楽街に行ったかい?」
「いえ、鍛冶工房街や魔道具区画しかまだ行って無いですけど?」
「そうか、歓楽街の少し外れに教会が運営する孤児院があってな、その孤児院の獣人の子供が3人いなくなってるんだ」
「何でまだ歓楽街に教会と孤児院が?」
「遥か昔、まだ街として発展していない頃に教会が出来たそうだ。それから、区画整理で歓楽街が出来たと聞いている」
「成る程、教会が先に建った訳ですかぁ~」
街として発展するなら区画で分けた方が良く、目的に合わせて鍛冶工房はココ、歓楽街はココという風に、区画で特色を考えるのは当たり前だ。
「けど区画整理の時とかに、マシな所に移動すれば良かったんじゃ~?」
「それが、歓楽街だからか捨て子が多かったみたいなでな、育てられずとか母が亡くなったとか、冒険者と一緒に街を去ったとか、、な」
歓楽街の一種特殊な環境だからか、覚めない夢をみたのか?一夜限りの幻の希望にすがってしまったのか?
リョウは誰かが言っていた「人の見る夢と書いて=イにんべんに夢(儚い)はかないと詠む」を思い出していた。
「いつの世も、どこの世界でも、一夜の男女の見る夢は儚いもの、、かぁ~」
リョウは誰ともなくそう呟く。
「話しを戻すが、その孤児失踪にレッドブァファローが関与しているらしい」
「許せませんね」
「本当にな!だから今回捕まえた幹部が最重視されているのだよ」
何も知らない無垢な子供を拐う等許せないわ!
リョウは心の中でレッドブァファローなる組織に怒りの炎を燃やすのだった。
そして、ひとしきりライルと話しをして憲兵隊の詰所を後にした。
食事を食べ終わり食堂でリョウの帰りを待っていた三人は、リョウが帰ってくるなり犯罪組織レッドブァファローの事で怒っている話しを聞いた。
「子供を何だと思っているのか!」
「そうよ、本当にゆるせない!」
「胸糞わりー奴らだな!」
三者三様に怒っていた。リョウはこの三人と一時的にせよ、パーティーを組んだ事を喜んだ。




