42.旅立つ前の準備期間だわ。
リョウは冒険者ギルドの酒場に行った。ウル達の状況をナールに確認するためだ。
「エールお待たせしました」カノンの母のマリが給仕をして接客している。元々カノンから働き者だと聞いている、持ち前の愛嬌も発揮しながら注文をさばいている。
「おまたせ~です」ウルの妹のリリもマリに習い給仕をしている。マリ程には動けて無いが一生懸命だ。
「リリちゃん可愛いな」「ゆっくりで良いんだよ?」強面の冒険者達がまるで娘を見るような目付きで微笑んでいる。
「そっか冒険者は定住以外家庭を持つことはマレってバレルさん言ってたな」
リョウは草原の銀風のリーダーブレルの話を思い返していた。
家庭を持たない冒険者達がリリの事を擬似的に娘と思っているのだろう。
これならマリ共々上手くやって行けるだろう。
リョウは厨房の中に入る。
厨房の中では、ナールの指示により、ウルとカノンが各々調理や出来上がった料理を厨房と酒場の間のカウンターへと運んだりしている。
元々料理を作ったり、盗賊紛いの身のこなしで素早く動いている。
余談だが、ウル達が野菜等盗んでいた商店のおやじには、ギルドマスターとナールがウル達と赴き盗んだ品物の代金をギルドマスターが立て替えて、謝罪をして許して貰っている。 立て替えた代金は今後のウル達の給料から天引きするので、落ち着いたらしい。
忙しいそうなのでナールやウル達に声をかけずに酒場を後にするリョウ。
「ナールさんに状況聴かなくても、これなら大丈夫そうね」
リョウは酒場を出て、ギルドの受付に行く。
今日は天敵の受付嬢は居らず、男の職員が座っていた。
「あの~図書の閲覧したいんですが?」
「はい、図書の利用料金は鉄貨5枚になります」
「では、これで」
「はい確かに、図書室の場所はこのカウンターを曲がって右ですので」
「わかりました」
なんとも坦々としたやり取りであるが、本来はこんな物なのだろう。
リョウは図書室に向かう。何の為に図書の閲覧をするのか?この世界を知る為である。
リョウはこの世界にきて、この場所しか知らなかったのだ、この場所に根付くつもりなら知らなくとも良いかも?だが、クラインと恋人になれる事が無いとわかった以上、この場所にとどまる事はない。その為にこの世界を知る事が最も重要なのだ。
図書室に入る。中は元の世界の学校の図書室位の広さだ。公共施設の図書館の様に広大ではない。
「さてと、世界地図とかないのかしら?」
リョウは棚を順番に調べていった。
そして意外な人物を見つける。草原の銀風のタンク役のハリーだ。
「あの人苦手なんだよね~あまり喋らないし、、」
草原の銀風のメンバーとは仲が良いとは、自分では思っていて話もするのだが、唯一ハリーだけは必要時以外喋らないメンバーだと言える。
「いいや、ハリーも何か読んでるしそっとしておくか」
リョウは再びこの世界の地図等探すのだった。




