38.乙女♂の心は複雑怪奇だわ。
厨房の中で食事を取った皆が食べ終わった皿をせっせと洗うリョウ。
今日はバイキング形式で所謂セルフサービスになっている。置いてる皿に置いてる料理を乗せて好きな様に食べて、食べ終わったら返却口に返す。
時間が空いた者から食事をしている為、食事する人達の列は未だ途切れていない。
「はぁ~テータさんの耳にも当然入ってるよね~私の事」
本日何回かのため息を溢すリョウ。
「そんな気になるなら、直接聞いてこいよ」
ウルがリョウのそんな姿をみかねて提案する。
「え~それで避けられたりしたら、、もう私立ち直れないもん!」
「もん!じゃ~ね~よ。たく、傷つき易い乙女かお前」
「乙女ですけど何か?」
「お前一応男だろうが!」
「まあ、まあとりあえずその辺で」
ウルとリョウの言い合いにナールが二人を落ち着かせる。
「リョウさんは普段結構強気なのに、恋愛とかは弱気何ですねw」
追加の料理を出して戻ってきたカノンが意外そうに言う。
「そりゃ~ねえ~私だってボインキュボンの魅惑的な身体なら強気で行くわよ」
自分のスレンダーな身体を見ながら更にため息を溢す。
「その前に付いてる物付いてるだろうお前!」
ウルが又捲し立てる。
「あぁ~又ウルが虐めてくる~」
両手で顔を覆い厨房から走り出そうとした。
走り出そうとしてナールに止められた。
「まだ仕事があるんで、逃がしませんよ?」
「チッ」リョウが舌打ちをする。
「お前油断も隙も出来ね~な!」
ウルが冷ややかに言う。
「意外に余裕ありそうですね」
カノンは爽やかな笑顔だ。
リョウは何故バレたのか少し不思議に思いナールの顔を見た。
「ギルドマスターから注意事項として聞いてますw」
「くっそ~あのおやじめ~」リョウはギルドマスターの顔を思い浮かべて苦々しい顔になった。
★★★★その頃★★
「くしゅん」
「おや?ギルドマスター風邪か?」
「いや、大丈夫だ少し鼻がムズムズしただけだ、後どれくらいだ?」
「もう残り僅かです」
近くにいた冒険者が答える。
あれだけ大量のゴブリンも残り30匹位になっていた。
もう辺りが少し暗くなり日が沈みかけている。
町は今日一日は商店やらは閉めておくように通達されているせいか、普段の活気はなく冒険者や騎士団、ギルド関係者ばかりで一般の者は出歩いてはいない。
「よくよく考えたら本当に奇跡だよね」
草原の銀風の魔法使いジャンがギルドマスターに声をかける。
「そうだな、幾つもの不測の事態があったからな、そこに転がっているゴブリンが俺達だったとしても不思議はねぇ~な」
「リョウ君に感謝だね、このままこの町に居着いてくれたらギルドマスターも安心だよね」
「、、、そうだな」
何やら考える素振りをみせ、ジャンの言葉に頷く。
「多分あいつはこの町には居着く事はねぇな」
ギルドマスターの呟きに気づく者はなく、風に紛れて消えていった。




