37.油断大敵、火がぼうぼうだわ。
皆がゴブリンの死体から魔石を取ったり、死体を焼いて処分したりしている。この数を放置など出来ないし、万が一ゴブリンゾンビにでも成った日には悪夢だからだ。
何故悪夢か?その数もさることながら、只でさえ異臭を放つゴブリンが、腐った身体になり更に悪臭を放つ存在にクラスUPするのだから。
「いや~凄いわぁ~」
リョウが何やら薄汚れた布を木の枝で挟みながら、呟く。
「どうした?」「何が凄いんだい?」
ギルドマスターと草原の銀風の魔法使いのジャンがリョウの言葉に反応する。
「ん~この布の匂い嗅いで見てよ」
リョウは木の枝で挟んだ薄汚れた布を二人の前に近付ける。
「んな!くさ!」「く、くさい、、!」
二人は鼻をつまみ薄汚れた布から距離を取る。
「でしょう?」
リョウはですよね~って感じの憎たらしい、にやけ顔を二人に披露する。
「一体何だこれ!」
リョウのにやけ顔を腹立たしく思いながら、ギルドマスターが尋ねる。
「ゴブリンの腰布」リョウの何気ない告白に二人は「ほわ?」「え??」言葉にならなく唖然と立ち竦む。
「汚いからクリーナー(汚れ落とし)の魔法を使ったんだけど、臭いとか全然取れないの凄くない?ビックリだよ!」
「ゴン」ギルドマスターの拳がリョウの頭に落ちた。
「痛!何するの?」リョウは頭をさすりながら、ギルドマスターを睨む。
ギルドマスターもリョウを睨んでいた。
「この忙しい時に遊んでんじゃ~ねぇよ!」
「実験なんだもん、遊んでないもん」
リョウの屁理屈にもならない子供の言い訳を聴いたギルドマスターは更に拳を握る。
咄嗟にジャンを振り返るが、ジャンも庇えませんよ?とばかりに両手を上に首を振る。
「ジャンさんならこの崇高な実験をわかってくれると思ったのにぃ~え~ん」
リョウはとても悲しい顔をして走り出そうとした。
走り出そうとして「ガッ」ギルドマスターに首根っこを捕まれる。
「お前どさくさに紛れ逃げるつもりだな?本当に恐ろしい奴だな!」
「チッ」リョウの舌うちに「ゴン」再びギルドマスターの拳がリョウの頭に落ちた。
「お前は食事の配膳でも手伝ってろ!」とナールの所迄引き摺られる。
ギルドマスターがナールに事情を話、リョウを厨房に置いて行く。
「ベ~だ」ギルドマスターの後ろ姿に舌を出してあっかんべーをするリョウ。
「お前は何処の子供だよ~」
と、呆れる様に厨房で料理を手伝っていたウルに言われる。
「リョウさんらしい」
カノンは鍋をかき混ぜながら微笑んだ。
「まぁ、とりあえず殲滅作戦無事に終わっておめでとうだね」
ナールがリョウにそう言いながら、冷たい果汁水を入れてくれた。冷たくて甘酸っぱくて美味しい。元の世界でいったら、オレンジと桃の搾り汁を水で薄めた感じの飲み物だ。果汁30%位だろうか?
「私の事をわかってくれるのは、ナールさんだけだょ」
リョウが調子に乗ってナールをからかう。
「僕はリョウを嫁には貰えないけどね」
ウインクしながら、リョウにからかい返しをするナール。
「え?」
リョウは愕然とする、何故オネエがバレたのか?と。
「お前冒険者達に女言葉で命令したらしいじゃね~か?代る代る食事に来る冒険者達が噂してたぜ?」
「妙な威圧で股間が縮み上がったとか」「俺達リョウに食われる(身体)んじゃないかとかw」
「主にゴツイ系の冒険者達の顔真っ青だったぜw」
ウルが笑いながらリョウに真実を告げる。
「は?あの時か!」
見に覚えてのあるリョウは滝の様に冷や汗をかく。今迄慎重に隠して、言葉使いや仕草に気を使っていたのに、、と。
「やらかした~本当にやらかしたわ~」
リョウが頭を押さえしゃがみ込む姿をウル&カノン&ナールは暖かく見守っていた。皆が皆爆笑しながらだが。




