33.やっぱり運命の赤い糸?だわ。
南門に着くと皆バタバタしていた。
外周の補強や物資の移動、後方に簡易な救護施設を設置等色々大変そうだ。
「何か手伝う事はあるのかしら?」
リョウは一人呟くと、外周付近に見知った人達がいるのを発見する。
「クラインさん!」言わずと知れた、リョウの運命の恋人(勝手に本人が思っている)クラインだった。
「リョウ!」
テータもリョウに気づいたようで、笑顔で振り向く。
「どうして南門に?」
「最終的な打ち合わせだよ、それよりごめんな俺が攻撃魔法を使えるってギルドマスターのバライン殿に言ったせいで、リョウを危険な場所に行かせてしまって」
「全然大丈夫です、少しでもお役にたてたら、、」
「リョウは優しいな」
「そんな事は、、」
リョウの顔がまるで少女の様にどんどん紅くなる。
こんな所で会うって事はやっぱり私達は運命の赤い糸で?久々にリョウの脳内お花畑が復活である。
「誰が優しいって?」
リョウの顔を覗き込みやらしい笑顔でギルドマスターがやってきた。
「バライン殿、その右手は、、、」
テータが驚愕の表情をうかべる。
「ああ、何のきっかけか上級ポーションが効いてくれたみたいで」
バラインは事前に決めたセリフを口にする。
「そうなんですね、良かった!」
テータはその言葉を疑う事なく、素直に喜んでいる。
リョウはそんなテータをみながら、微笑ましく思った。
「では、閃光の鬼神復活ですね」
「いや、ブランクがあるからどれだけ動けるか」
「バライン殿ならすぐ馴染みますよ」
「まぁ、戦線に出てみないとこればっかりはな、、」
二人のやり取りを聞いていたリョウは閃光の鬼神がツボに入り笑ってしまった。
「何笑ってんだ、リョウ!」
それに気づいたギルドマスターはリョウに突っ掛かる。
「いやなんでも、ギルドマスターは勇ましいなぁ~と思いまして」
すでに素のリョウの口調を知ってるバラインは、それこそ猫かぶりやがってと鼻で笑う。
テータとバラインが最終打ち合わせをすませる。
「それではバライン殿私は西門に戻ります御武運を、リョウも余り無理をしないようにな」
「はい、無理しません」
リョウの返事に笑顔で西門に戻るクライン。
「はい、無理しません!ときたか乙女かよ?」
ギルドマスターの言葉に「うるさいよ」と短く答えるリョウ。
「成る程、お前の運命の相手ってクライン殿か?」
「おじさんになったら、本当に下世話で困るわ~」
「け、下世話で悪かったな俺は若い時からこんなもんよ」
「威張れる事ではないわね」
「それに一応恩人のお前が傷付く所を見たくないんでな」
「ん?それはどういう、、」
リョウが聞き返そうとした所「ギルドマスター!聞きましたよ!」
大勢の冒険者やギルド関係者がバラインを取り囲む。
どうやら、右手が治った事が皆に知られたようだ。涙を流して喜ぶ者、手を叩いて小躍りする者、各々だがバラインがギルドマスターとして皆に慕われているのがわかる。
リョウはそっとその場所から離れた。
「ま、あんなおじさんにも一つ位良い所無いとねぇ~」
そう呟きながらも、リョウも嬉しそうだった。




