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17.Aランク冒険者

「勇者様?」


 いきなり謝った後、泣き出した私を見て、辺境伯は何だコイツって顔で私を見た。


「失礼、なんでもありませんからお構いなく」

「左様でございますか」


 そう答えるものの私の顔から視線を外そうしない。

 何でこんな気持ちになったのか自分でもよく分からないんだから、ほっといて欲しいんですけど……。


「ちょっと身体が痛みまして、回復魔法(ヒール)使える方呼んでいただけませんか?」

「畏まりました。暫くお待ち下さい」


 使用人を呼び、魔道士の手配をする辺境伯。

 出来れば一人になりたい所なんだが、今のままじゃ移動もままならないので魔道士の到着を待つ事にした。

 その間、辺境伯を放っておく訳にもいかず、私は涙を拭うと真っ直ぐに視線を合わせた。



「辺境伯殿、貴公はシャデンの巫女がどの程度の位にいるかご存知ですか?」

「はあ、大変申し上げ難いのですか存じ上げておりません」


 これは賭けだった。

 当然、私はミリーナとしての記憶がない。

 だから、エリーゼから聞いている私の立場をそのまま伝える。


「シャデンに於いて巫女は王と並び立つ者です」

「なっ!」


 辺境伯がシャデンの内情を知らないのは当然だ。

 この大陸『ターフィアラス大陸』には4つの国しかない。

 まず中央にある人族の国『キーファス王国』、次いで大陸東にあるエルフの国『ユーフォリア共和国』、同大陸西ドワーフの国『アレグリア王国』。

 最後に大陸南に天族の国『ラフィン王国』だ。


 人口や大陸占有率でトップはキーファスであるが、大陸の覇者にはなれてない。

 戦力だけでいうなら大陸最強は天族が抜けていて、人族、耳長族エルフ炭鉱族ドワーフは横並びと言った感じなのである。


 天族は魔力が高く翼を持っている為、種族個体数は少なくとも戦力最強。

 炭鉱族は人族には及ばぬものの高い技術力を持つ。

 人族は魔力、技術力を一定数持ち個体数は他族を圧倒している。

 しかし、長耳族は天族と並ぶ程の魔力こそ持っているが、技術力と個体数は少なく他の3種族に比べると見劣る。

 だが、耳長族には後見国にシャデンがあった。


 ユーフォリアより更に東の島国シャデン。

 人族でありながら神の声を聞く神国と呼ばれ、耳長族に手を出さない限りターフィアラス大陸とは関わりを持とうとしない謎に包まれた国。

 その昔、キーファスがエルフを取り込もうとした時、半日足らずで正規軍が壊滅させられたというのは有名な話だそうだ。

 故にユーフォリアに手を出すなというのは、キーファスの民にとっては暗黙の了解になっている。

 エルフが壁になりシャデンの情報は王国に入ってこない、そこより更に離れているベルカントにシャデンの情報が入るはずがないのだ。


「それは誠なのですか?」


 私は黙して頷く。

 内心、汗ダラダラなのだが、それを見せないように威厳を持って。

 だってエリーゼがそう言ってだけで本当にそうなのか分からないんだもの……。

 あの娘、私を美化し過ぎてそんな事言ったって事ないよね。

 王と並ぶ者なんて間違ってたら、不敬罪、偽証罪……その他諸々で軽く100回は死ねる。


「シャデン代表として申し上げます。この件が無事に片付き、私の記憶が完全に戻った暁には、それまで掛かった費用を全てシャデンが受け持ちましょう。それでも何かご不満が?」

「いいえ、ございません」

「ならば至急手配を、一刻の猶予もありませんよ」

「御意」


 記憶が戻れば私には様々な魔導具を創り出せる能力があるってエリーゼが言ってたし、それ売れば何とかなるでしょう。

 国宝級の一品をポンと出したって言ってたし……。

 お願いエリーゼ、てへっ嘘でしたーって言うのは無しでお願いします。


 私の身分を明かしてから、辺境伯から小娘と侮るような態度は消えていた。

 流石に王と同列という私の身分は大したモンだ……と、正直怖くなった。

 私は(美利奈)は庶民で田舎娘なのだ。

 貴族の常識なんてまるで無いし、この先もっと偉い人とか出てきたら一体どうすれば良いのだろう。

 辺境伯に適当な態度を取っておいて、今更の様な気もするがケ・セラ・セラ(なんとかなるさ)でやっちゃ、いつか問題になりそうだ。


 辺境伯と今後の調整を終えると、回復ヒールを使えるという神官がエリーゼと共にやってきた。

 エリーゼがいるならそっちに任せようかと思ったのだが、エリーゼの傷も私の身体も回復(ヒール)では治すのに時間が掛かるとの事で、中回復(ハイヒール)が使えるという神官さんにお願いした。

 ただ中回復を以ってしても、私の身体は完全回復に至らず数日は掛かるとの事だった。

 うん、回復ヒールって、思ってた程万能じゃないんダナ。




 治療を終え、私とエリーゼは家に戻った後でジンを加えて知識の足りない冒険者について確認中した。


 冒険者はこの世界の何でも屋である。

 冒険者ギルドに属し、魔物狩り、素材集め、傭兵などで生計を立てる者全てを冒険者と呼ぶ。

 また冒険者同士で足りない部分を補い合う小コミュニティをパーティ。

 そのパーティを取りまとめているのが冒険者ギルドになり、ここベルカントにも中規模ではあるが存在しているらしい。


 冒険者には個人の実績に応じてランクが与えられており、最低ランクがEで見習い扱い、最高ランクがSであるとの事。

 また、パーティを組んでいる者には在席をしているメンバーの個人ランクを参照にパーティランクが与えられる。

 ざっとした例だが4人パーティで、Cランクが3人、Bランクが1人だった場合はそのパーティはCランク。Cランク1人にBランク3人だった場合はBランクと、在席メンバーランク人数に準じてランク分けされる。

 尚、ランクが同数だった場合は高いランクに設定されるとの事だ。


 ランクSの冒険者は過去3人しかおらず、現在は0だそうなのでAランクが実質最高ランクになっている。

 ちなみにだが、このベルカントにはDランク以下の冒険者はいないらしい。

 外敵が強く見習いに毛が生えたくらいのDランクでは生きてはいけないそうなのだ。

 だから今回の冒険者はCランク以上のそこそこ腕の立つ者達になるので、戦力としては頼りにしていいだろう。

 と、思ってた時代が私にも有りました。


 辺境伯の私兵200人は一応全員Cランク以上の強さを持っているそうなので、冒険者と併せて考えれば、問題は配置だけね。

 と、私が言うとエリーゼとジンは歯に物が詰まったような表情かおをした。


「どうしたの?」

「リナ、確かに配置の問題なんだが……」


 ジンの言葉にエリーゼが続く。


「ミリーナ様はCランクの強さ誤認してますね」

「誤認って一人前って認められてるからCランクなんでしょう?」

「そうですね。けど一人前ってどの位の強さだと思いますか?」


 へっ? そりゃあ魔物がうじゃうじゃいる世界でだから。


「ちなみに私、Aランクです」

「はひっ!」


 えっ? エリーゼが最高位ランク?

 もうヤダー冗談ばっかり……。


「ミリーナ様もAランクですよ。覚えてないでしょうけど、大森林ユーフォニアムを出てすぐ身分証明の為に冒険者登録して。その際、換金目的でオーガの魔石100個出したら、大騒ぎになったんですよ、15歳の天才魔導士って……で、実力証明の為に特例でBランクパーティとガーデンウルフの群れの討伐に出て……」

「はにゃ?」

「当然、瞬殺しましたね。あの時のBランクパーティ全員目が点になってましたよ」


 そんな事してたんだ私。

「そんな事してたんだお前」


 呆れ顔で私と同じ事考えないで!


「その後、Bランクパーティがこう報告したんですよ。ミリーナ様がEランクなら俺達はZランク以下だ、と。あ、これ一言一句間違えてない発言です」


 せ、先輩冒険者に様扱いされるって……。

 ま、まあミリーナ()が規格外なのはエリーゼの色メガネによる補正じゃないのが分かって良かった……のかな。


「でも、そうするとエリーゼは?」

「あぁそれは、私の実力は不明ってそのBランクパーティのリーダーが巫山戯た報告をしたんで、皆の見てる前でプチっと……まあ、そこそこの実力はありましたけどまだまだでした」


 アンタも大概ね。


「そうしたら満場一致で私もミリーナ様もいきなりAランクに」


 なりますよねぇ……。

 けど、それはそれで困った事になったわね。

 エリーゼが強いのは知っている。

 彼女なら戦力として十分だし、信用に値する存在だ。

 だが、その実力がAランクだとすると、Bランク以下の実力は信用しても良いものなのか……。

 否、信用出来ないからジンやエリーゼが微妙な表情をしたのだろう。


「あのBランクパーティのリーダーぐらい実力がある者が集まってくれるなら、その者達を主軸に考えられるんですけどね。名ばかりBランクやCランクははっきり言って……」


 前線に出すのは厳しいか……。

 一応、集まったメンバーの確認はするけど前途多難ですね、これは。



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