13.ジン
めっちゃ短いので、一時間後にまた。
頭の中がふわふわして心地良い。
意識が朦朧としてる所為だろうか? 全く身体が動かないのだが、何故か周りの景色がちょっとづつ進んでいるように見える。
「んっ、気がついたか?」
そう言うのはジンだ。
あぁ、私はジンにお姫様抱っこされて進んでいるのか。
なんか良いなコレ。
私がジンにコレをやってもらったのは2回しかない。
付き合い始めの頃は、模擬戦を仕掛ける度ボコボコにしちゃって私がジンをお姫様抱っこしてたのよね。
けど、段々互角になってジンが気絶しなくなるもんだから、してあげられなくなって……。
その内、ジンに勝てなくなって高校卒業前に負けた一戦で、私は気を失った。
その時始めてお姫様抱っこされたんだったなぁ。
あの時は悔しいやら恥ずかしいやらだったけど今は、
「どうだジン。私、勝ったよ」
「ああ、大したヤツだよ。お前は」
「認めなくて良いから褒めてよ。こんなボロボロだし、エリーゼも怪我させちゃったけど」
「大したヤツだって言っただろ」
「それ褒めてない」
ぶっきら棒なのも相変わらずだ。
「ねえ、エリーゼは?」
「治療してから帰ってくるそうだ。一応、索敵はしてるからたぶん問題ない」
「そう」
責任感の強いあの娘の事だ。
治療しながら森の様子を見ているのだろう。
「ねぇジン……何で麻里奈に手を出したの?」
「何の事だ?」
そう言うか。
その設定貫かせないよ。
「アンタ、影犬が飛び出した時、リナって呼んだわよね?うんん、その前勇猛犬に見つかった時も……一回目は確信持てなかったけど、二回目ははっきり聞いたわ。私の事をリナって呼ぶの一人しかいないんだけど、ソイツと瓜二つのアンタが、これはとんだ偶然ね」
「世の中不思議な事もあるもんだな。まあ、強いて言うならお前のイメージを具現化してる身体だからか?」
「元旦那? って聞いた時、知らないフリしてた」
「記憶が混乱してんだ」
うわ、取って付けたような言い訳を。
でも、まあいいわ。
言う気ないみたいだし。
「眠いから寝る」
「そうしとけ、辺境伯のトコについたら起こしてやる」
「うん」
辺境伯様のトコに着いたらやる事だらけだわ……。
身体痛いし、回復掛けて貰わなきゃいけないし、もうベットで横になりたい。
本気で眠たいのだ。
だから、別にジンを騙そうとしたつもりはなかったので、意識を失うちょっと前に聞こえたジンの呟きは聞こえなかった事にした。
「すまなかったな、リナ」
バカ野郎、謝るくらいなら浮気すんな。
その所為で麻里奈は……