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第三話 騒がしい食堂

「今は勇者が魔王を倒してから四百年経ってパブロニア紀四百一年なんだけど、国王が魔王を倒した勇者たちの功績を讃えて公爵の地位を与えたらしいの。で、その公爵の地位を貰った勇者の仲間達は武器の欄に星があるらしいのよ。だから、陽一さんが星のマークがあるってなると、もしかして公爵家の方なのかなって思っちゃって」

「ああ〜なるほどね」

「よくよく考えたらさっきこの街に着いたばかりだったからそんな訳無いのにね?」


 ソフィアは笑顔で陽一のことを見ていた。


(まあ、公爵ではないけど星はあるんだけどね?)


「それで結局その星って何なんだ?」

「星のマークはランクでいうとSの上らしいわ。何でも、勇者の仲間は自分たちしか扱えない武器を持っているらしくて、自分の子孫に代々受け継がれていて今でも存在してるって話しよ」

「へえ〜そんなものがあるのか」


(てことは、その武器も俺だったら使えるって事なのか?ここら辺は確かめようが無いからな…まあ、でもトールが死ななくて良かったよ)


(あれ!!?今、ワシ死ぬ可能性あったの!!?うっそだろ!?!?マジかよ!?!?)


「ん?待てよ?魔王が倒された?」

「はい」


(どういうこと?何かのドッキリか?それとも、またトールを屠る案件が早くも来たのか?)


「魔王が勇者に倒されてから四百年、平和な時が流れました。ですが、ここ最近魔王が復活したということが分かったんです」

「魔王が復活!?」


 陽一は驚いてソフィアに聞き返した。


(魔王って復活するのか?初めて知った。一回倒したら終わりじゃないのか…でも、生きていたとしてなんで四百年も間が空いたんだ?分からん。それはそうと、勇者が必要にならない方が良いに決まってるのに俺は魔王が倒されたと聞いて少しイラッとしてしまった。どうやら自分が思っている以上にトールの事を屠りたいのかもしれない)


「はい。ここ最近、魔物が活発化しているという報告がパブロニア王国の各地で相次いでいます。これに加えて、魔王の最高幹部、十二魔人と名乗る魔人達が現れたという報告も受けています」

「そうだったのか…」


(理由は分からないけど、魔王が復活したのは間違いないらしいな。早く倒さないと世界はきっと大変なことになる)


「それでその魔王の最高幹部、十二魔人っていうのはどんなやつなんだ?」

「何でも、自分たちの事を広めるために現れて人間を殺さず逃したらしいです。でも、それも最初に現れた一回きりで後に遭遇した人間は構わず殺しているという報告がきてます」

「何の為にそんな事を?」

「分かりません。ですが、最初に逃げた人たちの証言で少しだけ分かっている事があります」

「分かっていること?何だ?」


 陽一は不思議そうに尋ねた。


「逃げた人たちの証言を纏めると、十二魔人とは魔王によって作り出された十二人の魔人族のことを言い、魔人、または魔女とも呼ぶらしいの。それで、その十二魔人にはそれぞれ特徴があるらしいのよ」

「特徴?」


(見た目とかじゃないよな?)


「どうやら十二魔人には序列があるらしいの」

「序列か…」

「一位、魔法の魔人。二位、物理の魔人。三位、黒龍の魔人。四位、天災の魔人。五位、死病の魔人。六位、氷結の魔女。七位、大陸の魔人。八位、豪炎の魔人。九位、水源の魔女。十位、幻想の魔人。十一位、魅惑の魔女。十二位、表裏の魔人。分かっているのはこれだけよ」


(序列っていうのはなんの序列なんだ?これだけだと分かんないな)


「取り敢えず、分かったよ。また、何か分からないことがあったら聞きに来てもいいかな?」

「ええ、勿論!それが私の仕事だもの」


 陽一の言葉にソフィアが笑顔で返事をした。


「ありがとう。助かるよ」

「そういえば、陽一さんはどこで寝るか決まっているの?」

「寝床か…」


(そういえば決めてないな。というか、お金も無いから野宿決定だ)


「決まってないよ」

「だったら、ここの宿泊施設を使うといいわ。これからもここの宿泊施設を利用できるならお金を貸すこともできるという駆け出しの冒険者に優しい制度もあるし」


(なにその素晴らしい制度!最高だよ。このギルド作った人マジ最高だよ!)


「だったら、ここに泊まるよ。お金も必要だと思ってたしね」

「そう。なら、私が部屋の手配をしておくわね。それと…」


 そう言ってソフィアは屈んだ。そして、元の姿勢に戻ると手には布袋が握られていた。


「この中に50,000ゴールド入っています。金貨が一枚と銀貨が三十枚、銅貨が百枚です。上手く使って下さい。ちなみに、このお金はクエストをクリアしたら報酬から差し引かれるのでそのつもりでいて下さいね」

「分かった。ありがとう」


(金貨が一枚10,000ゴールド、銀貨が一枚1,000ゴールド、銅貨が一枚100ゴールドって感じか?)


 陽一はソフィアからお金を受け取った。


(道具を入れておくスキルがあると便利だな。あと、ステータスが見れるスキルがあると今後に便利だろう。作らないとな。あるかな?)


「陽一さん!頑張って下さいね!夕方にここに来て下さい。部屋の鍵を渡しますから」

「ああ。なにからなにまで世話になっちゃって…本当に助かったよ」


 陽一は照れくさそうに頬を指で触りながら言った。


「いえ」


 ソフィアは笑顔で言った。

 それから陽一はお昼時ということもあってお腹が空いていた。なので、このギルドに慣れるという意味でもここで食事を取る事にした。


(今のうちにスキルを作っておくか。多分だけど…ユニークスキル!想像!)


〈ユニークスキル:想像を発動しますか?はい/いいえ〉


(やっぱり、なんでスキル発動の有無を脳内で聞くのかと少し考えていたけど、脳内で発動できるからだったのね)


 陽一は一人で納得していた。


(はい)


〈了解しました。では、取得したいスキルを思い浮かべて下さい〉


(道具を持たなくても良くなるポケットのようなスキルと見た者のステータスを見ることができるスキルが欲しい)


〈了解しました。では、『スモールポケット』『観察』のスキルを取得します〉


 ナレーションが脳内でそう言うと、スキルの欄に二つ追加された。


《スキル》


スモールポケット・・・小さい異次元の空間を作り、そこに物を仕舞う事ができる。(ただし、使用者が片手で持ち上げられる物でなければならない。空気は無い)


観察・・・見たい者を注視することでその者のステータスを見ることができる。(ただし、使用者の魔力が注視した者の魔力よりも低いとステータスを見ることが出来ない。所持ゴールドは見れない)消費MP 80


(よし、これで大丈夫だ。取り敢えず、ご飯だ!ご飯を食べよう。異世界のご飯は美味しいのだろうか?少し不安だな…)


 陽一はそんな心配をしながらも他の人が食事をしている場所まで来た。


(うわ、さっきよりも凄い人だな…)


 お昼時と言うこともあってか、陽一がギルドに入ってきた時の三倍近い人数が席に座っており、空いている席は一つも無かった。


「どうしよう…」


 陽一が困っていると、丁度前から料理を持った女性の店員が近付いてきていた。


(お、丁度いいや)


「あの、すいません。どこか空いてる席は無いですか?」

「申し訳ございません。ただいま混み合っておりまして。相席でも良ければあちらの席が空いていますけど……」


 陽一は店員の言ったあちらの席を見てみた。すると、そこには絶世の美女が窓側の全部で六人は座れるであろう席を一人で独占していた。


(か、かわいい!これが異世界。すげぇ〜)


「分かりました。ありがとうございます」

「あ、あの…」


 陽一は店員の言っていたあちらの席に向かった。そして、席まで着くと絶世の美女に勇気を振り絞って話し掛けた。


「あ、あの〜…」

「?」


 窓の外を見ていた絶世の美女は腰ぐらいまである長い黒髪を揺らし振り返ると、不思議そうな顔で陽一のことを見た。


「今、混み合っていて座る席が無いんです。向かえの席に座っても良いですか?」

「は、はい……かまいません…」

「ありがとうございます」


 陽一は絶世の美女に了承を貰うと、向かい合わせになるように席に座った。


(よかった〜何とか座れた。しかも、こんなに美人な人と同じ席なんて…異世界最高〜〜!!ひゃっは〜〜〜!!!)


 陽一は幸せを心の内に何とか抑えながらメニューを見た。


(なになに?チョリのキャラアゲ、ピュタのチョウガ焼き、チュンチャオロース……なんだろう?このふざけたメニューは?俺は一刻も早く食べるものを決めて自分の目の前にいる幸せを実感したいのに…)


 それから陽一は少しの間、メニューと睨めっこしていた。


(ああ。分かった…これ多分あれだ。鳥の唐揚げだ。で、豚の生姜焼き、チンジャオロースだ。なるほど、何でか知らないけどこの世界の食べ物は日本にある食べ物を名前だけ変えてるのか。だったら…)


「すいません!」

「はい、ただいま!」

「ご注文は?」

「このチョリのキャラアゲとキャレツのシャラダを一つずつ下さい」

「分かりました」


(言いづらい。新しい早口言葉かな?でも、これでやっとこの美人を見ることができる)


 陽一は絶世の美女の方を見た。


「お待たせしました!こちら、三色の串ジャンゴといちゅごジャイフクになります!」


(くそ!良いタイミングで来るな…)


 金色のボブヘアーで褐色の肌と頭の猫耳が特徴的な獣人の女性店員が持ってきた。


「あ、ありがとうございます」


「ごゆっくり!」


 そう言うと女性店員は戻って行った。


「はぁ〜これでやっと見れ…」


(あぶね〜!もうちょっとで本音が出るところだった…)


 陽一は何とか言い掛けた言葉を止めた。それから、陽一はふと彼女の方に目をやった。すると、そこには頬を少し赤く染めた美女がタレ目の青に耀く瞳で陽一の事を見ていた。


(やべぇ〜バレてたか…上手く誤魔化せ、俺!)


「いや…その…この街に来たばかりでギルドにも初めて来たので色々新鮮でこれでやっと周りの様子を見れるなあ〜って…」


(まずい…苦しい…この言い訳は苦し過ぎる!自分で自分の首を締めているとしか思えない…)


「そ、そうでしたか…」


 そう言うと彼女は無言になり、恐らく三色の串団子と思われる食べ物を口に運んでいた。


(もしかして口下手なのかな?それもかわいいが…)


 それから陽一はバレない程度に彼女のことを見た。彼女の身長百六十センチ程で胸は大きく、頭には女の子らしい水の雫のヘアアクセサリーを付けていた。そして、服装はピンクの着物で桜の花びらがデザインされており、赤の帯に白の八掛を身に付けていた。それに加えて、机と彼女で見えなかったが椅子に彼女と同じぐらいの長さの刀を持っており、赤の持ち手と鞘が特徴的だった。


(もしかして、和風のモノが好きなのかな?食べ物も団子と大福だし…しかし……)


 陽一が彼女の事について考えていると、違和感に気が付いた。


(なんか、さっきから矢鱈とこっちを見てくる人が多いな。俺の事が羨ましいのか?その気持ち、分かるよ)


 陽一はちょっとした優越感を感じていた。


(にしても、意外とご飯来ないな。まあ、これだけ混んでるから仕方がないけど…あっ!そうだ!今のうちにさっき取得した観察のスキルを使ってみよう!スキル!観察!)


 陽一は脳内でスキルを叫んだ。すると、彼女のステータスが分かった。


《ステータス》


LV  68

HP 260,000

MP 2,800


《装備》


武器 神剣アティモス ランク★ 攻撃力+9999 (特性:刃こぼれせず、折れない。俊敏さの数値を上げる。ユニークスキル『疾風迅雷』を付与。スキル『風耐性・大』『雷耐性・大』『流し切り』を付与)

武器2 無し

頭 無し

胴 和服 物理防衛+5,500 魔法防御+3,500

脚 和服 物理防衛+5,500 魔法防御+3,500

アクセサリー 水の雫 物理防衛+1,000 魔法防御+2500 (特性:ステータスが下がらない。スキル『呪い無効』を付与)


獲得経験値 960,000

所持ゴールド ?


力 850

魔力 400

速さ 4,200

技 2,600

守備 700

魔法守備 650


攻撃力 12,149

魔法攻撃力 1,700

俊敏さ 4,700

物理防御 12,700

魔法防御 10,150


《ユニークスキル》


疾風迅雷・・・風のように速く動き、雷を付与した剣で相手を斬り倒す。一定時間、俊敏さと切れ味がとてつもなく上がる。消費MP 2,500


剣才・・・一度見た剣術を覚えることができる。


《スキル》


風耐性・大・・・風の影響を限りなく無くす。


雷耐性・大・・・雷の影響を限りなく無くす。


流し切り・・・一定時間、相手の攻撃を受け流して反撃する。(ただし、受け流すには限界がある)消費MP 10


呪い無効・・・呪いの影響を受けない。


一閃・・・凄まじい速さで斬り付ける。(ただし、能力は使用者の俊敏さによって威力が変化する。鞘に剣を納めた状態でなければならない)消費MP 60


危機察知・・・自分に危機が迫ると極度に寒気がする。(ただし、何が起こるかは分からない)


《武器》


剣 ★

槍 D

斧 無し

弓 無し

魔導書 無し

杖 無し


(な、何だこれ!!??強すぎだろ!?俺より強いじゃね〜かよ!)


 陽一は彼女のステータスを見て驚いていた。


(待てよ?確かソフィアの話しからすると、武器のランクが星のマークになってるのは勇者の仲間の末裔…だとする…この人は公爵家の人ってことか…?!はっ……?!)


 陽一はその時、気が付いた。なぜ、自分が周りから見られているのかという理由に。


(まずい!!まさか、公爵家のお嬢様だったのか!?だったら、同じ席に座るとか最悪の場合、死刑…!どうしよう!このままじゃあ、魔王討伐どころか俺が討伐されてしまう)


 その時だった、さっき料理を持ってきた獣人の女性店員が陽一の料理を持ってくるところだった。


「お待たせしまし…たあああぁぁ!!」


 陽一の食べるはずだった料理が目の前で床に落ちた。


「ご、ごめんなさい!!!今から新しく作り直しますので……」

「こらああぁぁぁ!!リーウェル!!お前、またやったのか!!!今日だけでもう三回目だぞ!!!!」

「ひぃぃぃ!!!」


 陽一の目の前では悲鳴が聞こえ、調理場の方からは男の怒号が聞こえた。そして、それからすぐにガタイの良い四十代ぐらいのおじさんが来た。


「お客様、申し訳ございません!今から作り直しますのでお時間を頂いてもよろしいでしょうか?」


 男性は深々と頭を下げた。それに続くようにリーウェルと呼ばれていた獣人の女性店員も頭を下げた。


「ああ、良いですよ?別に急いだ用も無いので」

「ああ、ありがとうございます。リーウェルはすぐに片付けるんだ。いいな?」

「はい、料理長!!」


 それからはリーウェルが黙々と自分の後始末をした。そして、陽一に一礼すると元の業務に戻った。


「何だか騒がしい子だな?」


 陽一はリーウェルにそんな感想を抱いた。すると、自分の目の前にいる彼女が陽一のことを警戒した目付きで見ていた。


(はっ!?そうだった、あのリーウェルっていう子が騒がしかったから今までの事を忘れていた。なんでこんな目付きしてるんだ?うるさすぎて機嫌が悪くなったのか?)


「あなた……」

「はいっ!?」


 色々と思考をしていた陽一に彼女が重い雰囲気で話し掛けてきた。


(終わった〜俺の異世界ライフは数時間の短い人生だった……)


 陽一は自分が死なない事を忘れ、悲哀の感情に浸っていた。


わたくしをどうするつもりなの?」

「……はい?」


 心配そうに言う彼女の予想外の言葉に陽一は首を傾げた。


次回、彼女は心配性

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