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クォーターエルフはへっぽこ4

 絶対に諦めない、短くなった栗色の髪に目をやり心に誓った。


 「麗しき王族エルフ……紺碧の瞳……」

 黒いソファに腰掛け足を組んだオスペナ知識国のターバンを巻き、灰色の長衣を羽織った初老の男が全部指輪のしてある指をおって数えてから合ってると手を伸ばした。


 「ご入金してからにしてください」

 パイナ草原国の前合わせの民族衣装に帯を巻いた女性が愛想笑いを浮かべて目の前に立たされている私を例の異世界軍人風な男に目配せして後ろに引っ張らせた。


 現在、この犯罪組織の立派な応接室? で商談の真っ最中である。


 あのあと、朝起きたらなんかクネクネしてる美容師に髪を切られ、風呂に監視付きで入れられて、サークレットつけられて、コーディネーターにお父様がよく着てるエルフ風の長めのチュニックにピッタリしたズボンを履かされて、ここまで連行されてきた。


 ついでに華麗な首輪って何さ、宝石っぽいもんがついてても、きれいな紺碧色の革紐でも、鎖がついてる時点で台無しなんだからね。


 「ふ、ふん、まあ、言い値だけ入金してやろう……だが、あの忌々しい男の面影があるな」

 ターバン初老があごひげを撫でた。


 かの麗しき王族エルフの軍人王女の孫だと思ったが……とつぶやいてる。


 あ~お祖母様の関係ですか?


 お祖母様は……あんまり似てないんですよね、グーレラーシャの正装してれば色違いのちびダウリウスってケレス森国いくとお祖母様に喜ばれますけどね。


 「代金をご入金いただければ、どのように扱われても結構です」

 女性が表情を読めない微笑みを浮かべた。


 ええー? 嫌だよ、体型は貧弱だし、後ろについてる黒い覆面の護衛たちはなんか強そうだけどさ。


 たぶん、一発逆転は一瞬だよね。

 倒せるかな? 筋肉ムキムキの護衛が……ひいふうみい……三人かいー……それにしても、どっかで見たような……緊張してるせいだよね?


 ルーとかノア姉様とかアイ姉様なら瞬殺なんだろうね……でも、私は……一応暗器ならもうちょっとで下等戦士の下を取れたんだけどね。


 ほんとにほんとにほんとに、グーレラーシャ傭兵国人なんだよ〜


 エルフだって強い人は強いけど身軽タイプ多いしね……明正和次元(異世界)のエルフは農耕民族で、どっかの異世界は戦闘民族らしいけど……


 「これでいいか?」

 オスペナ男が通信端末にゼロがいくつもいくつもついた金額が提示された。


 他にも、顧客がと女性が小首をかしげた。


 この守銭奴と舌打ちしながら端末に向き直るオスペナ男を横目に見ながら、こんなクォーターエルフ(中途半端エルフ)なんてほしいやつなんていないよとつぶやいた。


 どうせルーだってこんなめんどくさい女より美しい、どこぞの姫君の方がいいよね。


 でも……最後まで諦めないのが、グーレラーシャ女の心意気なんだからね。


 女性が次に提示された金額でにっこりと微笑んだ。


 「で、では成立と言うことで」

 ゴクリとツバを飲み込んで手を伸ばしたオスペナ男の手を払って、女性が帯を外した。


 「残念でございますわ、希少な王族エルフでございますのに」

 侵入者の手引きをなさいますなんてと女性は口角をにっと上げて民族衣装の上着をオスペナ男の護衛に投げつけた。


 下にピッタリしたズボンと首まで保護の黒装束で完璧戦闘服だよ〜女性が口角を上げて帯を振り回すとひいっと叫んでオスペナ男が身体を浮かしかけ上着を投げつけられた護衛とは別の護衛が前に出て帯を腕で弾いた。


 「どんなネズミが潜り込んだのでございますの?」

 「勝手に商品扱いしないでもらおう」

 帯を生き物のように操る女性に空間拡張袋(差し入れ小袋)から見覚えある槍を出して応戦する、聞き覚えがある声にハッとした。

 故郷のヨスガとごねてポケットに突っ込んだ例の刺繍糸を取り出し革紐を包み込むように折り込んで引っ張ると見事に切れた……あ、あれ? ほんもんの革紐でしたか?


 最低でも鋼鉄とか混ぜ込んでると思ったのに〜


 「本当に静かなグーレラーシャ人だなっておい」

 「がんばって切ったのに〜設備投資不足〜」

 何か慌てて掴みかかろうとする例の異世界軍人風男にやるせない思いをぶつけず小さい身体を思いっきり転がして退避した。

 

 あんたらグーレラーシャ人を騒ぐどーぶつかなんかだと思ってないかい〜人それぞれだよ〜。


 「よっしゃ〜流石〜ガナリス最弱のお嬢〜」

 入れ替わるようにやっぱり聞き覚えのある声の大柄の護衛が異世界軍人風男に相対してメイスを振り下ろした。


 「危ねえ、どんなヤバい奴らをいれやがった」

 「最弱のお嬢に手を出した時点で、オメェらの運命は決まったんだよ……ついでに俺のボーナス査定もな〜」

 クッソーてめぇらのせーで〜とメイスがガートした異世界? 軍人風? の腕に当たった、ガキっていい音した、たぶんメイスの人はあそこであったガナリスの影のあの人たちだよね? ガナリスのおじいちゃん、情け容赦なさすぎるからなぁ……


 異世界軍人風? がブランとした腕を抱えてうずくまる。

 骨いったよね、私は知らないけど。


 「ぐ、ぐそ……よくも」

 うめきながら異世界軍人風? が立ち上がり銃を構え見境なくうった。

 あなた、正気なの〜と女性が帯をふるった。


 銃弾を跳ね返してるとこ見ると一応鋼鉄以上は帯に織り込んでるみたいだ。


 ひいっと頭をかかえ床に伏して震えてるオスペナのおっちゃん以外は自分の武器(エモノ)で弾いてるのは想定内だよね。


 どうしよう、異世界軍人風なんかクソとか○○○とか色々いいながら打ち続けてるんだけど……外国語? グーレラーシャ語とか共通語じゃないよね?


 この世界の人間だと大体、共通語と自国語が話せるよね。

 グーレラーシャ傭兵国人だと専業傭兵が共通語で外国行く関係で使うから自国語より共通語でしゃべる率高いけどね。


 この言葉何処なのさと思ってたらこっちに銃口向けてきた。


 やばい、やばすぎる。

 なんか目が行っちゃってる?


 銃声が鳴り響き伏せきれない死んだと思った瞬間に誰かに抱えられた。

 黒衣だけどルアティウスだってなんか思った。


 オレンジ色のキレイなみつあみが半分弾丸にいくつか焼切られて髪に仕込まれた天鉱合金のナイフで弾かれるのが妙にゆっくり見えた。


 ルーの髪の毛が……キレイな髪の毛が……


 ルアティウスが私を抱えたまま腰から針を異世界軍人の銃を持ってる方の腕に数本飛ばしたのを呆然と目で追いかけた。


 グォぉぉだがなんだか唸りを上げて銃を落とした異世界軍人を黒衣のガナリスの影のおっさんがメイスで殴って倒して抑え込んで拘束符を貼り付けたのが見えた。


 「あなたで終わりのようだ」

 半分ザンバラ髪になったルアティウスが水色の目で女性を見据えた。


 「この、約立たず〜」

 女性が異世界軍人を憎々しげににらみつけた。

 制圧終わりですといつの間にかいなくなってたもう一人の黒衣のたぶんガナリスの()の人が奥の扉から顔を出した。


 その瞬間を狙ったように女性が帯から小刀を出して飛ばしたのが見えた。


 持ってた天鉱合金入り刺繍糸で落とす時、チクリと痛みを感じた。


 少し刺繍糸で切って血液がにじみ出るけど大したことない。


 「レゼ……血の匂いが……」

 「大丈夫、ちょっとき……」

 言った瞬間ルーが闘気を立ち登らせ大股で女性に近づいた。


 な、なんです〜と騒ぎながら振り回す帯を見事に避けて女性に蹴りを入れた。


 うわぁ……飛んだよ……壁にぶつかったよ……

 女性は意識がないのかズルリと床に転がった。


 「愛しい女を傷つけられたグーレラーシャ男こえー……まあ、俺も絶対にやるけどよ」

 「流石、グーレラーシャの牙ですね」

 ガナリスの()のおっさんが恐ろしいもん見たという顔をしガナリスの()の人が転がった女性の額に拘束符を貼り付けて関心したようにこちらを見た。


 「これでわしは無罪放免の約束ですぞっ」

 オスペナの人買いおっさんが顔を上げてわめいた。

 「私たちは何もしませんよ、でもほら、警務隊が来たようです」

 ガナリスの()の人が空間を見た。


 こわー、やっぱりなんか聞こえるんだ。


 ガナリスの()はグーレラーシャ人だけど魔力とかなんかの能力とかかくし芸がいっぱいある人がなるらしい、この水色のみつあみに青い目のガナリスの()の人は耳がいいのかなぁ?


 レゼルテア姫、ルアティウス王子殿下、早々に撤収を……と()の人の声にルーがうなづいた。


 そのまま、足早にあるき出されたけど……


 「ルー、ルーさんや、私歩けるけど?」

 「レゼ? なんの冗談?」

 半分髪の切れた美貌のわんこ王子? が壮絶な色気をまとって微笑んだ。


 わー姫さん、刺激しちゃだめーと()のおじさんが異世界軍人と帯の女性を縛り上げて拘束符を外しながら叫んで()の人にしーと言われた。


 拘束符使うのは明正和次元の次元門があるグーレラーシャ傭兵と青の傭兵(守護戦士)くらいだから……バレないようになのかな?


 ルーを見上げる、うん、このまま子ども抱っこで諦めよう。

 なんか、つついたら出るような気がしてきた。


 「もう、二度と私の前から消えるな」

 真剣な水色の瞳にもう、いい加減諦めるかと思った。

 「うん、ルーの事好きだから、いらないって言われるまでそばにいるよ」

 ため息をついてから微笑むといらない? それは永遠に来ないよと口付けられた。


 うん、ずっと好きだったって一応認めるよ。

 でも、ルーは王子殿下だから、私じゃもったいない気がするんだよね。


 そんな事を思いながら広がる大草原を抱きあげられたまま眺めた。


 うわぁ……本当に向こうに馬が警務隊らしい人たち乗せて走ってるとなんか口付けられたのがふわふわ恥ずかしい様な気持ちと一緒に()の人半端ないと現実逃避した。

読んでいただきありがとうございます

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