クォーターエルフはへっぽこ1
本日もヘタレワンコ王子にお迎えが来たよ〜
忙しいなら来なくていいのに王都治安が良いのにさ〜
そんなに私、信用ないかな、
ソコソコ客が来て夕方になった。
「お疲れ様でした」
「また、明日レゼルテア君」
店長に挨拶してロッカーで制服から着替えてショルダーバッグを背負ってタイムカードを押して裏口から顔を出した。
自動車が通ったり乗り合い馬車通ったりししてる、グーレラーシャ人の民族衣装である戦衣と呼ばれる足さばきの良いようにスリットの入った長衣とズボンと日差しがつよいグーレラーシャで必須の日除けローブをまとったりまとわなかったりの人々があるいている。
「うん、ルーはいないね」
一本三つ編みの男性の中には愛しい相手を抱き上げてる人も沢山いるけど、朝におしかけたヘタレワンコ王子は見当たらない。
基本的にグーレラーシャ人の男性は首を守るために一本三つ編み(武器入り)をしててがたいが良いし女性もまとめた髪にかんざし(武器)で長身で筋肉質だから埋もれるなぁと思いながら通りにでた。
今日のご飯は何にしようと商店の惣菜をのぞいていると後ろに気配を感じた。
「レゼ、私が一日千秋の思いで待っているというのに〜」
「鳥肉のレーズン巻きで良いかな?」
いつものヘタレワンコ王子の登場に思わず無視した私は悪くないと思うけどね。
レゼ〜なんで無視するんですか〜と一日王宮でお仕事して修練までしてきたはずの体力バカが後ろから抱きついた。
別に? 王子殿下とにあわない一般人ってどこぞの外交官の令嬢とかに言われたからすねてないですよ、?全然、ええもちろん。
「トマトのピラフ詰めと合わせたお弁当が良いかな」
「王宮に食事を用意させます、おねがいします、帰りましょう」
どーんと重たい頭が肩に乗ったのでチラ見した。
「ハニータルトがあれば行く」
ハニータルトはグーレラーシャ人のソウルフードだ。
はちみつの染み込んだパイ生地の層の上にピスタチオとかアーモンドとかが散りばめられて……まさにグーレラーシャ人溺愛の至福のスイーツなんだよね。
「もちろんです」
ルアティウスが嬉しそうに抱き上げそうになったのでダメージないだろうなと思いながら肘鉄を食らわせた。
レゼ〜と情けない声を出してルアティウスが腕を離した。
護衛の葡萄色の制服の王族警護官がなんとなくため息をついたように見えたよ。
まあ、王宮特製のハニータルトの前にはヘタレワンコなんて……なにさ?
ルアティウスが手を差し出して来たのでお手かいと思いながらつないだ。
まあ、幼馴染だしね〜。
そんなことを思いながら王宮にむけてあるきだした。
グーレラーシャ傭兵国の王宮は王立傭兵ギルドと王立闘技場が真ん前にあり背部は小高い丘が広がりその上に王立傭兵学校に囲まれた万全の警備体制でありその広大な敷地もいくつもの中庭を有した砦方式で世界一優美な要塞と言われている。
世界一優美な要塞には王族はもちろん高位貴族が守りとして沢山の部屋を賜り住んでいる、領地もあるんだけどね。
つまり一応、私の実家も王宮と言うわけだ、今はアパートぐらしだけどさ。
優雅な要塞の中庭は戦略上立ち入り禁止だ。
入るともれなく小豆色の制服の王宮警護官に逮捕される。
間違えじゃないよ、うん、実は王宮には王宮を守る王宮警護官とその上位種? 王族専属護衛の王族警護官がいる。
一応同じ部署が統括してる、けど王族警護官はエリートなんだってさ。
その中庭に面して部屋が配置されてるんだけど、そっちは王族の居住空間ですよ〜、まあ、そうだよね〜とおもいながらホテホテりっぱな廊下を歩いていると中庭で飴職人な恋人の膝の上に乗ってイチャイチャしてる幼馴染の次代国王、メリリノア王女殿下が手を振った。
「レゼルテアちゃんもルアティウスとデートなのですか?」
「ハニータルトと夕食を食べに来ました」
「デートです、姉上様」
にっこりと微笑んでギーデル飴店のボンな彼氏の頬を撫でるメリリノア王女殿下に私とルーが同時に答えた。
そしてギーデル飴店のボンにしてメリリノア王女殿下の押して押して押しまくった末婚約させられた、まあ抱き上げてるから愛してるんだろうけどな飴職人になんか同情された。
えーと……私はまだ手遅れじゃないもん。
「ルアティウス頑張ってください」
レゼルテアちゃんが義妹になれば撫で放題なのですとメリリノア王女殿下がてをわきわきさせて飴職人におい変態王女、ドサクサに紛れて俺の脇腹を撫でるなと腕を払われてるのに手を振って至福のハニータルトを目指してルーとあるき出した。
世界広しといえどもこんなに大国なのにフランクな王族なんてグーレラーシャくらいだよ、あの外交官令嬢なんか誤解してるよねと綺麗なルーの顔を見上げると、なんです? と見つめ返された。
「レゼは可愛いですね」
「えーと……」
なんで唐突に可愛いっていうんだろう。
だからって抱き上げようとしなくっていいから〜
なんとか幼馴染の戯れから逃れてやつの部屋のについた。
ルアティウスの部屋はグーレラーシャの王族らしく優雅さの中に武骨で頑丈なアイアンテイストな家具でいつもどおりまとめられていた。
そして無駄に天井が高いのは戦闘になったとき動きやすいようにらしい、あの壁の彫刻もあの作り付けの棚も戦闘になったら足場……たぶんシャンデリアも使われまくる、だって傭兵学校でそういう訓練うけるの見学したもん、うん、まったく跳び移れないので免除でした、くすん。
優美なツタモチーフのアイアンテーブルのルーが座った向かいに座ろうとしたらルーが自分の膝を叩いた。
「イヤだなぁ、そんな恋人みたいなことできないよ」
「レゼ〜ひどいです〜」
こんなに愛してるのに〜と騒いでるヘタレワンコ王子は放っておいて向かいの席に座ると絶妙なタイミングで王族管理官が椅子を押してくれた。
王族管理官と言うのは、他国では確か……侍従とか女官とか侍女とか言う人たちの王族担当の世話人でエリートで同一部署に王宮管理官がいる、制服は黒鳶色で王族警護官よりゆったりしたズボンをはいている、ちなみに王宮管理官は鳶色の制服だ。
王宮管理担当官は王宮に住んでる貴族のうちにも派遣されてて、費用はその貴族が払ってる。
王宮勤めの人たちはみんな公務員でエリートなので他国よりやりずらいと外国人がいってるってルケシウスおじさんが教えてくれたなぁと思ってるうちにテーブルに牛肉のナス包みトマトソースと野菜の素揚げヨーグルトソース、ピーマンのピラフ詰め、細長いパンに果物のハニー煮とクリームチーズが添えられて出てきた。
いずれも芸術作品みたいに美しく盛り付けられていて食べるのがもったいないくらいだ。
「美味しそう」
「何を飲みますか?」
ルアティウスが別のワゴンで王族管理官が持ってきた飲み物をしめした。
うーん、今日は飲んじゃおうかな?
ファモウラ軍国が戦争してたときの年齢の人は戦闘時に判断力が落ちるからって普段から飲酒は避けてたみたいだけど、最近は平和だし、若モンを中心に飲酒する人も増えてるんだ、私もその一人です。
「スパークリングハニーワインをおねがいします」
「私はハチミツ酒を」
美しい動作で王族担当管理官がグラスにお酒を注いでいく、追いハチミツの容器が置かれたところで乾杯して食事をはじめた。
甘みの足りないお酒に追いハチミツをして美しい琥珀色に細かい泡の立ち上るワインを飲みながら美味しい食事を食べる。
目の前はヘタレワンコ王子だけど美丈夫って至福だよね。
まあ、いくらアピールされても……今朝みたいに庶民な身の程しらずにはもったいないって言われちゃうけど……
あれ? おかしいな、私、一応、貴族だよね……
「それで、なんで今朝は無視したんですか?」
「諸事情によりだよ」
ハチミツ酒のお代わりに追いハチミツを注ぎながら聞かれた。
「私の腕の中からいなくなっててあわてました」
「勝手に抱き込んで添い寝してただけじゃないか」
嫌だな、誤解されるじゃないとおもいながら牛肉のナス包みにナイフを入れた。
牛肉のこくにとろりとしたナスが美味しい。
「レゼは私の気持ちがわかってくれてない」
ブツブツ言いながらルーは素揚げ野菜を美しく召し上がってる。
うーん、なんとなくわかってるんだけどさ……父様が……ダルフィーラ父様が、押され負けるとなし崩しだぞ〜と母様がお仕事でいないときに力説して、話を聞いた母様にあとで寝室でしめられた? って聞いたから……元グーレラーシャ人のハセルリアおばさまもビミョーに肉食女子だし……
そんなことを思いながら至福のハニータルトまで完食して……酒飲んで……
気がついたらいつもどおりルーの腕の中で寝てた。
ああ、もう〜、アパート契約したのに帰ったの数えるほどしかないって何さと思いながら寝くさる、ルーにけりけりして重い腕を動かそうといつもどおり頑張った。
おはようございます、と寝惚けて妙な色気を出したルーに帰るからと告げると渋々腕をどけた。
「朝食は……」
「じゃあ、帰るね」
そんなぁ〜レゼの帰るところはここですよ〜と寝ぼけて腕をひろけるヘタレワンコ王子を無視してベッドから降りて、二度寝したやつを無視して服と髪を整えて隣の部屋に行くと早番の王族管理官が待機していた。
「おはようございます、レゼルテア様」
「おはようございます、お世話になりました」
会釈をして部屋を出た。
さてと、今日も、元気に仕事行きますかね。
朝日がさす中庭に立つ夜勤らしい王宮警護官をお疲れ様ですと思いながら廊下を歩き出した。
今日もヘタレワンコ王子は迎えに来るのかなと思いながら……
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