死にたがりの異世界転移
23年間も自分と付き合ってきたので人より病みやすい性格だ。
それでも自ら自分の命をたとうと思ったことはこれまで一度もない。
なぜ、今まで生きてこれたのかと過去を振り返えると人に支えられていることを自覚していたからだと今更ながら思える。
僕なんかに優しくしてくれる人がいた。
僕なんかを大切に思ってくれている人たちがいた。
僕なんかと感情を共有して一緒に頑張ろうとしてくれる人がいた。
だが、そんな人の優しさに呆けていた結果、今の僕には何も残っていない。
愛する者はこの世を去り、惨めで独りぼっちな僕が生きる意味もなく生きている。
そんな人生がつまらなくて嫌いで、僕は今日、生きることをあきらめた。
死に場所なんてどこでもいい。どこで死のうが残るものは他人事。
身寄りもなければ付き合いもない。そんな僕がどこで死のうと関係ない。思い立ったら行動できるところで行動する。そう心に決め、僕は他人の視線を気にせず駅のホームから線路へと降りた。
驚くことに僕を止めようとする者はいなかった。
駅のホームでただ僕を見ているだけで動く気配すら感じない。動揺はしているが他人なので関係ないといったところだろうか。
そんな周りを気にしないよう、目を閉じて心臓の音を聞いて息をのんだ。遠くにいたはずの電車が着々と近付いてくる。怖いと感じながらもそこからは動かない。
そう決意した時、なにかに突き飛ばされた。何事かと目を開けると制服を着た少女が僕の前に立っていた。少女は口を開いていないがその顔には憤りを感じた。
助けてくれる人がこの世の中にいるのだと感心したが、タイミングが悪かった。すべて手遅れだった。
それはあっけなく一瞬だ。
そうして僕の人生は幕を閉じた。
木々が揺れる音、土の匂いと自分の呼吸。さっき死んだのに思考は動き、感覚は生きている。死ねば考えること辞められる、辛いことから逃げられると思っていた僕にとってそれはすごく痛手だった。
先ほどまでの電車のホームのような人工的とは打って変わって僕の目には木々と雲一つない空が映っている。天国とはこういうところなのだろうか。しかし、命を自ら捨てるものは天国には行けないという風習があるので、もしかするとここは居心地をいいように見えて地獄なのかもしれないと怖い考えをしていると隣から息の音が聞こえてくる。
それは僕よりもか細い息遣いで誰かに似ている。
そうだ、かなえだ。僕の最愛の人。
やっぱりここは天国なんだ。そう思い息のする方に目を向けた。
そこにいるのは最愛の人ではなかった。僕の隣にいたのは僕を助けようとしてくれた少女だった。




