世知辛い異世界だ……。
スピリット先生の序盤は中々にハードモード。
まあ直ぐ強くなる機会は訪れますが……。
その後も、俺が彼らに認識されることはなかった。
これほどまでに孤独を感じるとは、思ってもみなかったことだ。
俺は本当に幽霊か何かにでもなってしまったのかもしれない。
だってそうだろう?
そこに自分はいるはずなのに、誰にも認識されず、誰にも声を届けることができない。
生前はまだボッチだったとはいえ、一応社会生活を送り、曲がりなりにも他者から必要とされる存在だった。
だが今は?
――俺は、いてもいなくても良い存在。
この世界に、俺の居場所なんてないんじゃないだろうか……。
転生した意味ぃぃ……。
俺はその場からトボトボと離れることにした。
彼らの傍にいても、俺にできることはないし。
何より、自分が認識されないのにその場に居続けることはとてもむなしい。
どこに向かうかなどわからず、湖を離れひたすら漂うに任せた。
肉体を持たないにしても、俺のこの体はどうやら意識によって操作できるらしい。
最初こそ戸惑ったものの、今では人の体であったように移動することができている。
むしろ、宙に浮くこともできるし、何より木みたいな物理的障壁は透過することができる。
ハハッ。
転生して初めて自分の体に意義を見出せたぜ。
そんな空元気を続けて、どれだけ漂っただろうか。
上を向くと、空はもう既に黒いカーテンが敷かれ始めていた。
この世界に来たときはまだ昼間くらいだったのに。
ちょっと確認がてら、浮遊する高度を上げる。
気分はちょっとした鳥になったようだ。
……ハハッ、誰にも認識されない鳥ってなんだ。
と、時には自虐を入れつつ2mはある木なんかも、すぐに自分の真下になり、そしてどんどん小さくなっていく。
360度グルっと回ってみると、何とか先ほどいたであろう湖を見つけることができた。
ここから西にずっとまっすぐ行くと、またそこに行きつく。
10㎞は少なくとも離れているか。
結構歩いたんだな……。
もう少し東に進むと、山脈が見えた。
暗くなってきたので詳細はわからんが、登って超えようとすると数日はかかるだろう高さだった。
だが、俺が行ったらどうなるのだろう。
俺は物理的な接触とかはできない。
そうすると、俺は登らなくともこのまま真っすぐ突っ込めば行けるんじゃないか?
……まあ、それが何になるかはわからんが。
自慢できる相手もいない。
やべぇぇ。
早々にリタイア案件ですよこれ。
もう異世界辛くなってきたんですが。
さっき死んだばかりなのにもう死にたくなってきたんですが。
ってか俺ってそもそも死ねるの?
この体に死ってあるの?
死ぬってなに?
生きるってなんなの?
……やばいやばい。
思春期真っ盛りの中学生じゃねえんだから。
この思考はマズイ。
どんどん深みにはまっていく。
俺は嫌な考えを追い出すようにして、頭(?)をぶんぶんと横に振り、一度地上に降りることにした。
そしてゆっくり戻ってくると、少しは頭を落ち着かせることができた。
難しいことを考えても、結局はどツボにはまるだけだ。
俺は先ほど手に入れた【ステータス鑑定】を使ってみることにした。
[個体ステータス]
名前:――
種類:モンスター
種族:スピリット
性別:――
年齢:――
[能力ステータス]
固有スキル:【ラーニング】【プラットフォーム】
スピリット保有スキル:【魂入 Lv.1】
スキル:【ステータス鑑定】
ううむ……ってか名前もないんか。
個体を識別するために重要となってくる“名”という要素さえ、今の俺にはないのだ。
俺は本当にこの世界ではとるに足らない塵芥・ゴミ屑レベルらしい。
いなくなっても構わない、「君の代わりはいくらでもいるんだよ」要員だ。
中々に虚しい。
[能力ステータス]の方に視線を移す。
固有スキルはあれだ、クソ神によって与えられた能力だ。
これがたとえどんなに強力な能力だとしても、[個体ステータス]上にある“モンスター”という要素や『非生物』たる“スピリット”という要素と引き換えて得たものだと考えると、全く素直に喜ぶことができない。
スピリット保有スキルの【魂入 Lv.1】ってのは何なのかよくわからん。
一球“入魂”とかなら聞くけど、“魂入”って何だ。
読みは『こんにゅう』、でいいのか?
もう『こんにゅう』だと異物混入しか思い浮かばないんだけど。
語感からして……俺がどっかに入んのかな?
でもさっきの冒険者に突入しても、ただすり抜けちゃっただけで何も起きなかったし。
普通のスキル欄にあるのは、今も使っている【ステータス鑑定】だな。
まあ大体ファンタジー物にはつきものだ、これはわかるからいいや。
……あっ、そうだ。
【プラットフォーム】ってなんだろ。
貰ったはいいけど、こっちは【ラーニング】とは違って、未だ発動されてない。
ってかこれは俺が能動的に使うスキルなのだろうか……。
――まいいや、試してみるだけ、試してみよう。
俺は【ステータス鑑定】と同じ要領で、【プラットフォーム】の発動を念じてみた。
「――【プラットフォーム】発動!!」
すると、俺の直ぐ目と鼻の先の、何もない空間から――
「うぉっ!? おおぅ!?」
――突如として、俺のPCが出現した。