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異世界よ、こんにちは(泣)!!

 うぎゃぁぁ!?

 巨大な引力に引き寄せられるように、俺は暗闇の中にあった一点の光に吸い込まれた。

 

 やめてぇぇぇぇ!!

 ゾンビだけはぁぁぁぁ!!



 次第に光の点は大きくなり、黒の紙面に白いインクを垂らしたように、その光の丸が広がっていく。

 そして視界一杯に眩い光を感じると――






「――ぎゃぁぁぁぁ!!」




 

 絶叫マシンに乗って、洞窟エリアから出ると、後は落下するのみ――そんな想像が頭の中をよぎる。

 俺はすごい勢いで、新たな世界へと飛び出した。


 見渡せる限りに広がる世界は、現代日本など感じさせないファンタジー一杯の光景で満ちていた。


「うわぁ――」


 一瞬呆けたような声を上げる。

 溢れる緑。

 澄み切った湖。


 空を飛ぶ鳥系のモンスターや、地上に目を移すとなんだか見たことがあるようなないようなモンスターも。

 驚きとも感動ともつかない感情に頭が支配されていると――



「――落下……止まりませぬな」


 

 地上が近づいてくるに比例して、空から落ちていることを理解して冷静になる。

 冷静になると今度はこの高さから落ちたら、いくら何でもただでは済まないのでは、との思いが。


 一応真下は先ほど視界に入ったものとは別の湖になっているものの、それでも水面に叩きつけられたら一溜まりもないかもしれない。


 もう数秒後には水面に到達――



「――うぁぁぁ、マジかぁぁぁぁ!?」


 

 恐怖のあまり、目をつぶってしまう。

 どうしようもないとわかっていても生物的本能が――




 ――あれ? 生物的……本能?


 

 

 俺はその言葉が頭に浮かんだ後、恐る恐る目を見開く。

 もう本来なら水面に叩きつけられてもいい頃合い。

 なのに、特別何かの衝撃が体を襲ってくるということもない。


 何が――






「嘘……だろう」







 

 ――視界は、辺り一面全てが“水”だけで埋め尽くされていた。   







 

 ということは、俺は湖の中に、落ちたことになる。

 だが、息苦しくない。

 衝撃どころか、何かに接触した感覚すら無かったのだから、そもそも落ちたという実感すらない。

 

 それに、俺は今しがた『嘘……だろう』と口に出して呟いた。

 しかし、自分の周囲に空気の泡が吐き出されたような様子も一切ない。





『モンスターとしての転生に際し、【非生物への転生】』という声を思い出す。

 俺は焦燥感に急き立てられ、水上へと向かう。

  

 すると、俺の意思に引っ張られるようにして視界が上昇しているのが分かった。

 それに比例して、水面が近づいてくる。


 そして、間もなく境目へと到達する。

 そこでは、息苦しさから逃れるようにして顔を出すこともなければ、水中から空気中へと移動する際に感じる一切の身体的感覚も生じなかった。




 俺は、嫌な予感を確かめるようにして、水面の方へと視線を向けた。





 ――そこには、四肢があって、頭や胴を持つような、所謂“体”というものは一切映っていなかった。





 ――代わりに映っていたのは、空中を(もや)のように漂う、半透明の白いアメーバ状のもの。

 



 一瞬、やっぱり“スライム”になったんじゃ、なんて期待も沸いたが。

 それもすぐに風船のように萎んでいく。


 水が作り出す鏡に映ったおそらく俺自身の真上には、何やら文字の羅列が映し出されていた。

 それを詳しく見るために水面に近づく。




<自写の湖>


[個体ステータス]

 名前:――

 種類:モンスター 

 種族:スピリット

 性別:――

 年齢:――


[能力ステータス]

 固有スキル:【ラーニング】【プラットフォーム】

 スピリット保有スキル:【魂入 Lv.1】




 


 ――俺は、俺は……“スピリット”というモンスターになっていた。

 俺はあまりの事態に、言葉が出ず、ただただ呆然としていた。






 どれだけ水面と睨めっこしていただろう。

 俺はそのボーっとしていた時間のおかげで、ようやく他のことに考えを向ける余裕を少しだけ取り戻す。

 というか、今、自分自身の姿だけでなく、ステータスを見ることができているのは、この場のおかげ、ということか。

 あれか、このフィールド、湖全体がなんかステータス鑑定みたいな能力を持っていて、ここをのぞき込めばそれが発動する、っていう感じかね。

 なんたって<自写の湖>なんて名前してるし。 



〔――スキル【ラーニング】が発動〕


 うぉっ!?

 な、なんだ!?

 突如として脳内(体がないので、厳密には不正確な表現だが)に声が響く。

 

〔【個体ステータス鑑定】を認識・理解。条件を満たしましたので、スキルを習得します〕


 その声に合わせて何かを手に入れたことを表現するのだろう“ピロンッ”という明るい音が流れた。

 声はそこで止まらず、頭の中を駆け巡る。


〔【能力ステータス鑑定】を認識・理解。条件を満たしましたので、スキルを習得します〕


 そして最後に――


〔上位スキル【ステータス鑑定】を認識・理解。条件を満たしましたので、スキルを習得、続いて、重複する【個体ステータス鑑定】【能力ステータス鑑定】を消去……完了しました〕



 水面に映る俺のステータスは、以下のようになっていた。


[能力ステータス]

 固有スキル:【ラーニング】【プラットフォーム】

 スピリット保有スキル:【魂入 Lv.1】

 スキル:【ステータス鑑定】(New!!)





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