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第6話 深夜はおとなのじかん

机に向かって腰をかける女と、彼女に対峙する少年と少女とがいる。


深夜の校長室には3人の姿があった。


「私の名前は吹上みずほ《ふきあげ みずほ》。この学園の校長をしているものだ。まず、君のことを教えてほしい。」


みずほは志引に顔を向ける。


威厳のある言葉遣いで、確かに迫力はあるのだが、150センチに満たないであろう身長とその愛くるしい童顔が相まって非常に違和感があった。


(随分若い人が校長をやってるんだな)


志引は、見た目だけならば小学生でも通用しそうなみずほからそんな印象を受けた。


「た、武隈志引です。15歳で、高1です。」


「へぇ、まちと同い年なのか…」


(まちさん、同い年かぁ…。)


年が同じだからといってどうなるわけでもないのだが、自分が触れたくちびると体が同学年の女子のものだと思うと少し嬉しい気がした。


みずほが机の上に置いていた手を顔の前へ持ってきて組む。


「夜も更けてきているから本題に移ろうか。君も知りたがっているかもしれないし。」


「はぁ…」


知りたがっているだろうからと言われても、起こること全てがわからないことだらけだったので、志引はもはや自分が何から聞けばいいのかわからなくなっていた。


未だに夢かもしれないと思うけれども、夢で見知らぬ女の子にキスをして、体を密着させたのを楽しんでいたとなると流石にいたたまれなくなってくる。


しかも名前や設定もしっかりしているのはもはや夢とは思いたくない、というよりは夢とは思えないのだ。


「じゃあ、質問をしようか。君はどうやってここに来たかわかるかい?」


「どうやって、ですか……?」


みずほの視線が鋭く、志引からまちに移る。


「ねぇ、どう思う?」


これはまちに対しての呼びかけであったが、私はすべて見抜いているぞと言わんばかりの、得も言われぬ迫力があった。


まちはビクッ、と大蛇に睨みつけられた小動物のように硬直し、視線を逸らした。


(どうやって?全く思いつかない。本当に一瞬だった。まるでテレポートみたいだった。地面が沈む感覚があって、気づいたらここに来ていた……)


隣で冷や汗をかくまちには目もくれず、志引は考える。


しかし、答えは出ない。


超能力だとか魔法だとか、そういった非科学的なものは初対面の人間に対して言うことではないような気がしたので、思い浮かんだものの口には出さなかった。


「……………」


悩み続ける志引を見て、助け船を出すかのようにみずほが言った。


「君は魔法を信じる?」


(魔法だって?)


突拍子も無い『魔法』というワードが何故この会話の中で出てきたのか、漫画やゲームの中にしかないと思っていたそれが、今。


志引はその理由として、あるひとつの、いやたったひとつの考えしか浮かばなかった。


しかしこれはとても非現実的で、さっき否定したばかりの考えだ。


ドクンドクンと体は興奮しだして、混乱した頭に一気に酸素が送られていく。


もう一度ここが夢の世界なのではないかと疑ったが、それが誤りであることは本能が理解しているようだった。


声の震えを抑えられない。


「ま、まさか、魔法だなんて言いませんよね?」


恐る恐るといった感じの質問。


「魔法だよ。君は魔法で呼び寄せられたんだ、武隈志引くん。」


夏の夜空に満月は、まだ居座り続けている。


今回から後書きも書きます。

目障りなら読み飛ばしてね。

志引「暗闇…落ちるような感覚……ま、まさか、ダイジョーブ博士だなんていいませんよね?」

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