第17話 図書館でおやすみ
「ふぅ、これでおしまいね。」
まちが最後の一冊を本棚にしまう。
あれだけ散らかっていた本たちは、すべて棚の中に収まっている。
「んあ、終わった?」
いびき、よだれを垂れ流しながら寝ていた美園が慌てた様子もなく、悠々と目を覚ます。
(この教師マジか……)
そのきれいな顔、体からは想像できないだらしなさだった。
持ってきた本を読むのかなと思ったら、ちょっと目を話した隙に意識は彼方へと旅立っていて、気付いたらこれでもかと言うようないびきをかいていた。
口元にはよだれの跡がしっかりと残っている。
「さすがですね、先生。」
「へ?なにが?」
まちの皮肉はまったく効いている様子がない。
「尊敬します。」
「えへへ、褒められて悪い気はしないなぁ」
(つ…強いっ!!)
この人、口論のときに相手の意見を全く聞かないせいで、もはや言い争いにならないタイプの人だ、志引はそう思った。
「それじゃ、好奇心旺盛のかわいい少年のために一肌脱ぎますか!」
美園は言葉の割に、ゆっくりと眠そうに立ち上がった。
すぅ、と軽く深呼吸をして気持ちを入れ直す。
「風よ……」
美園がつぶやくように唱えると、図書館内に弱い風が吹き始めた。
その風は、まち、志引と美園の間の空間へと収束している。
そして、みるみると埃の塊ができあがっていく。
「ふおぉ……」
それは、志引が憧れた力だった。
ここでの記憶は消されてしまうかもしれない、その悲しさはもちろんある。
でも、この不可思議な現象を前にするとそんな悲しさはどうでもよくなる。
志引の心は、クリスマスの朝にプレゼントを見つけた子供のような気分にさせられてしまうのだった。
抱いた感情は悲しみではなく、悔しさなのかもしれない。
自分の知らない世界が、自分の知らないまま終わってしまうことが。
自身が諦めた現実にしか居場所がない、才能の無い自分への悔しさ。
いや、悔しいというは誤っている。
自分は悔しくなるほどのことはしていないのだから。
この感情は言い訳だ。
現実に失望したわけではなく、自分に失望したのだ。
努力もせずにのうのうと生きてきて、体と自尊心だけが順調に成長していった。
子供のままでいたいとだだをこねていたら、本当に大人の皮を被った子供になりつつあった。
醜い。
何かに本気で打ち込んだこともない人間が、自分は大丈夫だと言い聞かせて他人より優位に立とうとしている。
流されているだけの人生に無理矢理、付加価値を探している。
そんな自分が嫌で、でも傷つきたくなくて、自分が特別ではないことを認めたくなくて、世界に、世間に責任を押しつけようとしているのかもしれない。
志引はそんな自分が嫌いで、悔しかった。
キライって言えば 好きって言うんじゃない?
「花咲く最強レジェンドDays」のスズヘッドが歌うところかわいすぎか?
生徒会役員共2期opです。
生徒会の一存2期はいつ来るんでしょうか(白目)
次回は明日12時頃投稿です。