第16話 魔法先生!
「これは面倒だねぇ。」
図書館の地下室に降りて電気をつけると、昨日は―正確には今日―暗くてよく分からなかったが、多くの本が散乱していてひどい有様となっていた。
本を元に戻すだけでも相当苦労するだろう、さらにまちには罰として地下室全体の掃除を課せられていた。
志引もそれに付き合わされている。
2人がかりでも一日は優にかかりそうな作業である。
「ここって教師でも知らない人がいるのに、どうやって入ったの?」
自分でキャンプ用の椅子を持ち込んでコーヒーを片手に本を読む、私監視なんで~、といわんばかりの出で立ちの美園から疑問が飛ぶ。
(俺って本当はあっち側の人間なのでは?)
黙々と乱雑に散らばった本を集める志引には不評であった。
「え、あー、母から聞いたことがあったんで、ちょっと忍び込んでですね……」
「稀代の問題児はさすがだね!!」
声を潜めて語ったまちに、満面の笑みで親指を突き立てる。
まちの心の瞬間湯沸かし器は起動し始めるが、今回は自分に非があるので何も言えない。
なので、怒りは作業のほうに表われた。
(まちさん、さっきから動きが雑なんですけど!?)
この件最大の被害者は志引である。
世の中、努力しても報われないことは無数にあって、逆に努力しなくとも結果が出たりする人もいる。
平等はあり得ないし、理不尽であって自分の力ではどうにもならないことは多々ある。
それを志引に伝えるため、神様から与えられた機会なのかもしれない。
(働かないDV夫を養ってるみたいで妄想が渋るッ!!まちさん、もう、僕がいないとだめなんだから!!あぁ、真の愛とは自分自身が母となることだったんだなぁ……)
神は死んだ。
「あの、魔法で仕事はできないんですか?」
志引はここで疑問に思っていたことを言った。
魔術学園なのに魔法要素があまり見当たらない、志引が見た魔術らしきものはみずほがデモンストレーション的に出した炎が最後である。
「あぁ、説明されてないんだ。まぁ、教えてもいっか!」
教えたところで最後には記憶が消されることを考えると、魔術について志引に教えてしまっても問題ないはずだ。
うーん、と美園は少し腕組みをして何か考えるような仕草を見せてから説明を始めた。
「この世界には魔法と魔術ってのがあってね。魔力を使って自然にはあり得ない現象を起こす力のことを魔法って言うんだよ。でも、魔法を使うには多くの魔力の消費と才能が必要とされる。ゼロから世界に干渉しなければならないからね。」
美園からは普段のふわふわとした雰囲気が消えていた。
志引も作業をやめて耳を傾ける。
「そこで魔術だよ。魔法を体系化して無駄を減らしたことで、少ない魔力量でも扱えるようになった。その代わり解析された限定的なものしか使えないけどね。普通の魔術師は魔術を使えるのが精一杯で、魔法を使えるのはほんの一握りの天才だけだよ。」
真面目に話す美園は珍しいようで、まちも途中から手を止めていた。
志引が質問を重ねる。
「へぇ。じゃあ、掃除に使えるような魔術は無いんですか?」
「そうだねぇ、埃を風で集めることぐらいはできるよ。」
「やった!後で見せてください。」
志引はまた作業を再開する。
「そして……魔法を使える人のことは魔術師ではなく、魔法使いって呼ぶんだ。努力だけでは到達できない領域だよ。」
しみじみと、ひねり出すように言う。
やっぱり、ドラゴンとか、魔導犯罪者とかと戦ったりするのだろうか。
「かっこいいですねぇ。」
未知に対して少年の胸は高揚する。
毎日1000字打ち込むだけのゾンビ、ごま40です。
ゾンビランドサガが今期覇権っぽいですね。
僕はグリットマンのほうが好きです。
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